「雑談タイム」のつくり方
前回の記事から時間が経ちすぎて、記憶が怪しくなってきましたが…
さて、「雑談タイム」が盛り上がらない背景として、ビジネスにおいては当たり前に思える姿勢「ポジティブ・ケイパビリティ」を挙げていました(前回記事「「雑談タイム」が上手くいかない理由」)。
もっとゴールが不明確で曖昧な状態でも許容できる「ネガティブ・ケイパビリティ」を身につけよう!ということでも良いのですが、今日はそこは変えずにいきましょう。ポジティブケイパビリティは平常時のビジネスとも相性の良い能力ですし、私たちの仕事モードの身体にも染み付いていますから。
目的の明確化
雑談をする目的を明確にするなんて、なんとも無粋な感じがしますが、仕事モードの私たちは、やっぱりこれがないと気持ち悪いわけです。そして、目的が語られずになんとなく雑談の時間が設けられているというケースが意外と多そうです。企画側の意図としては、「自然発生的に会話してほしい」「業務のようにMUSTにはしたくない」といった思惑があるようです。でも、よく考えてみてください。家のPC画面上に会社の人の顔が映っている状態はそもそも自然じゃありません。本当にMUSTじゃないなら、その時間はネットショッピングをしたりお昼寝したりしたいわけです(というのは極端かもしれないけど、少なくとも溜まっている仕事を片付けたい)。やっぱり雑談は業務じゃないと気持ちが悪いんです。まずはこれを企画者側も、参加者側も理解するところから始めなくてはいけません。
失ったものは何か?
何のために雑談が必要なのか。雑談を推奨する企業はあれども、これが明確に言語化されている企業は少ないのではないでしょうか。リモートワークによって失ったものは、言語以外の情報(表情、場の空気、間など)であったり、余白の時間(移動時間を使ったピッチや根回し、ちょっとコーヒーを買いに行く切り替え時間など)だったり、個々人が感じている範囲でもいろいろあるでしょう。一方で、マネジメントや経営側ではもっと大きな、そして今までは見えていなかった価値が失われることを危惧しているのではないでしょうか。こうした、お互いが失ったと感じていることを共有することから、雑談の目的づくりを始めてみてはいかがでしょうか。
失ったものについて少し例を挙げて補足をすると…
ロナルド・ハイフェッツの著書「最難関のリーダーシップ」によると、組織の問題には「技術的問題(知識やスキルを身につければ解決できる問題)」と「適応課題(自分自身の見解や周囲との関係性が変わらないと解決できない問題)」がありますが、後者はリモートワークによって難易度が上がりました。また社会人類学者であるレヴィ=ストロースの著書「野生の思考」には、エンジニアリング(合理的・科学的思考)とブリコラージュ(感性的・人間的思考)という言葉が登場しますが、リモートワークによって言語以外の情報が削ぎ落とされ、余白時間が無くなったことで仕事が前者に偏る傾向があるでしょう。そしてこれらによって企業が失うのは、新たな価値創出の機会なのではないでしょうか。マネジメントや経営側からは、この危機感であったり悩ましい現状をしっかりと社員一人ひとりに語るべきです。
ポイントは、書く(描く)→話す
雑談の目的が共有できたら、あらためて雑談の場を企画しましょう(「なぜ雑談が必要か」に言及せず、すぐにHOWに飛びついてしまうから上手くいかないんですね)。
趣味の話などで継続的に盛り上がれるならそれでも良いですが、やはり「業務」ですから、ある程度仕事に関わる内容の方がかえって話しやすいかもしれません。トークテーマはネット上にたくさん転がっているので(雑談テーマを決めるアプリまである!)、それらを活用いただくのも良いですが、社内のメンバーから出てくるとベストですね。雑談の目的が共有されていれば、どういったコミュニケーションが必要になるのか個々人が考えることができます。メンバーから募っても良いですし、雑談を促進するためのワーキンググループをつくって議論しても良いでしょう。
手法として雑談を盛り上げるためにおすすめなのは、チャットや事前アンケートなどでお題に沿ったコメントを書いてもらってから話す。または、ホワイトボード機能などを使って絵を描いてもらってから話すということです。自分が書いた(描いた)ことの説明ならハードルは下がりますし、進行役も話を振りやすくなるでしょう。ぜひお試しください。