忘備録 次世代PMを育成したい手法はこれだ。

「次世代PMを育成したい」と言いつつも、多くの企業・組織では“従来型研修”や“肩書きを付けただけのOJT”を繰り返しているのが実態です。新しいラベルやシミュレーションを足しても、本質的には“上から与えられた枠内での学習”なので、大きく思考や行動様式が変わりにくい。そこで今回は、組織の根本構造や個人のあり方そのものを揺るがすような、極端かつ実質的に「変わらざるを得ない」環境を強制的に作る方法を提案します。


1. 「本物の権限×本物の責任」を渡し切る

1-1. “疑似”ではなく“リアル”なP/L(損益)管理を任せる

  • いくら「起業体験」「経営シミュレーション」と言っても、実際に損失が出ても痛くも痒くもない“お遊び”では人は本気になれません。

  • 1人(またはごく少人数)のPM候補に対し、実際のP/Lを委ねる仕組みを作りましょう。例えば数億円規模でも構いません。赤字が出れば組織にダメージが生じるし、黒字が出ればPMの評価に直結する。その“本物の重み”が、本人の思考と行動を根本から変えます。

1-2. 経営判断権&人事権まで一部解放する

  • 「予算だけ」「スケジュールだけ」の制御ではなく、チームメンバーの選抜や評価、人事異動の要請権のような、本来は上層部しか持たない権限まで解放する。

  • ここまで権限を持たされたPM候補は否応なしに“事業をどうグロースさせるか”を真剣に考え始め、**単なる進捗管理を超えた“事業責任者マインド”**に切り替わります。


2. 「危険地帯」に放り込む:安全領域を取り去る

2-1. 期限&リソースの上限撤廃、ただし成果はコミット

  • 例えば「半年以内に“売上○億円 or ユーザー数○万人”を到達させなければ打ち切り」「成果が出なければ本人は異動or退職もあり得る」ぐらいに設定する。

  • 一方で、期間中の具体的な方法やプロセス、チーム編成、ツール導入などは一切口出ししない。上司・経営層が助言するにしても最小限。

  • “どう進めるか”は自由、「ただし成果目標を達成できなければ終わり」という、極端な自由と極端な責任が共存する環境は、まさに“生き残り”を懸けたリアルな修羅場を生みます。

2-2. 社内・社外ステークホルダーから本気のプレッシャーを受ける

  • 「研修だから失敗してもOK」「お客様には穏便に…」という甘い環境ではなく、ガチのクライアント案件出資者がリアルに存在するプロジェクトに放り込みます。

  • 投資家や顧客が本気で成果を求め、厳しいツッコミやクレームが飛んでくる状況こそが、人を短期間で激変させる最大の要因です。


3. 「トップを一時的に退位」させ、新世代に運営させる

3-1. “リーダーレス”または“トップ不在”期間を設計

  • 組織トップや重役が一定期間(例えば3〜6カ月)不在・関与なしという“仮想”ではなく“リアル”な制度を導入。

  • その期間中は、残されたメンバー=次世代PM候補たちが経営・事業運営・プロジェクト推進の全権を引き受ける。

  • いくら事前研修を積んでも、最終的にトップが介入してしまえば思考停止が起きる。トップ自ら退位し“後は任せる”と本気で宣言することで、次世代PMは実際に“組織を回す”しかなくなる。

3-2. “後戻り不可”のバックアップ封鎖

  • 形だけ「任せた」と言いつつ、影でフォローしたりダメなら立て直したりする保険があると、メンバーは本当に責任を引き受けない。

  • そこで、その期間はトップが口出しやフォローをすると罰金・罰則があるなど、徹底的に干渉を排除するルールを敷く。

  • これぐらい腹をくくれば、若手PMが不安定な決断をしようと、一種の“組織的賭け”が成り立ちます。成功すれば一皮むけたリーダーが誕生し、失敗すれば組織の構造ごと改善せざるを得ない。いずれにしても“変化”が実現する。


4. 個人資本を投下:本気度と“痛み”を個人化

4-1. PM候補が自分の資産や給与を“賭ける”

  • 会社のプロジェクトであるにもかかわらず、PM候補が自腹で出資(たとえば100万円・200万円)し、成功した場合はリターンがあるが、失敗すれば減ってしまう——これもまた、表面だけの“研修”を超えた真剣度を生む仕掛け。

  • どうしても資金が用意できない人のために、会社が個人向けローン制度を作ってもよい。「失敗したら借金を抱える可能性がある」というぐらいの現実感が人を変えます。

4-2. “チーム出資”で連帯責任&連帯協力を促す

  • PM個人だけでなく、チームメンバー数名が共同出資する形にすれば、**「失敗するとみんなの資金が減る」**ため自然とチーム全員が本気で動き、PMだけに依存する組織にはなりにくい。

  • プロジェクトが成功すれば、**“配当金”**のような形でメンバーに直接リターンが入る。これにより、収益意識・マーケティング意識が格段に高まり、「いつの間にかPMが独りで背負ってる」状態から脱却しやすい。


5. 組織文化そのものの破壊と再構築

5-1. 既存の役職・肩書きを廃止し、プロジェクト単位でリーダーを選出

  • 一度、企業の中で「部長」「課長」「○○マネージャー」といった従来のポジションを一斉に解体し、すべての意思決定と権限を“プロジェクトリーダー(PM)”に集約する期間を設定。

  • 他のメンバーは必要に応じて複数プロジェクトを掛け持ちするが、肩書きではなく、そのプロジェクトでの貢献度や専門性で評価される。

  • 従来の階層がなくなるため、“偉い人の承認待ち”や“根回し”が機能しなくなり、PMは全責任・全決定を請け負わざるを得ない。

5-2. “失敗を恐れて提案しない”文化の是正:公開スコア+即時フィードバック

  • 会議や提案で「守り」に入りがちな組織は、すべての議事録・提案書・評価コメントを社内全員が見られるようにする。

  • どれだけチャレンジングな提案をしたか、どれだけ保守的だったかが、リアルタイムでスコア化され可視化される仕組み(例:「イノベーション度」「ビジネスリスク許容度」「巻き込み力」など)。

  • すると、PMは「守りの提案ばかりだとスコアが下がる」ため、攻めの発想をしないと生き残れない状態になる。組織的にも“転ばぬ先の杖”にしがみつく構造を破壊し、変革を推奨する。


6. 従来の“安全なステージ”を根こそぎ捨てる

これらの方法は、一見“荒療治”に思えますが、

  1. 本物の権限と責任を与える(P/L管理、人事権・裁量権の最大化)

  2. 企業や上司が最後に面倒を見る“甘え”を断ち切る(トップの退位、バックアップ禁止、個人出資・借金リスクなど)

  3. 既存のヒエラルキーや評価制度を一度解体し、新しいプロジェクト中心の仕組みに再構築する

これぐらいがいいですね。


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