現実と向き合い、未来を希望する。『ウルトラマンX』2話

1)すいません、ちょっと舐めてました
 いやああああっ、面白い。面白いですねっ、『ウルトラマンX』、見てますかっ?

 なにやら奇天烈な鎧を身につけたウルトラマンのビジュアルにわりとげんなりきていた、成田亨原理主義者の私ですが、『ウルトラマンメビウス』以降のウルトラは全然見ていなかったので「一応見ておきたいよね」と思っていました。
 そこへタイミングよく『ウルトラマンX』の公式ネット配信。第1話から見られる、ということで見てみましたよ。
 そして、これがびっくり!
 いい方に予想は裏切られました。
 とにかくまず、その映像がいい。
 もちろんハリウッドのAクラス作品には及ばないわけですが、日本の映像作品にありがちな「綺麗に撮りすぎて、チープに見える」画面をどうにかしようという工夫がそこかしこにみられます。
 以前とおなじCGによる効果だと思われるのに、その工夫のおかげでぐっと画面の実在感が強まります。特に、怪獣が現れてからの破壊場面はミニチュアとCGの組み合わせがうまく効果を発揮していて、日本の特撮も日々進化しているんだなあと感心してしまいました。
 そして、映像の実在感を増しているのが、物語や演出、とくにテンポの部分。(やっぱり日本の映像作品でよく見かける)不自然なキャラクターのやりとりはほぼなくなって、怪獣災害に立ち向かうチームメンバーのやりとりが自然で、またそれをつなぐ映像のテンポがいいから、先の特撮のよさとあいまって、ぐいぐい作品にひきこまれます。

2)あの鎧、アリかも……!
 そして第1話ですごく気に入ったのが、くだんの「奇天烈な鎧」の扱い。
 なるほど、どうやらあの鎧はウルトラマンが地上に実体化する原理(この作中でのオリジナル設定)を、別ルートで技術的に習得しつつある人類が、ウルトラマンをサポートするために用意する……ということになっているのです。
 ウルトラマンという、宇宙から来た神性をまとった巨人には、およそ似つかわしくないかに見えるあの鎧を、人類の技術による産物と設定することで、イメージ的にも違和感をなくし、ウルトラマンと人類との共闘という物語的に盛り上がるシチュエーションにも昇華させる。
 うまい、うまいじゃないですか!
(1話ではこのへんの設定は匂わせる程度でしか描かれませんが、2話でいよいよ本格登場。人類が現在保有するテクノロジーでは単独であの鎧を実体化させることはできず、あくまですでにその能力を持っているウルトラマンのサポートでしか実体化できない、というのもうまいなあ)

 こんなぐあいで、特撮映像的にも、映像作品的にも、そして設定的にも「面白そうだぞ」と思わせてくれた『ウルトラマンX』、2話ではさらに、素敵な方向に予想を超えてくれます。

3)どうせなら未来に希望を描きたいよね!
 冒頭、ジオ(XiO、この作品でのウルトラ警備隊)の紹介がてら、少年少女の見学を受け入れているジオ基地。
 見学者の「正義の味方、あこがれてたっす! 悪者をぶったおせるから!」という言葉に、「正義とはなんだろう、といつも悩みます」と答える隊長。
 冒頭から、怪獣と戦うことは、悩んで(その時々の正義を)選択した結果であって、怪獣と戦うことイコール正義ではないのだ、という重い、また現代的なテーマを突きつけてきます。
 ここでかなり「おおっ」っと引きつけられるのですが、今回登場の怪獣はバードン。地上で卵をかえすための巣作りをしている……という設定。
 当初バードンとの共存を考えるジオですが、バードンが巣作りに集めた材料(建物や自動車、高圧線鉄塔などなど)に、巻き込まれて逃げ遅れた人々がいることを確認。この人達の安全確保のために、バードンの排除を決定します。
 しかし(この世界でそうかはしらないけど)あのウルトラマンタロウを倒したバードン、ジオの戦力ではもちろん、変身したウルトラマンXも歯が立たず、苦戦に陥ります。
 ここで登場するのくだんの鎧。
 なんで宇宙から来た巨人に鎧を渡そうなんて思ったんだ? 的なツッコミも、うまいこと展開で処理されてて、気にせず見て行けます。
 そしてウルトラマンのパワーアップで、倒されるバードン。
(この世界での怪獣は、起源の分からない出土品(オーパーツ)「スパークドールズ」が、おそらくはウルトラマンと同様の原理で実体化、巨大化しているもので、倒されるとこのドール(見かけはバンダイのソフビ人形)に戻ることになっている)
 その人形になったバードンを手に、主人公の大地はこんなことをウルトラマンに語るのです。
(あとさきになったけれど、ウルトラマンは情報体として主人公の持つ携帯端末の中に普段格納されている、という設定。なのでウルトラマンとよく語り合ってるらしい)

大地「いつか元の姿に戻す技術も、共存できる方法も発見する。豊かな星なんだ、恵みを分けあえる方法はきっとある」

ウルトラマン「そうかもな。可能性はある」

大地「この地球は可能性の塊だよ、俺はそう信じてる」

 見ててちょっと涙出た。
 今回の物語は、実体化して生物として繁栄しようとするバードンを、人類の都合で倒さなければならない……つまりは、現実の厳しさを突きつけられる展開……だったわけだけど、最後のこの台詞で、未来への希望をつなぐ、

 現実は厳しくても、決して希望を捨てたりあきらめたりしちゃいけない。
 理想に向かっていくんだ。

 そんなテーマが描かれているわけです。
 きっと「怪獣が死なない」という設定だって、スポンサーのおもちゃ売りたい要望とか、昨今の残酷な描写をとことん嫌うマスコミの流れに沿ったものではあるんだと思います。
 ただ『ウルトラマンX』のスタッフは、その「外圧」を単なる外圧にとどまらせず、この作品独自の面白さにまで昇華させている。
 主人公(やジオチーム)の、怪獣との共存をあきらめない、なにが正義なのか常に問い続ける姿勢は、そもそもスタッフたちの前向きな気持ちの現れなのかもしれません。

 そんなわけで次回もちょーーー楽しみですよ、『ウルトラマンX』!
(次回はテレスドン登場だそうな)

※『ウルトラマンX』はYouTubeで検索すれば、最新話が公式配信されてますよー。

※劇中に登場したドール化したテレスドンはたぶんこれ> http://amzn.to/1SJsx5l

※ところで、田中桂/空想海軍では、連載企画であるファンタジーシリーズ『架空世界カナン』、ロボアクション小説『ハランクルク』へのサポーターを求めております。気になるひとは各マガジンを。そしてよろしければサポート課金をよろしくお願いします。

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