テレビの見方
テレビ業界に30年いると
普段テレビを見るときに娯楽としてではなく、
仕事としてみるようになります。
自分の制作能力を高めるために
武器を仕入れるという感じで
ヒット番組を分析していました。
仕事としての僕の番組の見方はちょっと特殊です。
基本、早送りとコマ送りです。
ある新番組を視聴するとします。
華やかな番宣を繰り返し流し、
キー局肝いりで制作された新番組。
これをオンタイムで見ることはありません。
必ず録画をしてその日に観ます。
僕が番組で見るポイントは、こんな感じです。
・MCは誰が出ているのか?
・どんな企画の番組なのか?
・最初の目玉は何を見せるのか?
・スタジオの展開はどうするのか?
などです。
番組タイトルで概要はわかるのですが、
演出は冒頭から10分ぐらい見ると
切り口やテイストがわかります。
番組はツカミが大事なので
最初のコーナーは一番力を入れています。
コーナーが終わってだいたいの内容を把握したら、
そこからは、早送りです。
同じような趣旨のコーナーを斜め観しながら
最後まで飛ばします。
そして、再生するのが、エンドロール。
エンドロールは番組に関わった
すべてのスタッフ情報が載っています。
右から左に流れている
役割と人の名前が書かれたテロップです。
僕はエンドロールをコマ送りで見ます。
番組の演出は誰なのか?
放送作家、ディレクターは誰がかかわっているのか?
リサーチ会社はどこが担当したのか?
アシスタントディレクターから美術・技術会社のスタッフ、
制作会社とプロデューサーの名前まで
番組情報が全部載っています。
その番組が面白かったり視聴率が良かったら
今度自分が番組を作るときの参考にします。
例えば、海外のロケがメインだとしたら、
この制作会社に頼もうとか、
グルメ企画に応じたリサーチ会社を入れようとか、
記憶にメモします。
いまは番組を作ることはあまりありませんが、
昔一緒に番組を作った時の
若手ディレクターやアシスタントディレクターが
演出になって素敵な番組を作っていることが
エンドロールでわかると
とても感慨深いです。
それこそ僕がディレクター時代は編集の勉強で
コマ送りをよく使ってました。
テロップの出し方、引き方を学んだり、
編集のトランジション
(カットとカットの間を自然に繋ぐために用いられる効果)を
盗んだりするため、
コマ送りで1フレーム(1/30秒)で見ていました。
どうやったら迫力のあるテロップの出し方ができるのか、
当時は「めちゃイケ」や「LOVELOVE愛してる」など
フジテレビの人気番組のテロップをコマ送りで凝視しては
自分の担当番組で試したりしていました。
トランジションの編集でも1フレ、3フレ、5フレで
見ている人の印象がどのように変わるかなど、
ヒット番組を参考に自分なりに分析し
知見を蓄えていきました。
当時の僕は、
テレビを見てゲラゲラ笑うということは一切なく、
しかめっつらで画面をにらみつけて、
何度も何度も繰り返してみてはメモを取るという風に
テレビに向かっていました。
明石家さんまさんの言葉通り、
「テレビは戦場や!」でした。
いまはテレビ、大好きです!