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まず最初に覚えてほしいのはペンタではなく◯◯です!【ロック/ブルースギター講座#1】
スケールの落とし穴
ギターを始めてある程度色々な曲やフレーズを覚えてくると、「オリジナルのフレーズを弾きたい」という気持ちが芽生えるものではないでしょうか。
そんなときに多くの人が最初に覚えるのが「ペンタトニックスケール」です。
しかし、スケールをなぞるだけでは、「機械的で味気ない…」「なんだかしっくりこない…」と感じたことはないでしょうか?
スケールよりも重要なもの
ロックやブルースにおいてペンタトニックスケールが重要なものであることは間違いありません。
しかしそれよりもさらに重要なものがあります。
それは「表現力」 です。
人間の子供は言葉を覚えるより早く、泣いたり笑ったりなどの感情表現を会得しますよね。
音楽においても、まず大切なのは「どう表現するか」ということです。
音楽と言葉
我々が言葉を使うときに大事な要素として、「語彙」と「ニュアンス」というものがあります。
語彙はどれだけ言葉を知っているか、ニュアンスはその言葉をどのように使うか、ということです。
例えば、「はい」という言葉を使うとき
「はい!」
「はい…」
「はい?」
と、同じ言葉でもニュアンスによって伝わる意味は大きく異なりますよね。
ギターも同じで、「何の音を弾くか」よりも「どのように弾くか」ということが重要になります。
そのような表現力を身につけるためには、音数を絞った練習が効果的です。
そこで、たった3つの音だけで上級者並みの表現力を身につける練習フレーズを以下でご紹介します。
3つの音を使ったニュアンスの練習フレーズ
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最初から最後まで13、14、15フレットの3箇所を使用します。
指づかいは14…中指、13…人差し指、15…薬指を使ってください。
フレーズ①
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ポイント
・ハンマリングは素早く行う
・クォーターチョーキングはジワジワと上げる。
フレーズ②
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フレーズ②は、フレーズ①を発展させたフレーズです。
前のフレーズを受けて、似たようなフレーズを続けることでフレーズを展開させていく手法を用いています。
・最初の14フレットは2音に増えて、チョーキングの回数も2回に増えています。
・その他、全体的に音数が増えて、クォーターチョーキングの後にもフレーズが続いています。
最後の14フレットのスライドは、楽譜には書いていませんが12フレット辺りから始めるといい感じになると思います。
スライドする場合、隣の音(半音)、隣の隣の音(全音)、あるいはもっと遠くからなど色々パターンがあります。
スライドの始点を変えることで、表現も変わります。
どこから始めると最もいい感じになるか、是非いろいろ試してみてください。
フレーズ③
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①や②はチョーキングを多用したエモーショナルな雰囲気でしたが、フレーズ③はリズミックな要素が強めです。
プリングオフの箇所が多いですが、これはフレーズの「ノリ」を表現するためです。
ハンマリングやプリングは「ノリ」に影響を与えます。
プリングやハンマリングをするのとしないのとではどのようにノリが変わってくるか、実際に弾いてその違いを確かめていただくのも良いと思います。
ちなみに、①や②もそうでしたが、小節の真頭から始めずに小節線をまたいでフレーズを開始すると、良いメロディーを作りやすくなります。
フレーズ④
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小節の拍数が4拍子なのに対して、フレーズは小節頭から「13 14 15 14 13 15」という風に、6個でひとまとまりになっています。
そのため、リズムにズレが生まれるのですが、これをポリリズムといいます。
ポリリズムを使うとリズムが混沌とした感じになるので、これをギターソロの中盤あたりで取り入れると、その後のクライマックスがより際立ちます。
フレーズ⑤
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フレーズ⑤では、ギターソロの山場を表現しています。
何度もチョーキングを繰り返しているだけですが、盛り上がりを演出するためにはこういった単純な繰り返しが効果的です。
日常会話でも、話が盛り上がって興奮すると「分かる分かる!」「ヤバいヤバい!」などの、短い言葉を繰り返すことが多いのと似ています。
フレーズ⑥
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フレーズ⑥は最も複雑な雰囲気になっています。
一番最後にガーっと音を詰め込んで音数を増やすと、ソロが終わったときの開放感を演出することができます。
一般的にも、ギターソロの締めくくりとして速いフレーズで終わるのは定番の手法です。
最初のチョーキング(ベンド)は、あらかじめ弦を押し上げた状態から始めるもので、「プリベンド」と呼ばれるテクニックです。
E7コードの部分ではスライドを使った頻繁な横移動が多いですが、このように隣へ行っては戻ってといった音の動きにも慣れておくと良いと思います。
おわりに
今回ご紹介したフレーズはいずれも短いものですが、どんなに長いフレーズも分解すれば短いフレーズの組み合わせで成り立っています。
例えるならば、短い単語を組み合わせて長い文章が出来上がるようなものです。
ですので、まずは短いフレーズを確実にマスターすることを目指してください。
最後に、これまでの話と矛盾するように思えるかもしれませんが、本当の意味で上達するには、お好きなギタリストの演奏を細かい部分まで完コピするのが一番です。
じっくり耳を研ぎ澄ませてコピーした技術は、その人の本物の技術技術であり、一生の財産となるものです。
ただし
・「誰の演奏をコピーすればいいか分からない」
・「耳コピが難しい」
という人もいると思います。
そんな人は、今回ご紹介した練習から始めてみてください。
チョーキングやスライド、ハンマリングプリングなどのテクニックやその使い所が分かるようになると、やがて音を聞くだけで「何をやっているか」が分かるようになります。
そうなると、いずれは耳コピもスムーズにできるようになると思います。
今後もさらに発展的なギターソロのテクニックを解説していきます。
次回の記事もご覧いただければうれしいです。
ありがとうございました。