【LDLバディ対談】EXCEL職人の罪深き善意とその顛末(又吉章仁さん)
LDL(Locally Driven Labs)とは、約20年にわたって全国各地で経営とまちづくりに取組んでいる木下斉さんが所長として立ち上げたラボです。2年前から参加していて、いつもノウハウと刺激を頂いていますm(_ _)m
1.プロフィール
今回バディとなったのは、LDLに8月から加入された又吉章仁さん。お互いの紹介をしつつ、木下所長のおすすめ記事の共有をしていきました。
又吉さんは沖縄県浦添在住で金融機関に勤めており、銀行融資業務に15年近く携わっています。
2014年、地元経済団体の出向先で、木下所長の「地方消滅のウソ」というコラムを読んだそうです。
「消滅するのは地方ではなく、地方自治体である。このままの非効率的な行政運営は持続可能性が無い。」という内容に、地元への危機感を募らせました。
それ以来、まちづくりに強く興味をもち、都市経営プロフェッショナルスクールや木下所長のnoteを経て、LDLに参加したそうです。
金融機関特有の堅いイメージとは反対に、とてもフランクな方で、終始気兼ねなくお話をすることができました。
前回バディの八木司さん同様、まさかの松坂世代!そりゃ盛り上がるわけだ(笑)。
2.善意で作られたEXCELとの闘い
そんな又吉さんのメイン業務は自己査定決算。金融機関が決算をするに当たって自行の貸出金等の償却費や貸倒引当金を計算する、重要で難易度が高い業務です。
https://web.hyogo-iic.ne.jp/files/johoteikyo/senryaku_2015_04.pdf
業務を遂行する上で、立ちはだかったのが報告書作成時に使用するEXCELでした。
金融機関は、金融庁などさまざまな機関から報告を求められることが多く、その都度、報告書を作成します。
例えば、自己査定決算の報告書では、過去のデータや融資先企業の業績など膨大なインプットデータを基に、複雑な計算処理がされ、償却費や貸倒引当金が出力されます。
そんな重要で⾼度な処理をする業務の⼀部が、EXCELで作られています。過去の担当者(後述するエクセル職⼈)により作成されたものでした。
作業⼿順などは、「善意で」作成されているので、細かい仕様書はありません。
報告書のフォーマット変更があるたびに、⼜吉さんのように、EXCEL職⼈⾒習いの後任者が、数式や関数を読み解いて、修正する。地獄のような作業が発⽣します。
そんな不毛な作業で本来やるべき銀行業務が滞り、又吉さんは5年前にメンタルが崩壊してしまったのです。
3.EXCELマクロの光と闇
そんな苦い経験のある又吉さんにとって、木下所長の下記のnote記事が勇気を与えてくれたそうです。
ここからは元システムエンジニアの立場で言わせてもらいます。
確かにEXCELの関数やマクロは、複雑な処理を自動化できるため、作業の効率化に直結します。
特に、EXCELマクロはプログラミング言語の難易度が低いため、プログラミング経験がない人でもスキルを身につけやすいです。
しかし、手軽にできる分、仕様書を作成せずにプログラミングすることがほとんどです。そして、仕様書のないプログラムほど厄介なものはないです。
解析するのに一つ一つのプログラムコードを見なければならず、現状把握にかなりの手間が取られます。
システム開発を外注する場合、トラブルを防ぐために、仕様書を作成してからプログラミングとなります。
しかし、内製となると、仕様書を作成せずにプログラミングすることがほとんどです。
本人は善意でプログラミングをしているのに、それが長年にわたり独り歩きして、結果的に後輩を苦しめているという厄介さ。。
私もお茶屋の経営状況を見るときは、EXCELを使用しています。マクロは使用していませんが、常に新しい情報技術を取り入れて時代に合わせていかなければと、身が引き締める想いでした。
4.善意で作られたEXCELへのリベンジ
又吉さんの話に戻ります。支店勤務など紆余曲折を経て、今年の4月に審査部に異動になり、自己査定決算業務に従事しています。
「銀行業務に集中できる環境にすることが、お客様のためになり、ひいては地域のためになる。」
木下所長の記事を読んでから、心にそう決めたそうです。
そんな又吉さんの想いが上司に伝播し、5年前のEXCELとの孤独な戦いから一転、有志とともに脱EXCEL化を進めています。
いまだにアナログな書類手続きが多い金融機関の中で、IT化や改善活動が現場から自発的に行われることは素晴らしいことであり、今後に期待です。