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3.11から10年が経つらしいので当時アイドルマスターの沼にハマった話をします

3.11からもう10年が経つらしい。

先日は久方ぶりに大きな地震がありましたね。うちはほどよく山に面したギリ平地で海も遠いので土砂崩れや津波の心配もなく、お陰様で大したことはありませんでした。大きい被害に遭われた地域の方には復旧をお祈り申し上げます。本屋とか地獄だろうな。

さておおよそ9年と11か月前、大学生だった僕は当時暮らしていたマンションの自室で3.11震災を経験した。

確かPCでネットサーフィンをしていたときだったか。激しい揺れを感じてとるものもとりあえずPCの筐体を抱え込んでいたのは、なかなか滑稽な絵面だったように思う。

揺れが収まって一息つくと、死守した愛機は電力供給が途絶えてピクリとも動かなくなっていた。

僕の住む地域は一般的な住宅であれば水道だけはものの数日で復旧していたのだが、マンション8階という半端な高層のため電動の汲み上げポンプが使われていたので、電気が復旧される2週間以上後までライフラインが途絶え続けた。

こうして路頭に迷いかけた僕の部屋を訪れたのは、大学サークルの先輩Tさんだった。

Tさんは同じく大学サークルの同輩Dとルームシェアをしていて、こういうときだからと一時同居を提案してくれた。生活面よりも暇を持て余すであろう不安でいっぱいだった僕は、渡りに船と喜んで身を寄せることになる。

先輩の家も地震直後は電気が止まっていたものの、警察署が近く予備電源の対象地域だったためかなんと次の日には電気が復旧していた。ライフラインに影響を受けた被災地域でこの復旧速度はほぼ最速だったのではないだろうか。

電気が自由になったのをいいことにプレステ、Xbox、パソコンを起動してそれぞれの画面に向かってゲームを遊んでいる姿は被災地においてあまりに不謹慎な光景だったことだろう。

ところで当時二人がご執心だったのが何を隠そうアイドルマスターである。彼らは震災直前の2月24日に発売したばかりのアイドルマスター2を遊び倒していた。

正直僕はちょっと引いていた。中学の頃モーニング娘。にハマって以来は敬遠してきたアイドルという存在そのものに忌避感を持っていたし、二次元のものとなれば尚更だ。そこそこ硬派なオタクを気取っていた当時の僕には受け入れがたいものがあった。

美少女系エロゲーを「萌え^~」とか言いながらやっていた野郎が厚顔無恥もいいところである。凝り固まったオタクは自分の守備範囲外に出ることを極端に嫌うものだが、いい例だったと思う。Dからのやってみろという薦めも応じるにはだいぶ時間がかかった。

そんな僕の手を取ってアイマス沼へと引きずり込んだ記念すべきアイドルは、765プロきっての歌姫・如月千早だった。

如月千早は気難しさが少し鼻にかかるが、歌うことにストイックな姿勢が美しいアイドルだ。オペラや声楽を思わせる高音を持ち、その歌唱力を極めるためトップアイドルの道を志す。そんな彼女の頑張りを隣で見守り、トップアイドルへと導いてゆく過程に僕は熱狂した。彼女とともに時に笑い、時には涙した。

プロデュースの余韻に浸る僕へ友人Dが投げかけたのは
「千早にキラメキラリ歌わせてみ?」
というものだった。
T先輩はなんか後ろでニヤついていた。

キラメキラリがなんのこっちゃという人に説明すると、千早と同じく765プロ所属の中学生アイドル・高槻やよいの持ち歌である。アイマス元気ソングの代名詞とも言え、アイマスを知らなくてもキラメキラリと「とかちつくちて」だけは知っているという人がいるほどだ。
もう一度言うが、キラメキラリははつらつとした中学生アイドルが歌う元気ソングである。

なんという禁忌、なんという冒涜。
千早はオペラ調の歌声が持ち味のアイドルだ。しっとりしたバラードや切ないラブソングを歌いあげる様に僕は熱狂したのだ。だからこそ彼女のコンセプトを崩すまいと避けてきたアップテンポのお元気ソングを、こいつは千早に歌わせろというのか…?そんなことをしたらとんでもないことになるのが目に見えているじゃあないかッ…!!

僕は誘惑に負けた。ステージアイドルに千早とやよいを選ぶ。選曲はキラメキラリ。デュオにやよいを置いたのはせめてものフォローだ。やよいは、そえるだけ。

そこには持ち歌を元気に歌って踊るやよいと、高らかかつリズミカルに声を張り上げる歌のおねえさんがいた。
なにこれクッソ面白い。

僕はプロデュースアイドル1人目にして真理に気付いてしまった。これこそがアイマスの楽しみ方だ。
「やっぱりKosmos,Cosmosは雪歩に歌わせるべきだよなあ」とか「千早と美希のrerationsは関係性を感じてエモい」とか
そういった正統派の陰に必ず存在する、
「やよいに目が逢う瞬間を歌わせるとおマセさん」や「あずささんのDo-daiはさすがにキツい」
という違和感のある組み合わせまでを楽しんでこそ、アイマスの酸いも甘いもを知った真のプロデューサーとしての道が開けるのだ。

東日本大震災から三日目、未だライフラインが復旧しない不安で多くの人が苛まれる夜長に、最低な男たちの笑い声が響き渡った。

兎にも角にもアイドルマスターは、先行き不安な被災地に一筋の光を届けてくれたのだった。

あれから10年、当時を思い出す大きな地震が起こった今もアイマスは僕の隣にある。まるで同窓会で会うクラスメイトのように、あのときと変わらない輝きで僕たちを励ましてくれる。

願わくばまた10年先も、アイマスというコンテンツが続いてくれたら、今と変わらず好きでいられたらと思う。

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