「雑談タイム」が上手くいかない理由
新型コロナの影響によってリモートワークが定着し、社員同士がオフィスで顔を合わせて気軽に話す機会がなくなりました。そこで、さまざまな企業において人事部主導で取り入れられているのが、ZoomやTeamsといったオンラインコミュニケーションツールを使った「雑談タイム」です。気軽にランチしながら近況を話してみる…いろいろな部署のメンバーをランダムで組み合わせてみる…自主性に任せていると進まないので時間を決めて必参加にしてみる…(もはやこうなると「雑談」じゃない気もしますが)あの手この手で雑談を促進する機会を作ろうとしますが、上手くいっている例をあまり見たことがありません。
なぜこうした「雑談タイム」は上手くいかないのか?
その理由と、解決の方向性について、(あんまりたくさん文章書くとしんどいので)2回に分けて考えてみたいと思います。
曖昧耐性(ネガティブ・ケイパビリティ)
話が脱線したり議論が停滞したりして、一向に進まない会議にイライラしたことはないでしょうか。会議の作法や技術に関する書籍やネット記事が数多くまとめられているように、こうした会議はビジネスにおいて良くないものとされています。目的を明確にして、効率を上げていくことがビジネスにおいて重要視されますから、当然ですね。
そして、こうした環境に常に身を置いている私たちは、どんどん「目的を明確に効率を上げて問題解決に取り組まねばならない」というマインドセットが強化されているのではないでしょうか。つまり、曖昧な状況を許容できる「曖昧耐性」が失われていると言えるかもしれません。「曖昧耐性」に近い言葉に「ネガティブ・ケイパビリティ」という精神医学の言葉があります(ちなみにここでの「ネガティブ」とは良くないことやマイナスを意味するのではなく、作為・不作為における不作為にあたる意味です ※「ネガティブ・ケイパビリティ」の関連書籍はこちら)。曖昧で不確実な状況、こうすればこうなる…といった方程式が成り立たない状況にストレスなく身を置くことができる能力のことです。対義語は「ポジティブ・ケイパビリティ」。これはつまり、「目的を明確に効率を上げて問題解決に取り組むこと」を得意とする能力です。
これは一人ひとりが持つ能力であるため、人によって差異はあるでしょうし、どちらか二者択一というわけではなく、ポジティブ⇔ネガティブの間はグラデーションになっているでしょうが、いずれにしても私たちは、職場(ビジネス)においては圧倒的に「ポジティブ・ケイパビリティ」が重要であることを徹底的に叩き込まれています。こうした状況において「さぁアジェンダフリーで自由に喋ってください!」と言われても、戸惑うのは当然ですね。「…え、これ何の時間?」「仕事があるんだけどなぁ…」「とりあえず決められた時間までログインしておくことをゴールにしよう」
ちなみに、(私がいろいろな企業の人事や「雑談プロジェクト」を推進する方々に話を伺った印象では)エンジニアやコンサルタントなど、明確なゴールを設定してロジックを積み上げていくことを得意とする方々が多くを占める企業では「ポジティブ・ケイパビリティ」が一層優先される傾向があるように思います。
次回へ続く…