薄紅色の空の下
昨夜、恋のはじまり部分というか、恋のちょい手前というか、についてあれこれ質問した。「ほほぅ」と言うばかり。わかるようでわからないことばかり。
今日、「ああ、こういうことなのか」と理解できた。
なんだろう、こんなに人ってその場にいる他の人が見えない状態になるんだね。
3人でいたはずなのに、ふたりにはお互いしか見えていない。お互いの声しか届いていない。うわわわわーーーーー。
別に付き合っているわけでもなく、ただの友だち。イチャイチャと体を弄り合っているわけでもない。2メートル、3メートル、距離があるのに、まるで手を取り合って30センチの距離で見つめ合っているような。
話している内容も、エロいわけでもなく、ただの会話。それなのに、聞いている(聞こえている)私は恥ずかしくなる。
「あのふたり、付き合ってるよね?」と誰もが思っていたけれど、その当時は付き合ってはいなかったらしいふたりがいる。ようやっと数か月前から恋人関係になったようだと聞いた。
彼は彼女の腰に手を回し、彼女もそれを自然に受け入れて、わずか数センチの距離で会話し、笑い合っていた。だから誰もが「あのふたり、付き合ってるよね?」となったわけ。でも、物理的にも精神的にもふたりの距離は近いけど、私には濃厚なエロさみたいなものは感じられなくて、「あれで付き合ってるの?」と思っていた。
それに比べ、友だちでしかないのに、まったく物理的に近くないのに、目に見えない触覚で探り合っているような濃密な感覚。いや、私は見てるだけなんだけど。
日活ロマンポルノより、外で服を着て話しているだけのふたりの方が、いたたまれないくらい恥ずかしい。ふたりが、ではなく見ているのが。聞いているのが。
ラズベリージャムのような甘酸っぱさが漂う。たぶん、ふたりとも、私と話しているときと互いを見ているとき、話しているときでは、世界の見え方が違うはず。同席しただけの私ですら、薄暗い北陸の曇天が色づいたのだから。
常に全力で生きる人と、ひたすら真っすぐで不器用な人。
はたしてふたりが手をつなぐ日は来るのだろうか。この先、どんなふうにぼんやりとした恋が輪郭を持って、確固たるものになるのか。
その過程を、遠くから見ていたい。(自分で経験するのはやめておこう)