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台湾ひとり研究室:取材メモ「コロナ後を生きる。你好我好の改装に込められた想い」

台北市迪化街一段14巷——台湾の敏腕コーディネーターとして知られる青木由香さんのお店は、この、台北の小さな路地にあります。台北MRTの北門駅を出て、迪化街商圏に向けて歩くと、メインのエリアに入った直後にある小道です。同じ通りには、漢方薬材店、そしてカフェが数軒。青木さんは通りのことをこんなふうに言いました。

「どのお店も、店の前にバイクを止めてほしくないからグリーンを置いていたんですよ。だけど、それがかえって通りの雰囲気をよくしたんです」

確かに迪化街エリアの、ちょっと古めかしいイメージとは違っています。緑のある通り。それが目印。

青木さんの店の前の鉢植えはようやく開花(撮影筆者)

漢方薬材店や乾物など、古くからあるお店がずらりと並んでいた迪化街は、メインストリートの部分も含め、コロナ禍でずいぶんと様変わりしました。そのことは、台北に暮らし、何度も通っていてさえも歩けばわかるほどドラマチックな変化です。乾物を扱うお店はぐっと減り、今風の雑貨店や飲食店が増えました。新しくなった看板は眩しいほど。もしかしたら、世代交代なのかもしれません。観光客が多いエリアで家賃は安くないから、店子が長続きし辛い、という事情もあったのかもしれません。それでも、コロナの影響をはっきりと感じるほどの、街並みの変化です。

そんな中で、言ってしまえば外国人である青木さんが店を続けてこられた。3年を生き延びる、というのは並大抵のことではなかったはず。数日前に、別の取材でご一緒した際、「お店、改装したからよかったら遊びに来て」と声をかけていただき、早速寄ってみました。

広々とした1階では壁のスペースまでフルに生かし、どの商品もなんだか誇らしげにこちらを見ているよう。

店舗の1階。生かされた建物の奥行き(撮影筆者)

店の壁には、それまでなかった、ディスプレイ用のボードが設置されて、商品がこれまでよりもずっと増えたように感じます。とはいえ「自分が本当にいいと思ったものしか紹介しない」が信条の青木さん。どれも自分で歩き、口にして、幾重にもなる関門をくぐり抜けた選りすぐりばかり。

2階への階段を上がると、日本でも大人気のヂエン先生の日常着と試着コーナーがあります。試着はオンライン販売ではできないこと。ゆっくり試着してほしかった、という思いも伝わります。

2階の天井まである高い窓には、ランが下げられていました。こういうのも青木さんは「今朝、買ってきて飾ったばかり」と言いますが、店の空間をどうやってデザインするのか、あれこれ考えた結果ですよね。それにしてもこのセンス! いやあ、わたしには逆立してもない発想です。

上から吊るすだけで、窓の様子がぐっと変わる(撮影筆者)

以前伺った際は2階は事務所でした。発送用の梱包材や在庫が並ぶ中で、机が置かれ、事務処理をしていたスタッフの姿がありましたが、それらは3階に移したそう。広々とした中に、贅沢に並んだ商品を見ていると、しっかり試着して買ってほしい、という気持ちが伝わってくるようです。

コロナの嵐がやってきてすぐの頃、青木さんのお店は2店舗ありました。コロナ禍でひとつ畳み、オンラインストアを立ち上げ、料理教室や出張講座、台湾フルーツの日本発送、そして新刊執筆など怒涛の忙しさの中で、時折、弱気な声も聞いたけれど、それでも「台湾でできること」を最大限にやる姿を見てきました。

そして今。ゴールデンウィークで、日本の人たちが大勢やってくる。その時にきちんと迎えられるようにしておきたい——そんな思いを聞いてしまったら、誰かに伝えたくなってしまいました。厳選された品々が、素敵な空間に並べられていて、他のお店とはやっぱり違う。その違いは、私なんぞの力ではうまいこと文字にできないので、お店に行ってその違いをじかに感じてほしい。行けば、きっとわかるから。

それと。

青木さんのお店のある通りには、どん詰まりにカフェが3軒あります。突き当たり左のお店のオーナーご夫妻とも仲良しの青木さん。「このお店、本当にセンスがいいんですよ。ここのコーヒーもおいしいから、飲んでみてください」と、自分の店のことはさておき、別のお店を紹介しちゃう。お店にはわたしを紹介しちゃう。それがまた、青木さんの素敵さでもありました。

カフェ「菸花Op.118.2」のオーナーご夫妻と青木さん(撮影筆者)

さて、わたしの今週のお題は青木さんのお店にある豆腐ようを試食すること。同じくコーディネーターの片倉真理さんからも「青木さんのところの豆腐ようがいちばんおいしい」とお墨付きの品。これで今週のごはんが楽しめそうです。今度行く時には、お店で買い物して、通りのカフェで休憩する、という贅沢なお買い物をするつもりです。そうそう、フルーツ発送も計画されているそうですよ!

你好我好
103台北市大同區迪化街一段14巷8號


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田中美帆|『高雄港の娘』春秋社アジア文芸ライブラリー
勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15