布は結ぶ。人を時間をそして縁を。(趣味は着物と言えるまで6)
2月に着付けができるようになってから、着物を着る日常を細々ながら続けている。着物を着る度に思うのは、合理性だけが全てでないということ。そして、自分は布に魅せられているということ。
「更紗 命の華布」という本に掲載されている更紗の数々が展示されるというので、過日目白にあるギャラリーに行ってみた。本の中の見事なテキスタイルを見られるだけでなく、そこではそうそうたる方々が、破格でコレクションを放出していて、小さな綿のバティックをひとつ求めた。
かつての持ち主は、生成りの布を真っ白に染めるというユニークな染色を試みた方だというので、思い切って問い合わせた。ギャラリーでコレクションを求めたこと、どんなバックグラウンドを持っている布か知りたいことなどを伝えると、「ではいらっしゃい」と。現在の拠点で向かえてくれるという。
ご厚意に甘え訪れたそこは、私的パラダイスであった。漆器、磁器、陶器にガラスの数々の器。木や鉄で作られたアジアの古いオブジェ、そして膨大な世界の布たち!日本を代表する作家たちとのエピソードを聞きながら、彼女の布のコレクションを拝見し、たまらなく高揚した。
そのエピソードのハイライトに、結城紬の話があった。結城といえば世界遺産にも登録されている、日本最高峰の手仕事の織物。憧れの存在だ。真綿の手紡ぎの糸を彼女が白く染め、地機で織ってもらった結城紬があるのだという。拝見した布は、主張がないのに神々しいオーラを放っていた。柳宗悦が「美の法門」で書いていた「美」とはこういうことかと思った。
実はこの結城紬のコラボレーション先、同級生の実家であった。13歳から知っているのに、彼女が産地問屋の子女であったことを知ったのは、昨年のこと。そして、数日後には、一緒に結城を訪れようと約束していたのだ。東京、滋賀、バリ島に結城。ひとつの布が点在する場所をつなぎ、過去と今を結び、そして友との新たな関係をもたらしてくれた。
この時空を超えた布の旅は、とても長いものになるような気がするな…。夢のようなお宅を後に、ぼんやりと思っていた。そして、数日後の結城への旅を想っていた。