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あれは生き残りの日本兵だったのか?

これは実際に私が体験したお話です。

ある夏の夕暮れ。私は知り合いから譲ってもらったポンコツ軽自動車に乗って、車通りの少ない峠をこえようとしていました。

ヒグラシが、なにか懐かしいような、異空間に誘うような声で鳴き続けています。走り慣れた道でしたが、いつもと違うような不穏な感覚があり、ヒグラシのせいだと自分に言い聞かせていました。

上り坂で急に、眩しい夕焼けの逆光に見舞われ、私は目の上に手をかざしました。

赤い太陽光が目を突き、眩しい。

同時に、反対方向から一台の車が向かってきます。

人の気配を感じた私はどこかホッとし、対向車を運転するおじいさんに救われた気持ちになりました。

しかしその対向車のおじいさんがとつぜん、

ゆっくりと、

手を額のほうに持ち上げ、

しっかりと私をみながら、

敬礼を向けてきたのでした。

戦場に去りゆく日本兵のようにゆっくりと、想いのこもった敬礼を。

逆光を避けるために額に手をかざす私と、しっかりと私を見据え敬礼するおじいさん。お互いを送り出すような形ですれ違いました。

あのおじいさんは一体なにものだったのでしょうか...。


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※この記事は以下のつぶやきを実践しております

おしまい。

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