【ネタバレ有】『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』主題歌「Plazma」をヘビロテして聴いた考察・感想
2025年1月17日『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が劇場公開され3日間で興行収入5億9800万円と初動からヒット、1週間後のX(旧Twitter)に「ジークアクス2回目」というトレンドワードが登場した。
ガンダムファンだった私は初日鑑賞し、配信開始した主題歌「Plazama」も当日購入し聴いている。
公式YouTube動画
【ネタバレ注意】『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)-Beginning-』Promotion Reel
主題歌「Plazma」を1週間近くヘビロテして聴いて気付いた「歌詞の文法」、「専門用語」、「バックの音」の3つを順に紐解きながら、最後にタイトルの意味を考察していく。
1.「反実仮想」の文法と「原点を見つめ直す」こと
(1)「反実仮想」からはじまる物語
楽曲は「もし~ならば~だろうか」ともしもを投げかけ「反実仮想」という文法ではじまる。事実と反対のことを想定する時に使われる文法だ。
人との出会いを振返り「原点を見つめ直す」歌詞になっている。
作中では主人公マチュが少女ニャアンに出会うきっかけとして駅の改札シーンが描かれておりリンクする。
作品については劇場パンフレットの鶴巻監督インタビューで以下のように紹介されている。
米津玄師は本作を「反実仮想」を具現化したものとして捉え、主人公の出会いの原点も含めて歌いだしの歌詞に綴っている。
(2)原点を見つめ直した楽曲!?
楽曲「Plazma」は速いテンポで振り幅の大きいメロディーが流れ、打込み音が響くことで米津玄師の原点であるボカロP「ハチ」時代を想起させる。
米津ファンが初期の原点を感じる作りとなっている。
また、電子音のポップな曲というカテゴリーでいえば、2012年に「米津玄師」名義で活動しはじめた楽曲「ゴーゴー幽霊船」のイメージも浮かぶ。
【参考動画】米津玄師公式YouTubeチャンネル MV『ゴーゴー幽霊船』
近年のタイアップは作詞・作曲/米津玄師で編曲者は誰かとタッグを組む事例が多い中で本楽曲は作詞・作曲・編曲を米津玄師が一人で担当していることも特徴的であり、それ故に本人らしさがより溢れている。
昨年ネットで流行したドラマのセリフで言うならば
「最もプリミティブ(根源的)で、そして最もフェティッシュ(趣味的)なやり方」で楽曲が作られている。
2.「専門用語」を用いた歌詞と「バックの音」
楽曲「Plazma」の歌詞には日常生活では聞いたことがない専門用語が用いられている。
1番目の歌詞では「リノリウム」という建材(床材)、2番目の歌詞では「改め口」という点検口の別の呼称と建築用語が用いられている。
過去曲の傾向から、音にして面白い言葉だから採用したと考えられる。
※「リノリウム」
亜麻仁油や石灰石、木粉、ロジン(松脂)などの天然素材から作られる
建材(床材)
※「改め口(アラタメグチ)」
天井裏、床下、パイプスペースなどを点検するために設けられた開口
あるいは扉のことを指す。
「改め」とは、「改める」の連用形で、「やり直す」「変更する」という
意味。「改め口」とは、「やり直しの口」という意味でもある。
さらなるこだわりは「バックの音」だ。
1番目の「リノリウム」では柔らかい素材をイメージさせる包み込む音、2番目の「改め口」ではな狭い空間にいるかのような響く音が差し込まれている。なじみのない言葉をイメージしやすいよう工夫だろう。
3.「バックの音」が重なり鳴る間奏パート
(1)これはニュータイプの疑似体験!?
間奏パートでは主に3つの「バック音」が重なり鳴っている。
1つ目は「電子ピアノ音」。主人公マチュがPVの最初で言う「キラキラ」
をイメージさせる電子音が鳴る。
映像に置き換えると、初代ガンダムから描かれる人が革新した姿と言われるニュータイプ同士が共鳴する場面を想起させる。
※「ニュータイプ」について劇場パンフレットの用語解説集に載っている。
2つ目は「女性の歌声」。メインボーカルより音量は抑えられているため確認しづらいが「エーエーハー」とスキャットのような歌声が聴こえる。
歌詞にある「遠く聞こえている」に関連し、前述したニュータイプに関連するものかと推測する。
そして、これは初代ガンダムBGM「虚空に響く声」の女性スキャットへのオマージュに感じ取れ、ボカロP「ハチ」から連想するとボカロ「初音ミク」の未調整音にも似ていると感じ取れる。
3つ目は「女性の話声」。途切れ途切れに「ハロー」とか「ハーイ」などの女性の声が聴こえる。歌声の「エーエーハー」の「ハー」の部分に重なっており埋もれて聴こえる。
作品から考えると、無線機器やレーダーなどに電波妨害を起こすガンダムファンに馴染みのある空想上の粒子「ミノフスキー粒子」の存在を意識させる音になっている。
この3つの音が重なることによって、キラキラした空間の中で電波妨害上にいながら不思議な女性の歌声が聞こえるというニュータイプの疑似体験を楽曲を通して体験できるような間奏パートになっている
(2)よく聴くと、毎回変わる間奏前
間奏パートはPVでは1回、フルサイズでは3回流れる。3回とも直前の音が違い、受けるイメージがそれぞれ違う作りになっている。
1回目は歌イントロ後、メインボーカルが途切れ途切れ歪む音声加工が施され、バックのボリューム音が絞られ間奏パートがはじまる。ミノフスキー粒子が散布されて通信妨害がはじまったかのような印象を受ける。
2回目は一般的な楽曲と同様に、メインボーカル終わりに間奏パートがはじまる。「遠く聞こえている光っていく」という歌詞を聴いて耳を澄ましてほしいという意図がうかがえる。
3回目は一瞬ピタッとバック演奏が終わり「ピーピー」と通信が繋がった音のような電子音が鳴り間奏パートがはじまる。ミノフスキー粒子がない状態で通信状況が通じている状況のような印象を受ける。
なぜこのような「音の違い」を設定しこだわているかは現時点では分からない。もしかしたら本編が進むにつれて「これか!」と気付かされる仕掛けが仕組まれているのかもしれない。
それ以外に気付いた点では、1番の歌サビと2番の歌サビでは最初の打ち込み音が違っており、何かの意図があるかもしれない。
4.タイトル「Plazma」が意味するものとは?
最後にタイトルの意味を考察していく。タイトル「Plazma」に込められた意図とはなんだろうか?ネットを探ると、「丸文株式会社」HPにプラズマについての解説が上がっている。
このページを読んで曲の不安定さ不規則さからプラズマなの?と考えがよぎったが、曲の不安定さ不規則さといったものが米津玄師らしさであり他の楽曲でも見られるため本楽曲だけのものではなく違うだろう。
ちなみに上記ページでは地球上にある身の回りのプラズマとして稲妻や蛍光灯、車のヘッドライトが紹介されておりMVに採用されている理由が分かってニヤリとした。
さて本題に戻ろう。事例紹介からプラズマが化学反応により発光するものだということに気付く。これに例えて、人の出会いという化学反応により人が輝くことを指しているのではという考えが腑に落ちる。
歌いだしが人の出会いを見つめ直すところからはじまり、歌のしめで光っていくという情景を指している。MVでは少年が米津玄師と出会うことでサビで米津玄師自身が発光して輝くというシーンが描かれる。
ガンダムファンとしては、もしかしたらプラズマがには固体、液体、気体の三態を超えた第4の状態から、三次元認知能力を持つ人類を超えた4次元認知能力を持つ人が革新したニュータイプを指しているのでは?とも思うが深読みかもしれないので話半分程度にして流してほしい。
【おまけ】小ネタ「気になる金属音」
どうやら音に意図がある楽曲「Plazma」には他にも気になる効果音がある
2番目歌詞で「あの日 君の放ったボールが額にあたって」と歌う前に、急に金属音が鳴る。
ガンダムファンの私は「ボールじゃなくてハロなのでは?」と気になっているがただの思い込みかもしれない。
5.最後に
考察記事から楽曲「Plazma」が「音」にこだわりを持って制作していることを語った。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を鑑賞した人は本編も「音」(劇伴・効果音)にこだわった部分を感じ取ったであろう。
この記事で楽曲に興味が沸き、「音の違い」を知りたい方はデジタル配信を購入し、フルで聴くことをオススメする。
また、映画館で映像とともに大きなスピーカーによる「音」も再び楽しんでほしい。
【参考動画】米津玄師公式YouTubeチャンネル MV「Plazma」
【備考】
本記事はアニメライター見習いがnotekを執筆している。アニメ好きや音楽好きの方々の話のきっかけやタネになればと面白いと思ったら「スキ」ボタンやX(旧Twitter)での拡散など応援いただければ嬉しい。
今後もアニメ音楽について自主的に研究・レポートに励んでいく。
以上