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「演劇なんてムリしてやらなくてもよくない?」
こんにちは。
インディーで演劇の漫画を描いています。
最近一話が公開されましたがこの漫画はずいぶん前から構想していて、誰のためでもなく自分一人のために延々と考えて描います。コロナウイルスが問題になるずっと前からネームを描きため、ペン入れしてる途中で感染症が発見・報道され演劇や舞台公演が多大な影響を受けた後も何も変わらず描いています。
現実の舞台公演はコロナの影響で沢山の変化を余儀なくされました。今まで常識だったものが一転し、せっかく定めた感染症対策のガイドラインも刻々と変化を迫られます。完全な防止策のない中一瞬で状況が変わり、対応におわれる劇場・劇団運営の方の心労はいかばかりでしょう。そうやって神経をすり減らしてもひとりでも陽性反応が出たら世間のバッシングに晒されてしまいます。
穴の空いた船の底からバケツで水をかき出し続ける、演劇に携わる方はそんな日々のように想像します。
現実世界の演劇と描かれた世界である漫画のズレは日に日に大きくなっていきます。私の漫画はそれ以前のズレた「古い」世界を描き続けます。なんでかっていうとこの話が好きなのと、ネームがめっちゃ先まで描いてあるからです。発表する頃にはもうコロナ禍が始まっていてこういう世界を描いていいいのだろうか?と迷ったのですが、まあいいか自分のフェチズムが一番だしとすぐ納得して「以前の世界」にしました。
コロナ禍以前も「演劇は無理しなくてやらなくてもいいものだ」という言葉はたくさん聞いてきました。だって世界の役に立っていないから。水や食べ物とは違うし就職の役にも立たないし、残らないし、なくても生きていけるから。この言葉をかけられた舞台関係者はきっとたくさんいるでしょう。
演劇や舞台に携わる人間は身体的にも金銭的も多くの無理をして、何かを犠牲にして舞台に関わってきました。将来なんか誰も保証してくれない中、足下を照らすのは自分の意欲と仲間とお客さんの拍手しかありません。安定や将来という道からすると灯りのすぐ外は崖になっているように見えます。
だからこそ外側から「将来何の役にも立たないものにそこまでして頑張ってどうするの?」「学問とも芸術とも産業とも言い切れないものに賭ける価値なんてあるの?」と聞きたくなってしまします。それが普通の感覚です。
コロナショックになったときライブハウスや劇場は厳しい批判を受けました。
無理してやらなくてもいいんじゃない?そこまで誰も求めてないよ。商売にもならない価値の分からないものなんて誰も必要としてないよ。だから演劇なんて、劇場なんてこんなご時世にやらなくてもいいでしょ?
漫画「舞台は踏まないほうがいい」ではトラブルに見舞われ流れそうになった校内公演に誘われた主人公愛一郎が演劇部の面々に「しかたないよ」「ムリしてやんなくてもよくない?」と言います。
そうなんですよ。無理してやる必要なんてどこにもない。私でもそう言っちゃうもん。
人がいないなら、緊急事態ならしょうがないよ。でもなんでそんなにやりたいのかな?どうして「なんとかやりたいんだ」ってみんな苦しんでるのかな?
主人公愛一郎の問いは無駄と言われる創作や表現という分野にとって永遠について回ります。この作品はとてもつもなく個人的な、プライベートな話しで誰かを元気づけられるとかコロナ禍で悲しい思いをしている人のためにとか、そういうつもりで描かれていません。この先もずっと。
でもこんな状況になってしまって、愛一郎の何気ないひとことはきっとこの先も演劇人がガンガン言われまくるんだろうなって思うと、がんばってなんて言葉じゃとてもとても足りない。このセリフを考えた時はこんなことになるなんて思わなかったけど、もはやバッシングのように言われまくってるんだろうなあ。あ~あ石油王に生まれて演劇界にお金をばらまきたかった……そこまで言わないから非課税の五兆円ほしいなあ。
幸い今私には漫画があって描いている時間はとてつもなく幸せです。でも調べ物をしていると舞台に立てない役者さんや、誰もいない客席を見る劇場関係者や、劇場の空気を吸えない観客の方々のことを思う時間も増えました。
みんな元気だろうか?
大丈夫かな?
そんなわけないだろうな……
だけども私には漫画があって、漫画を描いていると見えない劇場の中を想像して元気が出てくるのです。あの舞台の暗闇と照明の光と、客席がお客さんでいっぱいになった光景と、拍手が起こす会場の振動を思い出してとてつもなく元気が出てくるのです。きっとみんなもそうなんじゃないかな。
誰かに「元気出して」とか「がんばれ」とかとても言えないけどやっぱり私は劇場が大好きだし演劇が恋しいと再確認しています。人はパンのみで生きてるわけじゃないというあれ。
さて漫画を描こう。
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今のとこ更新はピクシブが先の予定です。