台湾ひとり研究室:取材メモ「TikTokアカウント、開設までの道のり。」
去年5月、友人たちと台湾の離島、馬祖島を旅行した時のこと。その頃は台湾のコロナ感染者が急増していたのだけれども、大家族や親しい友人たちばかりの貸切ツアーだったこともあって、「行ったことがない」という大哥の親友夫婦と参加した。
行きは小型飛行機を貸切にできて、小一時間で到着したのだけれども、帰りが大変。雨の多い時期で、ツアー中ほとんど雨に見舞われた挙げ句、霧が濃くて台北からの飛行機が着陸できず、予定していた便が飛ばなくなってしまった。
そこは臨機応変な台湾人である。すぐに延泊と決まった。ところが翌日も濃い霧が島を多い、もう1泊するか、飛行機から船に切り替えるか、という選択を迫られた。さすがに2連泊となると仕事の調整がつかない、という参加者の声を受け、雨降りの中を船で台北に戻ることになった。
最大298人が乗れる高速船で、片道3時間。雨の中だから揺れること必須である。友人が持ってきていた酔い止めを分けてもらい、3時間ずっとジェットコースター状態で台北に戻った。……上陸した時のホッとした気持ちといったら!
ところで本題。
この旅でいちばんの衝撃だったのは、帰りの船で隣に座ったツアー参加者のひとりがTikTokを見ていたことだった。台湾人女性で、さすがに年齢は聞かなかったけれども、私より歳上の50代。「TikTokは若い人が使うアプリ」と思い込んでいた私の考えを、根底から覆してくれたのだった。
「これね、いろんな動画が出てきておもしろいよー。私は料理の作り方の動画を見ることが多いかな」
ジェットコースター級の船の中でも、ショート動画を楽しげに見る離島帰りの50代ジョシがいる。嫌煙している場合じゃないと思わされた。TwitterにFacebook、Instagramにnoteと、SNSアカウントが増え続けていたものだから(いやいや、若い人の使うアプリだし)と、オバチャンにはもってこいの理由をつけて避けていたのだけれど、このパイセンのおかげで(こりゃ、ちゃんとやれっていう媽祖様のメッセージ…)と勝手に観念し、とりあえずアプリをDLしてみた。
あれから半年以上。街中や取材で撮影したショート動画を載せるだけのものだけれど、次に心底、観念したのがコチラの動画↓だった。
PIVOTの佐々木紀彦さんとワンメディアの明石ガクトさんが、対談しながら来月発売予定の新刊『動画大全(たいぜん)」について語っていく、という3回シリーズ。もしあなたがライターや映像関係者、あるいは何らかの発信をしている人なら、この動画はきちんと観ておくことをお勧めする。私たちが今、どんな世界にいるのかを知るために。テキストの行方のヒントを得るために。今の動画の波が一時的なものではなく歴史的な変化の中にあり、動画とテキストが今後どうなっていくのか、その波にクリエイターはどう対処すべきなのか、やっぱり知っておいたほうがいいと思うから。
自分自身はテキストの人間ではあるけれど、だからといって映像をあきらめたいわけではない。映像の威力やパワー、映像の波だって体感しておきたいんである。
そんなわけで、今年五十路に突入する身でひっそりとテストしていたTikTok(台湾では抖音と呼ばれる)アカウントを、改めて公開することにした。コチラ↓
台湾で出逢うひとコマ、取材で撮影させてもらったものなど、動画の内容はごった煮。でも、物騒なニュースだけで台湾のことを知られるのはごめんだ。ここにだって日々を生き、暮らしを営む人たちの素敵な姿があるのだから。その瞬間を伝えることで、ひとりでも台湾のひとコマに思いを馳せる人を増やしたい。たとえハチドリだとしても。
肝心の新刊はKindleで予約。海外在住で紙での入手はなかなか厳しいので、紙で手元にほしい!となったら、一時帰国の際に買い求めるつもり。支払いが2冊分になろうとも、こういう投資は苦にならない。ショートだろうと、少しでも動画の世界を知って字幕翻訳にも生かせないか、考えてみようと思っている。
最後に去年のツアー後。離島でコロナ感染者は少ないとたかを括っていたけれど、翌日から感染者が続出。大哥と私は、ツアー前に台湾の漢方薬「清冠一号」を飲んでいたおかげか、事なきを得たのでした。そうした体験もあって、Yahoo!ニュース個人で記事を書いた。
ついでに宣伝。Instagramでは写真とショート動画で食ネタをお届け中。
……ということで、試行錯誤真っ只中の様子をお楽しみくださいませ。本日の現場からのレポートは以上です!