「不要不急」に追いやって
子どもが小学5年生になってしばらくして、会社の飲み会に行くのをやめた。
きっかけは、通わせている民間学童でキャンセル待ちがいると聞いたことだった。
もうその頃の我が子は、「ママ早く帰ってきてね」という可愛らしい姿はどこへやら、ちょっと早く帰っただけで「なんか今日早くない?」とがっかりした顔を見せるようになっていた。いきおい学童に行くのも「何かある時」になり、そして徐々に「私の飲み会がある時だけ」になっていた。
学童が必要な低学年のお子さんのキャンセル待ちがありながら、これはいかがなものかい、と思い始めたのだった。
早産で学年が繰り上がってしまった我が子は、入学した頃なんてほにゃほにゃのぴよぴよで、とてもじゃないが学童がなかったらパートと言えど仕事なんて出来なかった。さんざんお世話になったのだ、ここは今必要な人にゆずるべきじゃないのか。
時給で働く身には、飲み会の度に飲み代と延長学童代のダブル出費になるのも正直痛かった。代わりに迎えにいく夫に「やっぱ大変だよね?」と聞いたら、「そりゃもう朝から段取り組んで・・」と、少しも押しつけがましくない口調での返答に、かえって申し訳なく感じた。
同じ学童のママ友何人かに相談もして、忘年会以外の会社の飲み会は欠席することに決めた。直属の上司にその旨伝えると「負担になってまで出席する必要ないから」と、すんなり了承してもらえた。
***
あれから3年経って思う。
「そこまでするほどの事じゃない」、あれを「不要不急」と言うのだ、と。
2020年、東京オリンピックの開催されるはずだった、この年に。
同時に、いまだに少しだけ後悔もしている。
「これは出席だけど、あれは欠席」、そうしてしまうと不公平に感じる人もいるから、という理由で飲み会は一律欠席にしてしまったことに。
実際は飲食店がお客様の仕事だったため、飲み会は週末や休前日を避けて顧客であるお店で開催されることがほとんどで、曜日を考慮してうまくやりくりすれば、3回に1回位は出れなくはなかった。
飲食店を顧客に持つ会社の飲み会は、他の会社の飲み会とは少し意味合いが違う。でも学童ママ友に相談した時、そのことからは目をそらした。
そこでしか聞けない、同僚や上司の話。
「お客さん」として行く時にしか見られない、飲食店の方の表情。
全部なし、にすることはなかったのに。
あの時、あの状況で、会社の飲み会は「不要不急」だった。
間違いない、仕方がない。
でもそれは、
「要らない」とか
「今じゃなくていい」とかいうことじゃない。
いつだって「いま」は「いま」でしかない。
人生のかけがえのない「瞬間」。
ただ、ときに個人の事情が、社会の状況が。
なにかを「不要不急」に追いやらざるを得ない時がある。
***
11/18、こちらのライブに行ってきた。
MCの中で、コロナ禍で予定していた通常のR&Rライブは取りやめていたこと、代わりにライフワークとして考えていたこの形式でのライブをやることになったと伝えられた。
さらに、英語の発音にあまり自信がないこと、たくさんの人がカバーしているナンバーをやるか迷ったこと、最初はセトリに自分の曲は入れない予定だった・・そんなチャレンジゆえの迷いやとまどいも、ぽろりぽろり、と。
そして「今日は私の歌を肴にたくさん飲んで!」と言いながら客席をのぞきこんで「うわ!すいぶん飲んでる~」とニコニコして。
やっぱりそこは、あゆみちゃんのライブ。
ものすごーくパワーを、元気をもらえたライブ。
「Yokohama Blue」という名の、きれいな碧いカクテルと共に味わったライブ。
この横浜公演のあとには、12/1大阪公演が予定されていた。
ご存知の通り、この間に開催地の大阪のコロナ感染状況は、みるみる悪化していった。
予定通り開催されるんだろうか?横浜公演にしか行かないのに、いやだからこそ、もう気になって仕方がなかった。
私ひとりが心配したところで、なるようにしかならないのは充分わかっていたけれど、ハラハラしながら当日まで公式HPをチェックしてしまった。
結果は「開催はするけど、アルコールの提供なし」だった。
***
言うまでもなく、ライブもお酒も、
横浜公演は「必要至急」で
大阪公演は「不要不急」だったわけじゃない。そんな訳がない。
ただ、その時の状況が。
ひとは、独りで生きているわけではないから。
目の前の一杯のグラス、それさえも。
ただただ、その時の状況で。
それだけ。
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