台湾ひとり研究室:本屋編「新刊告知祭り:良品を知る」
この本には、台北101も夜市もありません。あるのは、神農生活のスタッフが、台湾じゅうから探してきた良品と、その作り手たちの物語です。
取材には、レンタカー、そしておなじみの高鐡、台鐡、ときに飛行機を使って向かいました。産地取材としてお邪魔した先は、台北はもとより、新竹、南投、台南、澎湖。新竹は3カ所、どれも違う品の取材でした。
山、茶畑、フルーツ畑に魚市場。観光スポットではないけれど、まぎれもない台湾の風景のなかで、いろんな方が奮闘している姿に出会いました。
その姿を見、じっくりお話を伺いながら、神農生活の紹介する品々は、改めて台湾で育まれてきた良品なのだなあとつくづく感じさせられました。だからこそ本書には、そういった台湾の風景がたっぷり登場します。これまで日本の台湾特集ではあまり登場してこなかった景色を、ぜひとも見ていただい、と考えたからです。
良品の後ろには、各地方の、たくさんの人たちの物語があります。物づくりといえば、日本には世界に誇る職人さんたちがいるわけですが、ここ台湾にもまた、ひとつひとつに思いを込めてつくる人たちがいました。当たり前のことかもしれません。ただ、その当たり前のことに改めて気づかされる。取材はそんな時間の積み重ねだったように思います。
どんな取材もそうであるように、原稿に収められることなんて、ごくごく一部に過ぎません。こぼれ落ちていくことのほうが多いくらい。でも、その盛りだくさんの取材内容から、何をどう伝えるかを考えるのは、やっぱりライターの醍醐味です。まあ、それが十分であったかどうかは、皆さんのご判断に委ねるしかないのですが。
台湾に住んでいるライターだからといって、お茶づくりやフルーツの加工場なんて、そう取材する機会に恵まれるわけではありません。現地に向かい、いろいろな話を伺うことができたのは、やはり神農生活さんだったから。とても貴重な機会でした。
お話を聞いているうちに感動し、帰り道には必ずバッグがパンパンになりました。ええ、お土産と称してたっぷり買い物しちゃうから。毎度、登山かよ!と思うほどの重量になったリュックを担いで帰りました。
ところで、通常、台湾取材にはライター、カメラマン、編集、コーディネーター各氏が一緒に向かいます。コロナ禍にある今回、日本の編集さんたちは来台できず。取材や進捗を随時報告し、あがってきた写真を見ながら、自分でラフを引いて原稿納品する、という、まるで雑誌づくりの作業でした。久しぶりのラフ書き、めっちゃ楽しかったです。
今思うと、取材中、日本の編集さんたちとリモートでつなぐ、という方法もあったなと思うのですが、気づいたときにはすでに遅し。この経験、次に生かしたいと思います。