リアルな世界の出来事
先日、初めて見る光景を目の当たりにし、こういうことって本当にあるんだとわくわくした。
目の前にいるのは、20歳くらいの美人さんと40代のまだ俺はイケるぜ風男性。要するに、男性が女性を口説く場面である。
男性は自分がどれくらいデキるのかをとうとうと語る。
あれができるのは俺しかいなくて、スケジュールは1年先までいっぱいだけど、俺しかいないから引き受けた。俺は相手が誰でもこのキャラのまま、できることはできる、できないことはできないと言う。あの人はあんなだから、飲みの場では俺が発破かけてやってる。あんなんじゃダメだ、俺みたいにガツンと誰にでも言えなきゃ。
共通の知り合いを引き合いに出し、その人を下げることで自分を上げる手法。さらにもうひとりの地位が上の人に対しても、自分は引かずに接するんだと、自分は地位の高い人と対等なことをアピールしている。
ほうほう、飲み屋のおねえさんを口説くドラマみたいじゃん。こんなのでなびくと思ってるんのかな? 飲み屋のおねえさんはお仕事だから「へー、すごいわねー」って言うだけだよ。
今度、沖縄に出張するから、一緒に行こう。俺のところの従業員ってことにすればいい。ホテルも交通費もクライアントが負担だから気にしなくていい。仕事3割、遊び7割で、仕事長引かせて一緒に遊ぼう。夜は俺、ギター弾くよ。俺、ギター弾けるんだ。
わー、これで20歳がなびくと本気で思ってるわけじゃないよね? もうちょっと別なアプローチがあると思うんだけど。沖縄には行きたいと思うかもしれないけど、ギターは聞きたくないと思うなぁ。
と、そこで男性の妻らしき人物登場。3人で楽しげに会話している。が、沖縄の「お」の字も出ない。
妻には隠しておきたいのね。本気で誘ってんのか。
妻らしき人物が離れると、またしても男性は「沖縄へ行こう」「ホテル泊まろう」と言いつのる。
最後は「じゃあ、絶対に一緒に行こうな」と言い残して立ち去った。
一方、女性はというと、笑顔で
「えー、そんなこと言っちゃって平気ですか、すごいですねー」
「ああ、確かにわかりますー」
「わー、沖縄いいですねー、行きたーい」
と上手にあしらい、男性が立ち去ると
「ああ、長かった」
とつぶやいた。
じゅごい、うまいなぁ。やはり美人さんだけに、これまでも父親くらいの年齢の男性から口説かれた経験があるのだろうか。それとも、このくらいは誰でもできるのか。
思うに、俺、まだイケルぜ!とガツガツいっても、20歳の女性が40代男性にはなびかないのではないだろうか。同じガツガツなら、年齢が近い人を選びそう。彼女の周りにいなさそうなタイプを演出した方が効果的な気がする。知らんけど。
かと思えば、おじいさんとおばあさんがショッピングセンターの休憩コーナーで向かい合って座り、手に手をとって見つめ合い、語らっている姿も見かけた。
夫婦なのか、恋人同士なのか、はたまた訳ありなのか。
リアルな世界には、あちらこちらでいろんな光景を見ることができる。パソコンに向かっていても見られないものを見られた。
リアルな世界はおもしろい。