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リセット
この冬初めての積雪。
昨夜から降り積もり、夜中に目を覚ますと部屋の中がうっすらと明るい。雪あかり。青みを帯びた光なのに、寒々しくない。
見ていると心が落ち着く。
そもそも、雪が降るのが好き。
雪の降り積もる地域で生まれ育ち、雪かきは子どもの頃から日常の一部。
でもスキーやスノボに興じるのは理解できない。なぜわざわざ雪のあるところに通行料を支払い、上がって下りてを繰り返し、しかもその繰り返しにお金を払うのか。何が楽しいのかさっぱりわからない。
でも雪は好き。
大学進学で離れるまで、雪の夜は窓の外をよく眺めていた。
石油ストーブの換気のため、1、2時間に一度、窓を開ける。寒くて凍えるが、窓から顔を出し、空を眺める。
一面濃いグレーの空から、大きな白い灰のようなものが降り注ぐ。小さな白い点がちょっとずつ大きくなりながら、ひらりひらりと舞い落ちるさまを飽きずに眺めていた。
屋根に庭に、そして私の澱んだ心に白い雪が降り積もる。降り積もって、汚いものを全部白で覆い隠していく。
風のない日も、ふわふわでも、雪は音をたてて降る。
絵本によくかかれている「しんしんと降る雪」。本当に「しんしん」という音が聞こえる。
雪はしんしんと降り積もり、汚い音を吸収して「しんしん」以外聞こえない。
雪が降り積もる夜は音のない世界となる。
雪が降るから冬は季節性の鬱になりやすいという。
そうだろうか。
雪がもたらす明るさと静けさ、美しさ。その中に身をゆだねると、心が洗われる。荒れた気持ちのとげが雪によって溶けていく。
雪の降り積もる冬があるから、私は春夏秋を生きられる。雪がなければ、心にたまる澱みに飲み込まれてしまう。
だから雪よ、もっと降って。
私は雪が好き。
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