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すきなものがそばにある。
大学を休学してまだ2ヶ月だった初夏に、
焼津の父ちゃん「くりさん」に連れられて、
近くにお住まいの、
折り紙がお得意なおばあちゃんに出会いました。
折り紙。
私が小さい頃、
大好きだった、折り紙。
大好きだった折り紙は、
大人になってからは「大好き」と言えない遠い昔話になって、思い出すこともなくなりましたが、
そのおばあちゃんに初めて会った日、
折り紙の作品をみて、
折り紙が大好きなお話を聞いて、
ずっとぽろぽろ涙したのを覚えています。
大好きなものを、
どこかで捨ててきたなぁと。
小学校、中学校、高校。
習い事に、
部活に、
塾に、
学校の予習、課題。
こどもって、
こどもだって、忙しいよね。
こどもはこどもで、忙しいよね。
目まぐるしい日々に、忙殺されて、
やりたいことをやる脳みそから、
いつしか、
与えられることを効率よくこなす脳みそになり、
やりたいを感じなくなり、
「大好き」や「夢中」の感覚が、
わからなくなった。
だから今、
ここにきて休学したんだと思います。
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おばあちゃんが、
楽しそうに折り紙を折る姿に重ねるように、
小さい頃の記憶が蘇りました。
窓辺の小さな机で折り紙を折っていたこと。
折り方が分からなくて、お父さんが仕事から帰ってくるのを、夜遅くまで待っていたこと。
学校に、
折り紙で折ったうさぎを沢山持っていったこと。
クリスマス会で折り紙のケーキを折ったこと。
いろんなことが、
心の奥底の、
埃をかぶった引き出しから思い出されました。
ちょっと自分を取り戻したような感覚。
ちいさな「スキ」を見つけた感じ。
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くりさんが棚を用意してくれた。
あれから9カ月が経ちました。
いま、焼津に帰ってきました。
そして、
焼津のおばあちゃんであり、
お友達でもあるおばあちゃんに、
また、会いにいきました。
87歳だとおっしゃるのに、
背筋がピンと伸びて、
とてもお元気。
おうちにあがるやいなや、
ふたり、ソファに座って、
再会の喜びに浸りました。
お家には、今日も、
季節の折り紙がいっぱい。
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おばあちゃんの折り紙は、
紙を選ぶところから始まります。
よく百均とかで売っている、
ああいう全色入りの一般的な折り紙ではなくて、
この菊の花に使う折り紙は、
どんな紙にしようかと。
色味、質感、光沢、厚み、柄。
お家には、
今まで使ってきた折り紙の切れ端が、
大切に保管されていて、
そのなかからぴったりなものを選びます。
「本当は東京の紙屋さんで選びたいけど、
もうそんな遠出はできなくて」と本音もポロリ。
決められた紙から、
何を折ろうかな、ではない。
折りたいものから、
紙を選ぶ。
やりたいことで、
道を選ぶ。
おばあちゃんの生き方、
すべてが、
その折り紙に詰まっている気がしました。
「すきなものがそばにあって、
本当によかったって思うんだよ」
by
87歳の焼津のおばあちゃん
いつまでも、
お元気でいてくださいね。
また焼津にきます。
すきなものがそばにある。
l Ep.31
2025/02/19
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