『星のカービィ』がプロダクト開発の事例としても参考になるなぁ〜と思った話
先日からYouTubeにて、「星のカービィ」「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの企画・ディレクターである桜井政博さんが個人チャンネルを開設したのをご存知でしょうか。
世界に愛されるプロダクトを生み出し、ここまで育てた1人の企画者のお話を聞けるというのはとても嬉しいことです。
ゲームデザインと業務系プロダクトのデザインでは系統が違うものの、「企画しプロダクトを育てる点では同じ」というわけで、動画をプロダクト目線をちょい足ししながら考察していきたいと思います。
動画概要
カービィの使命「ゲーム初心者をゲームの世界に導く」
当時のゲームハードは使える容量が非常に少なかった
長い時間遊んでもらうためアクションゲームでは高難易度のものが主流で、初心者にはハードルが高かった
難易度を低く調整した「星のカービィ」を販売し、結果的に大成功となった
プロダクトデザインの手法に当てはめてみる
フレームワークに「星のカービィ」を当てはめることで、プロダクトと同じ視点に要素分解してみます。
軸となる仮説
「市場のゲームは難しすぎる。難易度を下げて誰でも遊べるゲームなら初心者層に届くのではないか?」
現状
市場のゲームは難しすぎる
実現すること
誰でも遊べる簡単なゲームで、初心者がゲームを楽しむ入り口をつくる
プロダクトヴィジョンボード
結果的に達成された事柄から逆算的に上記を作成しました。
用件定義
①ゲームの難易度を簡単めに調整する
「敵に当たる」と「穴に落ちる」
「敵に当たる」に比べ、「穴に落ちる」ことはそんなに悪いことをしている感覚がないのに即死になるゲームが当時多かったそうです(今もかなり沢山ある気がする)。
そこで、カービィに飛行機能をつけることで落下回避を簡単にしています。
そのほかにもゲーム全体の難易度が簡単に設定されており、ゲームが上手い人なら20分程度でクリアできるボリュームになっているそうです。
②ゲーム性(リスクとリターン)以外の要素を高品質にする
ゲームの面白さの1つの要因に「大きなリスクを冒すほど大きなリターンがある」という要素があり、それがゲーム性であると桜井さんは話しています。
しかし「ゲーム性を高くすると一般性が落ちる」ともあります。
つまり、ハイリスクハイリターンを必要とする高難易度なゲームは遊ぶ人を選ぶということですね。
ゲームの構成要素は難しいステージの攻略だけではありません。
ゲーム内BGMの充実
演出の音ハメ
操作感の向上
クリアダンス
「星のカービィ」では上記の要素等を追加・強化することで、低難易度で高品質のゲームに仕上げていたようです。
👆「リスクとリターン」もめちゃくちゃ面白かったのでぜひ観てください。
③低容量でゲームを構成して少しでもプレイ時間を伸ばす
星のカービィは64KBに収まるように開発されていました(すごい)。
当時としても少ない容量でゲームを作ることになった背景は分かりませんが、Youtubeで解説されていた通り、数千〜数万円と高価格で購入したゲームが短時間で終わってしまってはよくありません。
そこで、少ない容量でゲームの面白みを多く詰め込む工夫が行われています。
例えば、マキシムトマトの「M」マークはドットイラストの左右反転で表現できるからあのデザインになっているそう。
ウィスピーウッズは、穴のドット絵を一つ用意し木のドット絵に3つ穴を表示することで作成されており、非常に低容量なボスキャラになっています。
参考:「桜井政博氏が語る、初代『星のカービィ』開発秘話。当時の企画書に、あのゲームの原点があった?」
『星のカービィ』はどうなったか
歴代で圧倒的な売上ナンバーワン
2位にダブルスコアをつけてカービィ史上圧倒的1位と説明されています。
世界での総売上本数は500万本超えらしいです。
幼稚園でカービィの落書きを見つける
岩田さんはHAL研究所(カービィ開発会社)プログラマーで、後に任天堂の社長になった方です。
製品が市場に適合することを「PMF (product market fit)」と言いますが、まさにゲームをはじめて触れる層での認知が高まっている状態となり、PMFを実感できる状態でした。
続編が開発され続ける人気タイトルになった
説明不要と思いますが、続編が現在も制作され続けています。
最近、『星のカービィ ディスカバリー』で遊んだのですが、最高です。
コンセプトに沿った展開と、ゲームで楽しさ(特にアクションとパズルの爽快さ)を感じられる工夫をたくさん発見できました。
「星のカービィ」シリーズをはじめとする国内ゲームは、日本のプロダクトとして世界を席巻した最大級の事例だと思います。
ビジネス系のプロダクトでは国内から海外市場へ浸透する事例がほとんどない分、参考にできる点は潜んでいるのではないでしょうか。
ユーザーに届けたい体験と仮説を明確にしてプロダクト作りに取り組んだ結果と思うと、ゲームの画面越しに届く熱量を見習いたいと思った次第でした。