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やがて労働者がチーズを買えなくなる国、日本


労働者が食べてゆけない社会主義国。最大のタブーを取材していた米国のクルーは治安当局に拘束された。=2019年、カラカス市内 撮影:田中龍作=

  「賃上げを実現します」。岸田首相の豪語もむなしく、実質賃金が24ヵ月連続でマイナスとなった。

 これは日本政府がインフレをコントロールできないことを示している。統治能力に疑問符がつく状態だ。

 労働者の最低賃金でチーズが買えなくなっていたベネズエラを思い出す。2019年に取材した。

 ほんの一例だが、スーパーに並ぶ食料の値段を紹介しよう。

・じゃがいも2ポンド(906グラム強)=1ドル
・バナナ2ポンド=1ドル20セント
・ビーフ2ポンド=2ドル88セント
・チキン2ポンド=1ドル28セント
・チーズ(パルメザン)2ポンド=20ドル62セント

 ジャガイモが1ドルだったら大したことないじゃないか、なんて思ったら大間違い。ベネズエラの最低賃金は月6ドル(IMFベース・2019年当時)に過ぎないのだ。

 パルメザンチーズ2ポンド(906グラム強)は、労働者の最低賃金の3ヵ月分にあたる。

 スーパーに食料品はふんだんにあるが、買い物ができるのは富裕層だけである。


高級チーズは低所得者が給料1ヵ月分をつぎ込んでも買えない。=2019年、カラカス市内の市営マーケット 撮影:田中龍作=

 当時、ベネズエラでは人口の1割超にあたる300万人が脱出していた。1年に64万もの人口(総務省人口統計・2024年)が消えて行く日本との違いは、人口減少のペースの差くらいだ。

 行政組織が崩壊し、技術者も不足しているため水道が維持できない。断水のため病院では手術もできない状態だった。

 消滅自治体ではないが、日本とて人口減少で自治体を維持できなくなれば、水道も使えなくなる。

 社会主義国でありながら労働者が残飯あさりをするベネズエラ。1990年代は、オイルマネーで南米一の豊かな国となり「サウジ・ベネズエラ」と異名をとった。

 もはや先進国とは言えず、正規社員が炊き出しに並ぶ日本。ベネズエラは明日の日本であるように思えてならない。


人々は山肌から染み出てくる水を汲んで飲み水にしていた。=2019年、カラカス 撮影:田中龍作=

 ~終わり~

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