忘備録 市場調査(マーケットリサーチ)

市場調査(マーケットリサーチ)は「自社の商品やサービスが、市場や顧客にどのように受け入れられるか」を調べ、経営戦略やマーケティング施策に役立てるための情報を収集・分析する活動です。市場調査を行うことで、顧客のニーズを正確に把握し、製品開発の方向性や販売戦略・広告戦略を最適化しやすくなります。

以下では、市場調査の一般的な進め方を順を追って説明します。


1. 調査目的・課題の明確化

1-1. 調査のゴール設定

まずは「なぜ市場調査をするのか?」「どのような課題を解決したいのか?」を明確にすることが大切です。たとえば、以下のような目的があります。

  • 新商品開発の方向性を検討したい

  • 既存商品のターゲット層の満足度や不満点を把握したい

  • 市場規模の予測を行いたい

  • 競合状況を把握し、自社の優位性を発見したい

調査目的が曖昧なまま進めると、必要以上に広い情報を集めてしまい、結局何が言えるのかが分からなくなる可能性があります。ゴールを明確化しておくことで、調査範囲の絞り込みや調査設計がスムーズになります。


2. 調査計画の策定

2-1. 調査項目・指標の設定

調査目的を達成するために、「具体的にどのような情報を知りたいか」を整理しておきます。たとえば「新商品のターゲット顧客像を掴む」であれば、「年齢・性別・地域」「どんな場面・頻度で使うか」「選ぶ際の基準は何か」などの項目を洗い出します。
この際、**KPI(重要な指標)**となるものがあれば明確に定義しておくのも重要です。

2-2. 調査対象・サンプルの設定

  • BtoCの場合: 調査対象となる消費者の年代・性別・地域・生活スタイルなど

  • BtoBの場合: 調査対象となる業種・企業規模・担当部門・役職など

誰を対象とするのかによって、必要な調査手法や質問項目が異なってきます。

2-3. 調査手法の検討

市場調査には大きく二次調査(既存情報の調査)と一次調査(新規にデータを収集)の2種類があります。まずは二次調査を行い、それでも不足する情報を一次調査で補う、という流れが一般的です。


3. 二次調査

二次調査は、すでに発表・公表されているデータや情報を収集し分析する方法です。比較的低コストで短期間で実施可能です。以下のような情報源があります。

  • 公的機関の統計: 総務省・経済産業省・厚生労働省などの公式統計データ

  • シンクタンクや調査会社のレポート: マーケットサイズやトレンドレポートなど

  • 業界団体のレポート・ニュースリリース

  • 企業のIR情報や決算資料: 競合他社の業績、ビジネスモデル、今後の方針

  • インターネット情報: GoogleトレンドやSNSデータ、顧客レビューサイトなど

二次情報をうまく活用すると、市場の概況や競合状況を大まかに把握でき、自社にとって重要な調査ポイントを絞り込めます。


4. 一次調査

二次調査で得られなかった情報を補うために、自社で直接データを収集します。代表的な方法は以下の通りです。

4-1. 定量調査(量的調査)

数値データを大規模に収集し、統計的に分析する手法です。

  • アンケート調査

    • オンライン調査: Webアンケート、SNS調査

    • 街頭調査: 街頭で声をかけて回答を収集

    • 郵送調査: 質問票を送付して回答を得る(最近は減少傾向)

  • アクセスログ分析・購買データ分析

    • 自社ECサイトや店舗の売上データ、Webサイトのアクセスログなどを分析

定量調査は「年代×地域×購買金額」「利用頻度×満足度」のように、統計的に優位性を検証しやすいことが特徴です。

4-2. 定性調査(質的調査)

少人数から深い意見を引き出し、行動や心理を理解する手法です。

  • インタビュー調査: 対面・オンラインで1対1または1対複数の形で実施

  • グループインタビュー(フォーカスグループ): 5〜8名程度のグループでディスカッションを行い、消費者の生の声や意見を収集

  • 観察調査・エスノグラフィ: 実際の生活空間や購買現場に入り込み、利用者の行動や感情を観察しながら記録

定性調査は少数の深いインサイトを得るのに適しています。たとえば「潜在ニーズ」「心理的障壁」「選択の根拠」など、数字だけでは見えにくい背景を探ることができます。


5. データ分析・インサイト抽出

5-1. 定量データの分析

アンケートで取得したデータや売上ログなどを、統計ツールやExcelなどを用いて分析します。代表的な分析手法には以下があります。

  • 基本統計量: 平均値、中央値、標準偏差など

  • クロス集計: ある質問結果を他の属性(年代、性別など)と掛け合わせて分析

  • 回帰分析・多変量解析: 複数の変数(要因)と目的変数(購買意欲など)との相関関係を分析

5-2. 定性データの分析

インタビューやグループディスカッションの内容を録音・メモ・テキスト化し、共通する意見や特徴的なキーワードを整理・分類していきます。

  • グラウンデッド・セオリー・アプローチ: 得られた発言や行動を少しずつ分類し、理論を構築していく手法

  • KJ法: 付箋などを使いながら情報をグルーピングし、発想を深める手法

5-3. インサイトの抽出

分析結果から、**「なぜその結果になったのか」「そこから何が分かるのか」**を考え、調査目的との関連性を探ります。売上データやアンケート数値だけを眺めるのではなく、背景にある顧客心理や行動パターンを紐解くことが大切です。


6. レポート作成・情報共有

6-1. 分析結果の整理

  • 仮説や調査目的に対する結論を端的にまとめる

  • 主要な数値や発言データ、グラフを用いて分かりやすく可視化する

6-2. 戦略・施策への活用

  • 商品開発の方向性や訴求メッセージの見直し

  • 広告・販促チャネルの選定やターゲティングへの応用

  • 価格設定やラインナップの調整

  • 競合との差別化要素の強化

レポートは、経営層や他の部門にも伝わりやすい形でまとめることが重要です。行動に移せる形で示すことによって、社内での合意形成がスムーズになります。


7. 市場調査を成功させるポイント

  1. 目的をブレさせない

    • 最終的に何を知りたいのかを常に意識し、調査の設計や分析がブレないようにする。

  2. 二次調査→一次調査の順番を意識する

    • 既存の情報で分かることがないかを十分に確認しておくと、調査コストを抑えられる。

  3. 定量調査と定性調査を組み合わせる

    • 「数で表れる部分(定量)」と「深い心理や動機(定性)」は両輪。どちらか一方だけでは見落としが生まれやすい。

  4. 調査の設計・サンプリングを丁寧に行う

    • 不十分なサンプリングは誤った結論につながることがある。ターゲットが明確でない調査は精度が下がりがち。

  5. 分析だけでなく「洞察」や「アクション」を導く

    • 単なるデータの羅列ではなく、「なぜそうなっているのか?」を考え抜くことで、具体的なアクションプランが生まれる。

  6. 社内外とのコミュニケーション

    • 調査設計の段階から、関係者の意見や他部署の情報を取り入れると、より有用な調査内容になる。

    • 結果を共有する際も、受け手が理解しやすい形・タイミングでレポートやプレゼンを実施する。


市場調査の世界もテクノロジーの進化や消費者行動の変化に伴い、近年新しい手法が続々と出てきています。以下では、比較的「最新」といわれる動向や技術を活用した市場調査の手法をご紹介します。これらを上手く取り入れることで、よりリアルで深い消費者インサイトを得ることができます。


1. ソーシャルリスニング(Social Listening)

1-1. 概要

SNS(Twitter、Instagram、YouTube、TikTokなど)や掲示板(5ちゃんねる、Redditなど)上でやり取りされているユーザーの投稿やコメントを、ツールやAIで収集・分析する手法です。ブランド名や製品名、特定のキーワードをモニタリングし、リアルタイムに消費者の声を可視化することができます。

1-2. メリット

  • 消費者の本音・自然発生的な意見を収集できる

  • リアルタイムでトレンドを追跡可能

  • 競合企業や市場全体の話題・評判を把握しやすい

1-3. 活用例

  • 製品のリリース直後の口コミ動向チェック

  • SNSキャンペーンの効果測定

  • 新商品アイデアをユーザーの投稿から抽出


2. 感情解析(センチメント分析)+AIテキストマイニング

2-1. 概要

ソーシャルリスニングやアンケートの自由回答欄などのテキストデータをAIで解析し、その文脈や言葉遣いからポジティブ・ネガティブの感情を数値化(センチメント分析)したり、共通のトピック・キーワードを抽出(テキストマイニング)して全体像を把握する手法です。

2-2. メリット

  • 従来は人手で行っていた膨大なテキストの分析を、短時間で効率的にできる

  • 消費者が本当に感じている感情や潜在的なニーズを抽出しやすい

  • センチメントの推移やキーワード頻度を定量的に把握できる

2-3. 活用例

  • SNS投稿のポジ・ネガ比率のモニタリング

  • 新製品に対する口コミの主要トピック抽出

  • ブランドイメージを大規模なテキストデータから可視化


3. オンライン・コミュニティ調査(コミュニティリサーチ)

3-1. 概要

自社専用のオンラインコミュニティやファンクラブ、SNSグループなどを用意し、そこに集まった熱量の高いユーザーやターゲット層とのコミュニケーションを通じて定性的・定量的情報を得る手法です。アンケートやディスカッション、チャットなどを行いながら、継続的にインサイトを収集します。

3-2. メリット

  • 継続的にユーザーの声を聞ける(単発の調査ではなく、常に顧客との接点を持てる)

  • 新製品・試作品のフィードバックをダイレクトに反映できる

  • 特にブランドロイヤルティの高いユーザーからは深い意見を集めやすい

3-3. 活用例

  • 新商品のアイデアコンセプトをコミュニティメンバーに投げて意見をもらう

  • ファンベースマーケティング戦略への活用

  • 定期的にコミュニティ内アンケートを実施し、満足度や要望を把握


4. モバイル・エスノグラフィ(Mobile Ethnography)

4-1. 概要

伝統的なエスノグラフィ(フィールドワーク的な観察やインタビュー)を、スマートフォンアプリやSNSを活用してリアルタイム・かつ日常的な行動の記録として収集する手法です。写真や動画、位置情報、テキストなどをその場で送ってもらうことで、ユーザーが普段どのような状況で製品やサービスを利用しているのか、具体的な行動や心理を深掘りできます。

4-2. メリット

  • 調査対象者が体験している瞬間を、タイムリーに可視化できる

  • 後付けの記憶や回答バイアスが少なく、より現実的なデータを取得可能

  • 地理的・物理的な制約がなく、幅広いエリアで実施できる

4-3. 活用例

  • 日常の食生活を写真付きでレポートしてもらい、食習慣のインサイトを得る

  • 店舗や街中での購買行動をリアルタイムにレポートしてもらう

  • アプリの使用状況をスクリーンショットで共有してもらい、UI/UXの改善に活用


5. ニューロマーケティング(Neuromarketing)

5-1. 概要

脳科学や生理学(脳波測定、視線追跡、心拍数や皮膚電気反応など)をマーケティングと組み合わせた手法です。意識的な回答やアンケートのバイアスを超えて、利用者の無意識レベルの反応をデータ化することが目指されています。

5-2. メリット

  • アンケートでは言語化しにくい感情的な反応や好意度を測定できる

  • CMや広告、店頭ディスプレイ、パッケージデザインに対する反応を客観的に評価可能

  • “なんとなく良い/悪い”といった潜在印象の可視化

5-3. 活用例

  • 広告クリエイティブのテスト(視線の流れ、興奮度の測定)

  • 新しいパッケージデザインが消費者の脳に与えるインパクトを客観的に評価

  • 店舗レイアウトや棚配置の視線追跡を行い、購買導線の最適化に活かす


6. AR/VRを活用したバーチャル調査

6-1. 概要

仮想空間でのユーザー体験を通じて、プロトタイプ商品や店舗レイアウト、サービスの利用シーンをバーチャルにテストする手法です。ユーザーはVRゴーグルやARアプリを使って、まるで現実世界にいるかのようなシミュレーション空間で製品やサービスを試せます。

6-2. メリット

  • 実物を製造・設置する前に、顧客体験を検証できるためコスト削減

  • 店舗レイアウトや什器配置など、大規模な実験が必要なものでも簡易にテスト可能

  • リアルな行動データ(動線、視線、操作時間など)を記録・分析できる

6-3. 活用例

  • バーチャル店舗における商品陳列のテスト

  • 新車の内外装デザインをVR上でユーザーに体験してもらい、意見を収集

  • 大型家具やリフォームプランをARで試し、購買意欲や満足度を調査


7. AI・ビッグデータ分析と予測モデル

7-1. 概要

自社が持つ膨大な購買データ、アクセスログ、顧客属性情報などをAIや機械学習モデルで解析し、需要予測や顧客行動のパターン分析を行う手法です。近年はクラウド上の分析ツールやBIツール(Tableau、Looker、Power BI など)との連携で、比較的容易に大規模データを取り扱うことができます。

7-2. メリット

  • 従来は見落としていた複雑な相関関係やパターンを発見できる

  • 需要予測、在庫管理、販促施策の最適化など、実務に直結したインサイトが得られる

  • リアルタイム分析により、市場の変化や消費者行動の変化に即応できる

7-3. 活用例

  • 過去の購買データを分析し、顧客の離反予兆を検知してリテンション施策を強化

  • 新商品の販売予測モデルを作り、適切な在庫管理と仕入れ計画を立てる

  • 大量のWebサイト行動データを解析し、顧客セグメントごとの最適な広告クリエイティブを自動生成


8. リアルタイム調査(チャットボットや対話AIの活用)

8-1. 概要

Webサイトやアプリ内でチャットボットや対話AIを導入し、リアルタイムで顧客の声や疑問を収集・解析する手法です。問い合わせ対応や接客のフローに組み込むことで、自然に市場調査的な質問を行うこともできます。

8-2. メリット

  • ユーザーが商品に興味を持っている「まさにその瞬間」にヒアリング可能

  • 質問と回答のログを蓄積し、そのまま分析に活かせる

  • 従来のアンケートのように回答に手間がかからない(チャット形式で手軽)

8-3. 活用例

  • 自社ECサイトのチャットボットで「どんな用途で探しているのか」を自然に質問しデータを蓄積

  • カスタマーサポートにAIを導入し、問い合わせ内容から製品の改善点を抽出

  • 対話AIが適時リサーチ的な質問をはさみ、ユーザーの体験を阻害しない形でインサイトを得る


9. 位置情報データ・ビーコンを活用したオフライン行動分析

9-1. 概要

スマホアプリやBeacon(ビーコン)などのIoT機器を使い、消費者のオフラインでの位置情報や移動履歴を分析する手法です。実店舗での滞在時間や、イベント・施設への来場状況などを把握し、リアルな購買・行動データを可視化します。

9-2. メリット

  • オンラインだけでなくオフラインでの行動パターンもデータ化可能

  • 店舗・エリアマーケティングの最適化(出店場所の選定、イベント効果測定など)

  • 来店タイミングや動線を加味した販促シナリオの設計が可能

9-3. 活用例

  • アプリ利用者のGPSデータをもとに、イベント会場内の人の流れを可視化

  • 実店舗に設置したビーコンと連動し、各売り場・棚での滞在時間を分析

  • 特定エリアの居住者・通勤者の属性や行動範囲を把握して、ローカル広告を最適化


まとめと導入のポイント

  1. 複数の手法を組み合わせる

    • AIやモバイルエスノグラフィ、ニューロマーケティングなど、新旧の手法を組み合わせて相互補完的に活用することで、より確度の高いインサイトを得ることができます。

  2. 目的に合ったテクノロジー選定

    • 新しい技術だからといって、目的に合わない場合は時間とコストがかかるだけになりがちです。調査目的を明確にし、最適な手法を選定しましょう。

  3. 分析結果をアクションに落とし込む仕組み作り

    • 最新技術を用いた分析だけで満足するのではなく、「どのように意思決定に役立てるか」をあらかじめ設計し、社内の各部門と連携しながら使いこなすことが鍵です。

  4. プライバシーとデータの取り扱いに注意

    • とくに位置情報や生体データなどは個人情報の扱いが厳しく規制されています。ユーザーの同意管理やセキュリティ対策をしっかり行いましょう。

10. 今後の市場調査のトレンドと展望

ここまでご紹介したように、市場調査の手法はテクノロジーや社会環境の変化とともに進化してきました。今後はさらに、新しいデバイスやデータソースが増えるだけでなく、調査・分析工程そのものが高度化し、自動化・リアルタイム化していくことが予想されます。ここでは、今後注目したい市場調査のトレンドや展望をご紹介します。


10-1. ゲーミフィケーション(Gamification)の活用

■ 概要

従来のアンケート調査は、回答者にとって「退屈」「面倒」という印象を与えがちでした。そこで最近注目されているのが「ゲーミフィケーション」です。アンケートや調査にゲーム的要素(ポイントやバッジ、ランキングなど)を取り入れることで、調査参加へのモチベーションを高め、より多くかつ正確なデータを集めようという試みです。

■ 活用イメージ

  • ゲーム形式のクイズに答えてもらうとポイントがたまり、景品や特典と交換できる

  • ARアプリで調査対象者が「スタンプラリー感覚」で回答を集める

  • 調査に参加したユーザー同士で交流できる仕組みを整え、コミュニティ化を促進

■ メリットと注意点

  • 回答率が上がりやすい、かつ参加者の満足度も高まりやすい

  • ただし、ゲーム要素に偏りすぎると本来欲しいデータが歪むリスクがあるため、バランスが重要


10-2. アバターやメタバース空間での調査

■ 概要

メタバースや3Dバーチャル空間が普及しつつあるなかで、アバターを通じたコミュニケーションや「仮想店舗」「仮想イベント」が増えています。そこで利用者の行動や会話を解析したり、バーチャル空間内でアンケートやインタビューを実施したりといった形の次世代型市場調査が徐々に実用化されつつあります。

■ 活用イメージ

  • バーチャル店舗での買い物体験を分析し、実店舗・ECサイトの最適化に活かす

  • メタバース内でグループインタビューやフォーカスグループを開き、アバター同士で自由に意見交換

  • アバターの動きやしぐさを追跡し、感情や興味度合いの測定に応用

■ メリット

  • 地理的・物理的制約がなく、グローバル規模で柔軟に調査が可能

  • 利用者がアバター越しだと心理的ハードルが下がり、本音を引き出しやすいケースもある


10-3. 音声データ・会話分析の高度化

■ 概要

近年はスマートスピーカー(Amazon Echo、Google Nest など)や音声SNS(Clubhouse、Twitterスペースなど)の普及により、音声データが新たな情報源として注目されています。さらに、自然言語処理技術が高度化しているため、録音データを自動的に文字起こしし、感情分析・キーワード抽出するソリューションが増えています。

■ 活用イメージ

  • カスタマーサポートの通話録音データから、顧客の不満点や潜在ニーズを抽出

  • 音声SNS上での会話をAIで解析し、トレンドや話題の盛り上がりをモニタリング

  • スマートスピーカー上で短時間の音声アンケートを実施し、リアルタイムに回答を収集

■ メリット

  • テキストベースでは得にくい「声のトーン」「話すスピード」「言いよどみ」などを通じた感情推定が可能

  • 音声データは人間にとっても分かりやすく、動画コンテンツと組み合わせることでさらなる洞察を得られる


10-4. 調査の“マイクロ化”と常時接点

■ 概要

大規模な調査を定期的に行うのではなく、「短く」「手軽」に答えられる調査を、高頻度で日常に組み込む手法も広がっています。

  • マイクロ・サーベイ: Webやアプリ、SNS上で数問だけの簡単なアンケートを実施

  • プッシュ通知でのリアルタイム回答: スマホのプッシュ通知を使って、ユーザーの行動中にさっと回答してもらう

■ メリット

  • 回答者の負担が少なく、回答率が高い

  • 時間の経過や状況の変化に合わせて、連続的・リアルタイムにデータを蓄積できる

  • マーケターも、細かい検証を素早く回せるようになる(アジャイル型市場調査)


10-5. 市場調査が「内製化」しやすくなる流れ

■ 概要

従来は専門の調査会社やコンサルティングファームへ外注しがちだった市場調査も、近年はオンラインツールやクラウドサービスの普及によって、企業が自前で完結できる環境が整いつつあります。

  • オンラインアンケートツール(SurveyMonkey、Qualtrics など)

  • BIツールやデータ分析プラットフォーム(Tableau、Looker、Power BI など)

  • SNS分析ツール、ソーシャルリスニングツールのSaaS化

■ メリット

  • スピード感をもって必要なデータを集められる

  • 社内に蓄積したデータやナレッジを柔軟に再利用しやすい

  • スモールスタートでテストできるため、コストを抑えながら継続可能

■ 内製化で注意すべき点

  • 社内メンバーのリサーチスキルの底上げが必要(設計ミスやバイアスを回避するため)

  • データセキュリティや個人情報保護のルール設定と運用が不可欠

  • 外部の専門家のアドバイスをうまく取り入れることで、内製化×外注のハイブリッドな体制を作る


11. 導入時のステップ例

最新の市場調査手法を導入する際に、具体的にどのようなステップで進めるべきか、簡単にまとめます。

  1. 調査目的の再定義

    • まずは既存の調査でどこまで網羅できているのか、どの部分が不足しているのかを洗い出し、新技術導入の目的や期待値を整理します。

  2. 社内リソース・スキルの確認

    • 新しいツールや技術に対応できる人材がいるか、人員や予算をどれだけ割けるかを把握し、必要に応じて研修や外部支援の検討を行いましょう。

  3. パイロット調査の実施

    • いきなり大規模導入するのではなく、小規模なテスト調査(PoC: Proof of Concept)を実施して、効果や運用上の課題を見極めます。

  4. 本格導入と運用フローの確立

    • 社内向けのガイドラインやルールを整備し、定期的・継続的な運用ができる体制を作ります。データの保管、権限管理、分析・レポートのルーティンを明確化しましょう。

  5. 成果の検証・改善サイクル

    • 実施した調査結果を元に施策を打ち、その成果を定期的に検証します。ツールのチューニングやプロセス改善を重ね、より精度の高い市場調査体制を確立します。

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