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あの夜わたしは閉じ込められていたかもしれない

男なら誰しも、悪代官になってお姫さまの着物の帯をくるくると剥がす例のアレ、一度は夢みたことがあるのではないでしょうか。

私は中学生の多感な時期に「夢」にみました。

夢の中の自分は巨漢の悪代官。

薄暗い中世の塔の中で、着物をきたお姫様を帯をくるくると剥がし

その白くか細い身体の上に、大きな怪物のような私はのしかかりました。

お姫様はあらん限りのチカラを振り絞って抵抗しますが、男の、しかも怪物のように大きな身体の私のチカラには及びません。

静寂の闇の中に、興奮した私の荒い鼻息が響き、

「おやめください!」

必死に訴えるお姫様の声がこだまします。

「おやめください!おやめください!」

私はやめる気など全くありません。もう理性もありません。

同時に、なんとなく「夢」であることがわかっていました。

なんとか「夢」から覚めないよう、自分の息遣いと、目の前の美しい女性に全神経を集中させていました。

「おやめください!このまま続けたら、もう戻れなくなりますよ!」

ふと自分が選択を迫られていることに気がつきました。

目の前の快楽を求めて、やるか。

夢から覚めるために、やめるか。

一瞬迷った私に、彼女の言葉が続きます。

「本当にもう戻れなくなりますよ!」

必死に訴える彼女の言葉で我にかえった私は、「やめる」ことを選びます。

そして、ふと目が覚めたのです。

「本当にもう戻れなくなりますよ!」

この時の叫び声が今でも頭の中に残っています。

「夢」の中の悪代官ではなく、現実の私に向けた言葉の残像。

あの夜わたしが選択を間違えば、「夢」の中に閉じ込められていたのかもしれません。

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これは怖くないですか?人が嫌がることはやめましょう。

おしまい。

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