アムリタ
よしもとばななの「アムリタ」を読むと、お腹がすきます。心地よい空腹感に襲われます。オレンジ色を口いっぱいに含むような、お腹が夕日で満たされるような感じがして、いっぱいなのに空腹です。夕暮れに七つの子が聞こえてきて、家に急いで帰るような空腹感。
アムリタとは甘露のことで、不死を与える飲み物のことです。不死とは永遠に生き続けることで、つまり肉体が終わっても生き続け、エーテル体に自我があるということです。エーテル体は不死です。私たちは元々が不死です。
神の飲み物である「アムリタ」という題名のついたこの小説は、境界線に永遠にとどまるような、普遍性の中に存在するような、そんな感覚になる本です。ひどく懐かしく人間らしく、地球と恒星の間にある中間領域の、あの黄昏時の感じです。
久しぶりにちょっと読んでみたら、昔読んでいた時は主人公と同い年だったのに、今は主人公のお母さんより年上になっていました。それでも主人公と同い年だった、あの頃の「帰りたい」に引き戻されます。