まだよのあけぬ
白月よ
お星のおともを一人つれ
お月様はどこにいく
朝日をおがんでかへりがけ
ちらりと空を見上げたら
お月様は しらぬまに
お星と いつしよにき江てゐた
つきのゆくへは わからない
数え年 八歳(大正十三年八月一日 朝)
千鳥詩愛好家の中でも抜群にファンの多い一編です。わずか七歳半の少女に「つきのゆくへは わからない」と言われてしまったら、どんな言葉を返せせばよいのでしょうか‥‥。余韻の深さ、余白の広さ、絶唱です。
この詩を書いた七日後に、千鳥は最後の詩『けむり』を書いて他界します。
『けむり』
ばんかたの空に
ぽつぽと
き江てゆく
きしゃのけむり (大正十三年八月八日 夕 絶筆)
見事なフェードアウトです。
2017年千鳥生誕百年を記念して作った映画『千鳥百年』ではこんなキャッチフレーズを掲げました。
〈 一日は長い 一年は短い 一生はもつと短い 〉
今年2024年は、千鳥没後百年の節目です。地元鳥取では静かな波紋のように 少しずつ 深く広く 千鳥の詩が拡がっているようで嬉しい限りです。
【千鳥の詩文のすべては HP「田中千鳥の世界」で公開、読むことが出来ます。】