内側にいること

 好きやのん。どうしようもなく好きやのん。
 今夜は久しぶりにシェアハウス本宅での飲み会に参加。というか、飲み会と知らずに行って、飲み会だったから帰りたくなったけど、参加してみたら楽しいて、楽しいて。
 茨城か栃木かから来た元公務員のニート、大学院を休学し高岡で1年限定で暮らす人、新宿区生まれ育ちの19歳大学生。なぜかそんなメンツが来て、福井の県民食・秋吉の焼鳥と串カツを食べる。
 私が行ったときにはすでに盛り上がっていて、秋吉も残りわずか。でも、シェアハウスのグループLINEに「行く!」と入れておいたら、私の分を残しておいてくれた。

 お豆腐にキムチをのせたのを作っていると、「もう早くアキさん来てー、アキさん待ちだよー」と声がかかる。
 もらいものの日本酒をどんどん空けていく。三重の「而今(じこん)」、黒龍の「あどそ」、あと花垣のなんか、レット・イット・ビーじゃなくてなんかビートルズのタイトル付いたやつ。安い黒龍「いっちょらい」も含め、5本ほど出たんじゃないだろうか。
 おいしいものを食べ、おいしいお酒を飲み、どれだけ「なんで?」「どうして?」「どうしたいの?」と質問攻めにしても真摯に答えてくれる人たちと過ごす夜。
 めちゃんこ楽しい。

 都市や街に関する真剣な話から、地理学のニッチな話、ギター弾いて歌い出す住民、へしこのだし茶漬けを作り出す住民。留学していたときに気づいたこと、行政に携わった経験、うちの地区の草刈りのこと。
 話はあっちへこっちへ行ったり来たり。隣同士で話し込むかと思えば、みんなでツッコミ合いながら大笑いしたり。「明日、授業あるので帰ります」という大学生に「夜行バスで帰ろう、したらもっと長くいられる」と言ってみたり。副市長の役割、市長になるとかならないとか。
 そうこうしているうちに、住民が帰宅して加わったり、明日のお弁当を作り出す人もいる。「もっと飲みたい」という私のリクエストに、家主は新しいお酒を開ける。

 にぎわう部屋から廊下に出ると、なぜか筋トレを始めた住民ふたり。「吐きそう」と言いながら、トレーニングをしている。部屋の中は、まだいろんな話が飛び交い、終わる気配はない。
 廊下に寝転び、考える。リバティとフリーダム。このふたつ、同じ自由でも意味が違う。どっちかが獲得する自由で、どっちかが”おっぱっぱー。たぶんモリハウスは、リバティとフリーダムの狭間にある。(モリが?私たちが?)獲得したものと、集まって住み続けている住民の”おっぱっぱー”さ加減。そのふたつが合わさって、ケイオスになっている。

ここは平和です。小さな優しい世界。人が集まればいろんなことがあって、それはそれでおもしろい。モリハウスはおもしろいだけでなく、ケイオスなのだ。なんでもあり。公共施設であり、ただの家。なんでも受け取れる度量のある人ばかりじゃない。だからここに人は集まる、って感じかなぁ。

 もうひとつ、ここに人が集まる理由、それは家主のモリがいること。それはモリの影響力ということではなく、モリが内部にいるってこと。モリはこの世界を作っただけじゃなく、その中で暮らしてる。
 何かを作りたいと思って始めたのか、始めたらこうなったのかはわからない。でも、モリは作ってその中に自分を入れ込んだ。ま、だってモリんちだし。
 デザインは問題解決のためにあるというけれど、デザイナーがどれだけ中に踏み込んで知ろうとしても、実際に内部に含まれるわけではなく、あくまで立ち位置は外側にある。たとえば漁業のなにがしかをデザインで解決しようとしも、デザイナーは漁師じゃないし、漁師になって解決するわけでもなく、解決後漁師になるわけもなく。
 だけど、モリは内側にいる。私はそんなにモリのやってきたことを知らないけれど、きっとその何割かはシェアハウス同様、内側に立ちながらやって来たんじゃないかなーと思う。それがモリのやり方じゃないかな。あくまで私の想像。
 内側にいるって大事。あくまで私の意見だけど。

 もうね、家主のモリとモリハウスがたまらなく好き。ここに住めてよかった。(って私は1軒屋にひとりで住んでるけどさ)
「モリが好きって思う人たちはみんな、モリのことが好きだよ」
 なんか、ふとそう言ってみた。モリが私を好きと思ってるかわからないけれど、私以外のモリが好きだと思う住民たちはみんなモリが大好き。こんなに愛されるのは、同じ立ち位置にいるからじゃないかなぁ。勝手な推測。
 以上、酔っ払いのたわ言でした。



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タナカアキ
ネコ4匹のQOL向上に使用しますので、よろしくお願いしまーす