2021/10/12ペアルック

「ペアルックの良さがわからーん！！！」夜の帳が下り、生活感が失われ、暗くなった街で僕は叫びたい気分だった。
塾の自習室に入り浸っている毎日を送る僕は、帰りに疲れた体で本屋に入るのが日課だった。本屋のカフェで背伸びをしてお洒落な物を飲む中学生、何で稼いでるかわからない実業家のような男性、そういう人たちを尻目に漫画コーナー、小説コーナー、専門書コーナーをウロウロするのが楽しくて仕方がない。その時、あるカップルが目に止まった。同じオーバーオールを着て、手を繋いでいるカップルである。

「いやマリオブラザーズか！！」というようなツッコミや、「オズワルドさんですか...？」というようなイジリよりも先に、「ペアルックなんて何がいいんだ馬鹿野郎」という妬みに近い、ある種の疑問があった。
すぐに友達である瀬久(セク)に話した。僕が得られる情報は産地がTwitterか瀬久なのだ。「本屋にペアルックのカップルがいたんだよ！何がいいのかね〜！？」と言うと、瀬久は余裕そうに「俺は全然できるけどね」とほざく。いちいち余裕そうにしないで欲しい。お前は俺と一緒に「同じ服着てんじゃねー！バカヤロー！今すぐ脱げ〜！川飛び込め！ネットで拡散されろ！！！」と言ってればそれでいいのに.....。

そもそも、大人が同じ服着てキャッキャしてるのは、いささか気持ち悪くないだろうか。畜生(僕は今日から犬や猫を畜生と呼ぶことにしました。)や赤ん坊ならまだ可愛いものの、とここまで書いて「いや、だからモテないんじゃないの？あんなのは楽しんでるフリだけしてりゃあいいんだよ」というのは百も承知だ。僕が1番よくわかっている。やめてくれ。
いつかペアルックの最年長を調べてみたい。80歳くらいの老夫婦が紺色のadidasのパーカーをお揃いにして着ていたらめちゃくちゃ面白いだろう。