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かっぱ探しツアー
「え?かっぱ見たことないの?本当に?嘘でしょ?」
かっぱ探しツアーは、そんな感じで始まります。ノンフィクションです。
「いやいや、かっぱなんていないでしょ?」
「あ、東北にはおらんよね。寒いし。でも鳴き声くらいは聞いたことあるやろ?」
「いやいやいやいや。なにそれ?どんな風に鳴くの?」
福岡県にある私の実家に初めてやってきた妻。彼女はかっぱを見たことないというのです。子どものころからかっぱを見てきた私としては、彼女の反応がにわかに信じられません。
「高塔山に、まだかっぱおる?」
台所でその会話を聞いているはずの母に助けを求めます。すると母はいつもの勝ち誇ったような顔で答えます。
「そりゃおるやろ。」
かっぱを信じきった私と母の表情に少しうろたえ始める妻。
「かっぱ探しツアーに連れていってあげるよ。たぶん今日は見れると思うし。」
かっぱの住処までは車で20分ほど。夫の実家にきた妻の気散じにはちょうど良いのです。
道中の車内はかっぱの話題で持ちきり。
「最初にみたのは小学生のころでさ。」
「ソーセージで釣るんよ。」
「きききって鳴き声聞いたことない?」
などなど、妻はこれから出会う初かっぱに次第に胸をときめかせ始めます。
- 北九州市若松区高塔山 -
高塔山のてっぺんにある広場、そこあるのが河童地蔵尊です。
「昔、ここの地域にはたくさんの河童がおって悪さをしとったんやって。それをこのお地蔵様に封じ込めとるんよ。」
「マジなん?」
「うん、俺からしたらかっぱ見たことないほうがマジなん?やけどね。お地蔵さんの背中の釘を抜くと、かっぱの封印がとけてしまうけん絶対に触らんでね。」
高さ124メートルの高塔山の山頂には、若戸大橋や皿倉山、響灘が一望できる展望台があります。
「きれいやろ?」
「気持ちいいねぇ。」
「夜もめっちゃいいんよ。」
「確かに、すごい良さそうだね。」
「今度また夜来れたらいいね。」
「うん。」
「あ。聞こえる?鳴き声...。」
「え?どんなの?キキキって?」
「し〜。聞いて。下の木陰、かっぱおるんやない?」
「どこどこ??」
「逃げたかも?あ、後ろおる後ろ。」
そんな流れで振り向くと...
かっぱです。
お分かりいただけただろうか?