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戦う意志を削がれる「戦国汁」という汁
適度な田舎に住んでいると時折ちょっとしたフェス的なものが開催される。
今日もすぐ近くの公園でフェス、といっても出店が少しと地域の合唱団や学生の吹奏楽などが聴けるようなこじんまりしたイベントなのだが、これが私はとってもとっても好きだ。
両親と出かけたのだが、両親はぐるりと回って帰ってしまった。私はというとステージが終わるまで滞在しようとする。1人で来ている大きなおじさんはほかにはいない。なんとか風景に馴染もうとするものの、異質感は否めない。そんなことは気にしなくても良いのだ。ゆったりと何をするともなく外に滞在するのが好きなのだ。ほら、そろそろじいさんばぁさんのオカリナ演奏が始まる。平和だ。
ベビーカステラやからあげ、たこ焼きなどお馴染みのものが並ぶなか、地元のカフェが出店したり、婦人会のような方々が郷土料理のようなものを販売しているのも興味深い。この日も「戦国汁」なる汁が販売されていて、たくさんのおばさんたちが餅を焼いている。
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白いプラスチック深皿に入れられたそれは、みるからに沁み渡りそう。小雨が降っていて寒いからありがたい。にんじん、だいこん、ごぼう、里芋、お揚げなど具沢山で、おばさんたちがせっせと焼いていた角切りの餅が2つも入っていた。
戦国武将は「汁講」という味噌汁パーティーを開いていたらしいが、こんな汁を食べていたのだろうか。こんなあったけぇ汁を啜れば、戦う気持ちなど萎んでしまいそうだ。
しかし、私はそんな歴史に思いを馳せていたわけではなく、この店と家庭のどちらでもない味に出会えたことをシンプルに喜んでいる。いつも行くような店に戦国汁なんてものはないし、どれだけアットホームな店だとしても提供される料理は商品としての空気を纏っている。しかし、この汁からは商業のにおいを感じない。お金は払うものの「まぁお口にあえば食ってけや」という大らかさがある。それが心地よい。
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すっかりリラックスした私は「焼き梅」なる商品を発見し、見逃さずにしっかり購入する。
新しい食べ物に挑戦するとき、それがおいしくてもまずくてもとても楽しいのだ。
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少年少女の吹奏楽をみていたら、すっかり14時を越えていた。そそくさと帰り、サンマーメンと買ってきた「焼き梅」を早速食べる。そんな1日が結局心地良いのだ。