忘備録 「気合とやま感営業」は、多品種化・ソリューション化・グローバル化・異業種参入といった複雑化・変化が当たり前の現代では、以下のような課題が生じやすくなる。
「気合とやま感営業」は、いわゆる“人脈や直感、個人の熱意や根性”に大きく依存する営業スタイルです。これまで単品種の商品を国内顧客に販売していたような状況では、一定の成果を上げやすい面があります。しかし、多品種化・ソリューション化・グローバル化・異業種参入といった複雑化・変化が当たり前の現代では、以下のような課題が生じやすくなります。
1. 多品種化で「個人の勘」だけではカバーしきれない
1-1. 製品知識・ソリューション知識の拡大
単品→多品種
“この製品に強い”エース営業が活躍できても、新しい品目を次々覚える負担が大きい。
気合と根性だけでは“商品の幅広い知識”や“複合提案のロジック”まで網羅しきれない。
個々人の脳内データベースに依存しがち
複数製品のスペック、適用事例、価格体系などを営業が丸暗記している場合、属人的になりすぎてミスや漏れが起きやすい。
体系化された情報管理システム(CRM、PIMなど)やインサイドセールス部門のサポートがないと、気合だけでは処理しきれない情報量になる。
1-2. 組み合わせ提案が求められる
“〇〇商品と××商品を組み合わせて顧客課題を解決する” といったソリューション提案型になると、複数部門・複数プロダクトチームとの連携が必須。
人的ネットワーク頼みだと社内外の調整に時間がかかり、スピード感で負ける可能性が高まる。
2. 「事売り(ソリューション営業)」への移行
2-1. コンサルティング的なスキルが必要
“モノを売る”から“顧客課題解決”へと変化すると、問題発見・分析・提案力がより重視される。
気合とカリスマ だけでリードを獲得しても、深い課題分析やROI試算などが求められるため、知識やデータ活用が不可欠。
2-2. チームセリング・プロジェクトマネジメントの重要性
ソリューション提案には、営業担当だけでなく技術者やサポート、さらには外部パートナーとの協業が当たり前になる。
組織横断的な連携やプロジェクト管理能力 が必要になり、個人の根性・直感のみでお客様にアプローチしていては大規模案件を取りこぼすリスクが高い。
3. グローバル化・バイヤー視点の変化
3-1. 海外のバイヤーや新興国市場の拡大
国内中心から海外へ拡張すると、言語・文化・商習慣が異なる顧客が増える。
“気合”や“日本人同士の阿吽の呼吸”は通じず、論理的な提案書や数字の裏付けがさらに重要になる。
3-2. 「買いが中心」の高度化した購買プロセス
顧客側もオンラインで製品情報・価格比較・レビューを調べ、RFP(提案依頼書)を出すような高度な購買行動が増えている。
営業担当との対話の前にデジタル上で大半の情報収集が終わっている 場合、“気合”に頼る飛び込み営業や従来のトークだけでは選ばれにくい。
最終段階で価格・比較検討されるため、定量的な優位性を提示できなければ競合に負けやすい。
4. 異業種参入・新分野への進出
4-1. 新しい業界の人脈ゼロ
「気合とやま感」で成果を出してきた営業でも、新分野・業界でのネットワークがない場合、初動が圧倒的に不利。
データベースマーケティングや業界メディア・SNSの活用が必要だが、属人的営業スタイルだとそうした方法論に弱いケースが多い。
4-2. 顧客要望やバリューチェーンの複雑化
新分野の顧客は、自社の既存アセットをどのように活かせるかが不明瞭だったり、複数ステークホルダーと同時に交渉が必要な場合が多い。
それぞれのステークホルダーの利害や決裁プロセスを“根性と勘”で乗り切るにはリスクが大きすぎる。
5. 今後「気合とやま感営業」はどうなる?
5-1. 個人の強みを発揮できる局面は依然として存在
大口案件の最終クロージングや重要パートナーとの関係構築、キーマンとの“人間的な信頼関係”の形成では、やはり人間力・熱意が大きな武器となる。が、それが失敗する可能性を拡大させることもある。
「営業は最後は人と人」 という部分は、いくらデジタルやAIが進化しても一定の重要性を持つ。しかし確実に徐々に縮小→取引先側のAI分析の購入決定システムなどが拡大すると俗人的な手法は非常に特殊な時にしか使えない。
5-2. ただし“やま感のみ”ではビジネス拡大に不可能
多品種・ソリューション型・海外展開などの複雑化時代 には、以下が必須に近い:
データの活用(顧客分析、競合分析、予測分析 など)
チーム連携・社内外パートナーとの協業
論理的提案スキル(ROI試算、課題ヒアリング、課題解決策の立案 など)
オンライン・デジタルマーケティング(MAツール、オンラインイベント、SNSなど)
これらを無視して「気合・根性」一本槍の営業スタイルを続けていると、市場全体が高度化・透明化する中で競合に負けやすくなる。
6. 「気合とやま感」をどう活かすか—ハイブリッドの方向
6-1. “データ+人間力” の相乗効果
データやAIが得意な部分:リード発掘、顧客セグメント、最適なアプローチタイミングの可視化など。
人間力・熱意が得意な部分:相手の本音を引き出すコミュニケーション、即興的な対応、最終的なクロージングなど。相手が人間の場合のみ。
二つを組み合わせた「ハイブリッド営業」こそが、多品種・新分野・海外化への最適解に近い。徐々にデータ+AIの比率がメインになる。
6-2. 組織力で複雑なソリューション販売を実現
営業担当者が持つ“気合”で突き進む場面がある一方、社内のマーケティングや技術チームが「客観的データ」「ロジック」「資料作成」でサポートする体制を築く。
必要に応じて外部パートナーも交えてエコシステムを構築し、“一人のカリスマ”に依存しない強い営業組織を目指す。