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下町酒屋のクリエイティブ・マインドセット
下町を歩いている時に、あるモノが目に止まりました。
酒屋前にあったコレです。
三角コーンです。とてつもないクリエイティビティが発揮されています。
三角コーン(別名:パイロン)は、学校や工事現場などでよく目にします。同時にアートとして世にでることも少なくないように感じます。Traffic Cone Art で検索すると世界中で創作対象となっているようです。
2009年に美術家 長谷川維雄さんは地蔵コーンなるものを生み出し、数年後SNSで話題になりました。長谷川さんはインタビューで「日常空間に侵食していくパブリックアートを作りたかった」とおっしゃっていました。
ここで私は思うのです。
「下町酒屋がナゼあのようなクリエイティビィを発揮したのか?」
そのクリエイティブ・マインドセット術を知りたいと思いました。
ちなみにお店の外観はこれです。
酒屋の看板を掲げつつ、野菜や駄菓子も販売しています。
巨大なユウガオも置いています。
意を決した私は、万願寺とうがらしを手にレジに向かいました。
「三角コーン可愛いですね。なんで作ったんですか?」
「うふふ、ありがとう。毛糸でつくったの。」
女店主は嬉しそうに答えました。
素材ではなく動機を知りたかった私は、動揺を隠しながら続けます。
「なにか作ろうと思ったキッカケがあったんですか?」
「毛糸がたくさん余っていてね〜。」
そんなはずはない、こんな大量の毛糸が余るのか。まだなにかあると感じた私は関心を表情に現しながら、次の言葉を待ちました。すでに万願寺とうがらし代の100円はもう支払い済み。不信感を抱かせないために長居は無用。もうあとがない...。
「このへんは子供がたくさん通るでしょ?だから少しでも楽しんでもらおうと思ってね。」
なるほどです。この言葉はクリエイティブに関わる身の全てのヒトにとってとても大事な考え方を含んでいるように思えました。
店主のお母さんに新作も楽しみにしている旨を伝え、早々に帰路につきました。その帰り道に考えていたことを今まとめています。
酒屋店主から学んだクリエイティブ・マインドで大事なこと
私が酒屋の三角コーンをみて、一番に思い浮かんだのが百年近く読み継がれているロングセラー書籍「アート・スピリット(ロバート・ヘンライ著)」でした。この本はアーティストやクリエイター志望者に必読と言われています。
何をそんな大げさなと思うかもしれませんが、実際に当てはまるところがありました。アート・スピリットの文章を引用しながら、三角コーンに秘められたクリエイティブ・マインドセットを解説してみます。
作品に主題がなければ、絵は人目を驚かす曲芸でしかない。
決心がぐらついたり、不安だったりしたら、一体感は生まれない。
酒屋店主に学んだことは「作品の主題=目的」の大事さだと思いました。彼女には「子供たちに楽しんでもらう」という明確な目的があったのです。
なにかを創り出すとき「その目的は何か?」を問うこと。それは自主企画においても、依頼された広告制作においても大事だと感じます。
最初の段階で創る「目的」が明確になっていないと、制作途中で必ず向かうべき方向を見失います。そして結果、最終的に出来上がったものが何だったのか説明できなくなるのです。
それを三角コーンによって再認識させられたのでした。
また、酒屋店主の作品は以下の文章も当てはまっているのかと思います。
芸術とは、ここの人間が一人ずつ自分のよってたつ根拠を世界に分け与える事である。与えたいと思う人間、与える事を喜びとする人間は与えるという行為に喜びを見出す。与える人びとはとても強い。
私が三角コーンに感動した一番の理由は、この「与える」という行為からでた作品だったからなのかもしれません。
「目的」を明確にし、それをみるヒトに「与える」ことを意識する。今後はそのように創作していこうと思った本日、曇り時々雨でした。おしまい。