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とある神戸の商店街で、こどもたちと「お姉ちゃん」と。
2024年の4月から1年間の休学を始めて、
最も長期で滞在したのが「神戸」でした。
2024年の6月末から10月末までの4ヶ月。
長期のインターンで、中心都市「三宮」での職場勤務と、住まいでの在宅勤務、電車で行き来する生活が始まりました。
神戸にある商店街の一角に住み込んで、放課後のこどもたちに場所を開き、地域のこどもたち、おとなたちに囲まれながら過ごした日々。
・場所をひらくとは
・環境に翻弄されるこどもたちに向き合うとは
・そして、場所をとじるとは
お金も立場もない、ただの休学大学生が、地域にもぐりこんで成し得たことは、露ほどにも満たない…というか何かできたとも思えないのですが、こどもたちが私に色んな伝え方で教えてくれたことは、私の人生に色濃く刻まれました。
今回から数回に分けて、
私がこどもたちと過ごした
日々のエピソードをご紹介します。
ささいな一コマから、
立ち止まって考えたいことまで。
普段、こどもたちと関わっている方、
こどもに関わる仕事をしている方、
教員を目指している学生さん、
通りすがりの方、
それぞれのこども時代を思い返しながら、
一緒に感じ取っていきたい、
ノンフィクションのお話です。
神戸で撮ったフィルム写真を添えて。
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この地域について
地域の前提についてお話しておきます。
場所を公表すると、ここで生きるこどもたちへ偏見が生じてしまう可能性もあるため、こどもたちの未来のために、今回は伏せさせて頂きます。
私が住んでいた地域は区役所の方の話によると、神戸で最も経済的格差が激しいと呼ばれるエリアの1つでした。地域全体の高齢化が進んでおり、小学校では1学年1クラスと、こどもの数もどんどん少なくなっています。
地域の小学校や中学校からほど近いところに、私が住んでいた商店街があり、こどもたちは放課後になると、商店街にある駄菓子屋さんにお菓子を求めて、やってきました。
私はというと、
駄菓子屋のすぐ隣に作られたコミュニティスペースで、週に1〜3回ほど開放しました。場所を管理している団体から、場を開くことを委ねて頂きました。
このコミュニティスペースを分かりやすいように「たまり場」と呼称することとします。
たまり場に集まったこどもたちは、駄菓子屋のお菓子を食べたり、ボードゲームをしたり、学校からもらった宿題や塾の宿題をして、思い思いに過ごしていました。
そんな小さな商店街で私が過ごした、
ひと夏の記憶を、これからご紹介します。
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■第一話。
タイトル「お姉ちゃんという鎧」
とある姉弟の話です。
いつもの放課後、
小学校1年生と3年生の男の子2人と、中学生のお姉ちゃんがたまり場にやってきました。
お姉ちゃんは、下の弟たちの面倒みがよく、
弟たちは甘えん坊でやんちゃ盛り。
お姉ちゃんは、
弟たちが遊びたいボードゲームで遊び、弟たちがボードゲームの勝ち負けで機嫌を損ねそうになったら自分が負けるようにして、弟たちがボードゲームを投げ散らかしたら「やめなさい」、そして私に「ごめんなさい」と。そして、弟たちが遊んだゲームを丁寧に片付けていく。
そんな姿が、同じくお姉ちゃんとして育った私自身の、昔のあの頃に重なるようで、偉いなぁ…懐かしいなぁ…とも思う
一方で、
二度と帰ってこない大事なこども時代、
すべてを「お姉ちゃん」として生きなくてもいいんだよ、と感じるようにもなりました。
私が今ここでできることは何だろう。
それから、
彼女と1on1で遊んだり、学校のこと家のこと色んな話を聞きました。彼女がやっている弟たちのお世話を少しずつ代わりました。「〇〇ちゃん(お姉ちゃん)は、どっちのボードゲームしたい?」と聞きながら、しだいに彼女の表情が柔らかくなっていくのを感じました。
「ももち!今日はすごく楽しかったよ!」
心無しか、来た時よりも足取りが軽くなっている彼女の後ろ姿を見送りました。
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この日のおわり、
駄菓子屋を営み続けて40年になるおばちゃんに、今日あった出来事を話しました。おばちゃんは、色んなことを教えてくれました。
駄菓子屋のおばちゃん。
この街のこどもたちのおばちゃんであり、この街のママパパのお母さんです。40年もの間、この街で育つこどもたちを見守っています。
▶おばちゃん
「自分も甘えたい時期に、小さな弟たちの面倒もみて、我慢しなきゃいけなくて。ここで、泣きそうになっているところを見たこともあるなぁ。」
(おばちゃんの言葉通り・関西弁)
話を聞けば、彼女は5人姉弟の2番目の子で、一番下の子はまだ3歳。父親はいませんでした。
みんな、血の繋がらない弟たちでした。
(私の心の中)
💭この子がしている『お姉ちゃん業』を、ここに来たときだけは私が代わってあげられる。
💭お姉ちゃんの鎧をここでは脱がしてあげたい。
💭こどもがこどもで居られる時間をつくりたい。
このとき起きた心の変化が、
私がここで滞在する上での土台となりました。
彼女にとって、
ななめの関係にあるお姉ちゃんとして。
この地域のこどもたちにとって、
ななめの関係にあるお姉ちゃんとして。
地域の楽しいお姉ちゃんとして。
こどもたちに何を求めるわけでもなく、
私が何をさせたいでもなく、
話を聞いたり、
遊んだり、
勉強したり、
お菓子を一緒にたべたり。
いつもの日常を、
こどもたちにとっても、
私にとっても、少しだけ彩ることができたら。
小さな幸せをちょこっと。
そんな日々が始まりました。
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1つ目の話でした。
次回も、
この街の一瞬を切り取って、
ちょこっとご紹介します。
タイトル「あいすくりーむ」。
とある神戸の商店街で、こどもたちと。
|Ep.20
2025/01/29
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