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デビッド・カークパトリック『フェイスブック』読書感想文
著者はビジネス雑誌の編集主任。
テクノロジー担当として、IBM、Intel、Microsoft、Appleなどの企業を特集記事にした。
2006年の夏に。
「マーク・ザッカーバーグと会ってみないか?」という電話を関係者から受ける。
創業2年ほどで注目を集めているスタートアップのCEO(最高経営責任者)という程度は知っていた。
その日。
予約をしたマンハッタンの洒落たイタリアンレストランに、ザッカーバーグは姿を見せた。
Tシャツにジーンズにサンダルという格好で。
22歳だというが、高校生くらいに見える。
そのTシャツには、枝に小鳥が止まっている線画がプリントされている。
信じられない思いのまま対面した。
食事が終わらないうちに、Facebookは有望なテクノロジー企業になる予見ができたという。
この後にも、…この前もそうだけど、ザッカーバーグは重要人物にそう感じさせていく。
どのような点がそうさせるのか?
著者は、その疑問に応えるようにして書いていく。
3年にわたりインタビューを重ねた、というだけに詳細。
周囲にも取材に回り、2010年にこの本は出版される。
ザッカーバーグについて書かれた初めての本、とのこと。
以下、ネタバレあらすじになるけど、この本は525ページあるのでネタバレしきれないままの長文になる。
はじまるのは、ザッカーバーグが19歳のときから。
ハーバード大学の2年生になった頃から。
プログラミングは好きでもあって得意でもあるようだ。
すでにエンジニアだった、ということか。
頭脳明晰なのは間違いない。
が、基本はやらかすヤツ。
女子学生の人気投票をするかのようなサイトを作成して、UPすると当然のようにして問題となって、退学寸前の処分を受けている。
それからは、すでに学内にあったSNSのプログラムの手伝いをして、すぐに手を引いて、そのあとにFacebookを作成してUPしている。
しばらくすると、アイデアを模倣されたと知的所有権の侵害で訴えられて、3年後に内容非公表で和解している。
この手伝いをしたザッカーバーグはアイデアを深めたのだろう…との著者の推測があるように、割合と客観的な目線で書かれていく。
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■ 原題 ■
『 The facebook Effect 』
■ 翻訳 ■
滑川海彦・高橋信夫
■ 解説 ■
小林弘人
創業の時点でのザッカーバーグは、オリジナルのSNSを考えたわけではないのがよくわかる。
Facebookという名称にしても、元々は高校や大学の新入生のに配られる小冊子。
顔写真と共にプロフィールが載せられていて、異性の友達をつくるのが隠れた使い方となっていた。
これをネットで見れるようにしてほしいとの要望はあちこちにあった。
すでにSNSだって乱立していたし、業界トップを確立させたSNSもある。
コンピューターが開発された40年前からSNSの概念はあった、ザッカーバーグはその相続人の1人に過ぎない、とも著者は詳しく解説しているがざっくり省く。
とにかくも、2004年2月。
Facebookは大学の寮の1室で作成されて公開された。
すごくシンプルなデザインで。
Mark Zuckerberg production(マーク・ザッカーバーグ制作)とのクレジットで。
創業メンバーは、ルームメート、高校の同級生といった数人となる。
シリコンバレーへ
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どのようにしてFacebookは大きくなっていったのか?
これについても、年月日、ユーザー数の推移といった数字と共に、ザッカーバーグの言動、周囲の談、リリースしたサービスの可否、競合他社の動向、ネット環境の変化、ただのラッキーなども絡めて追っている。
専門用語も少なくて、ITの知識がなくても理解しやすいけど、やはり長くなるのでざっくり省く。
ざっくりついでにいうと、Facebookのユーザー数は半年で20万に達した。
すでにIT業界の巨人となっているGoogleも、ほぼ同時期にSNSをリリースしている。
しかし、なぜか、…なぜかだけどブラジルで爆発的に流行り、ポルトガル語専用のSNSというイメージがついてしまいアメリカではユーザー数は伸びてない。
先発しているSNSも多数あるし、失敗例も多数ある。
後発で弱小のFacebookは、それらの失敗をよく見て学んでいるのは確かなようだ。
独自路線でユーザーを増やしていく。
ひとつ挙げると。
ユーザー登録できるのは、大学のメールアカウント所持者のみに限定。
1校1校ごと、地域を順番に押さえるようにしてリリースしていき、すでに先発している大学のSNSからユーザーを奪っていく。
こうした包囲作戦は大抵うまくいった、競合を叩き潰した、すでに20歳にしてライバルを圧倒する戦略的天才の片鱗を見せはじめている…と著者は評す。
ザッカーバーグを “ 天才 ” と称えているのは、525ページを通してこの箇所しか見当たらない。
これら戦略も、全編にわたって詳細に書かれているけど長くなるので省く。
まとめると、すでにマーケターでもあったと、いうことか。
で、会社を、大学の寮からシリコンバレーへ移す。
IT起業家との交流が持たれて、スタートアップとして知られるようになった。
ここが転機のひとつになっているようでもある。
会社評価額:1000万ドル(15億円)
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創業が描かれた本というのはエネルギーに満ちている。
おもしろい場面は多くある。
でも、525ページあるので大きく省かないといけない。
その中でも1番を挙げろといわれるとどこか?
自分は、資金調達の場面を挙げたい。
借入れではなく、買収や出資の交渉が主になる。
そこそこユーザー数が増えたFacebookだったが、収益は出てなかった。
しかし大手企業は、若者向けの広告媒体として価値を見出していた。
一方のザッカーバーグは、広告は好まない。
広告は、ユーザーに有用なコンテンツでなければいけない。
そうでないとユーザー体験の邪魔となる。
シンプルさ、使いやすさ、それらを保ってこそ長期的な収益が得られる…、など広告についてのザッカーバーグの発言もてんこ盛りで「なるほどな」と興味深い。
あ、あと、トップページのバナー広告など下の下だ、ともあったような。
この状況にさっそくというように、ある企業、…以降も名だたる企業ばかりだけど略す、ある企業からは買収の打診がある。
提示されたのは、1000万ドル(15億円 / 1ドル=150円、以下同)。
しかしザッカーバーグは、すでになにかが違う。
「2000万ドル(30億円)の価値がある」と言い放って買収を突っぱねる。
自分としては「なにやってんだぁ!15億だったら売ればいいのに!」という感想しかない。
さらに、ある企業が買収を打診してきた。
売るつもりがないザッカーバーグは、2500万ドル(37億5000万円)を提示して諦めさせている。
その理由としてはなんだろう?
方向性が異なるからか。
「われわれはメディア企業ではない。テクノロジー企業だ」との言もある。
すでにCEOだった、ということか。
会社評価額:490万ドル(7億3500万円)
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それでも資金調達は、迅速にしなければならない。
ユーザーが増加するのはいいけど、サーバーの増設が必要だった。
先発している多くのSNSの失敗の原因も、サーバーの増設にあった。
アクセスが集中してサーバーダウンして、一気にユーザーが離れる。
他に乗り換えられる。
創業して1年も経たないFacebookも、サーバーダウンが迫っていた。
それを回避するために、1校1校ごとコントロールしながらリリースしていたという側面もある。
金融機関からの借入れはそうもできない。
サーバー費用ばかりかかって、利益は1円も出てないからだった。
資金調達は、投資家からの出資が主になっていく。
ベンチャーキャピタル、投資ファンド、投資会社、個人投資家、エンジェル出資者など相手の呼び名は様々になっているけど、まとめて投資家とする。
それら投資家は、スタートアップを応援しようという善意はない。
当たり前のようにして、理念に賛同したなどもないし、社会課題とやらの解決というお題目もない。
儲けのネタがほしいだけ、とは言い過ぎではない。
出資の見返りとしては、10%から50%以上の株式譲渡を求めてくる。
結果、創業者の所有株式は希薄化される。
役員会も抑えて、折をみて創業者は邪魔者のようにして追い出されるというケースがほとんど。
次に投資家は、プロ経営者を雇う。
大急ぎで会社を上場して、市場に株を売却することで最大のリターンを得る。
それら投資家の目論見は、ザッカーバーグも十分にわかっている。
もっとも投資家のほうも、それを隠しはしないので、むしろ潔い。
お互いに敵対的となるためか、資金調達の交渉は “ ラウンド ” と呼ばれている。
たしかに、ボクシングやゴルフといった勝負事のラウンドに似た緊迫がある。
ラウンドは、投資家からの1本の電話がかかってくるところからはじまる。
会って話して、…彼らに会おうとしなければ強引に機会をつくってきて、まずは会社評価額が算出される。
評価の基準は、あってないようなもの。
お互いの都合の言い値。
両者が合意した会社評価額を基にして、譲渡する株式のパーセンテージの契約して出資が実行される。
たとえば、1億円の会社評価額の株式10%分の出資とするならば、金額は1000万円となる。
少し戻るけど、ザッカーバーグは創業の資金も、この方法で集めて株を分配している。
すでにエンジニアでもあり、すでにマーケターでもあり、すでにCEOでもあり、やはり創業者でもあったということか。
ザッカーバーグが最初に外部から受け入れた出資は、とあるIT企業家から。
490万ドル(7億3500万円)の会社評価額で合意。
後のユーザー数の増加具合によっては、貸付金を株式に転換できる条件で融資を受けた。
以降、ラウンドB、ラウンドCと続いていく。
本の真ん中を過ぎたあたりの、ラウンドDがクライマックスか。
そこでの会社評価額は、10億ドル(1500億円)。
驚きではないか!
創業から2年そこそこで!
15億円が1500億円にまで跳ね上がっている!
「売ればいいのに!」といっていた自分のバカ!
その状況になっても、ザッカーバーグは相変わらずTシャツにジーンズにサンダルという格好。
アパートの部屋にはベッドのマットレスとランプが床に置いてあるだけだった、とある。
会社評価額:4000万ドル(60億円)
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ページを戻す。
調達した資金も、広告の売上も、すぐにサーバー増設で費やされてしまう。
サーバーダウンは回避しているが綱渡り状態。
投資家からの電話も相次いでいる。
いやおうなしに、ラウンドBとなっていく。
結果としては上々だけど、ザッカーバーグはどのようにしてラウンドしていくのか?
あちこちのページに飛んで様子をまとめてみる。
それによると、CEOとしての場では口数は少ない。
自分から質問することはほとんどない。
話を振られても、すぐには口は開かずに、無関心な表情を見せる。
頷いたり、相槌を打つこともない。
それを狙ってやってないのは、人の話を聞いてないと周囲からも言われていることからわかる。
しかし、いったんFacebookの将来について話すと、相手が唸る場面が何度もある。
弁が立つとかでもない。
難しい理論を話すわけでもない。
劇的な演出があるのでもない。
ボディランゲージも使わずに、感情も見せることなく、ただ真剣に話すだけ。
長期の視点に沿っていのはわかる。
単にプログラムが好きともわかる。
発想が独特というか。
いや、変わり者というのか。
不遜さがある、反逆心がある、と何度も書かかれているけど、これは荒っぽいものではない。
あとは多くのページすぎてまとめられないので、いっそのこと省く。
が、省きたくないのは、ザッカーバーグが唸らせた1人であるワシントンポストの役員との場面。
紹介を受けて、やはりTシャツとジーンズにサンダルのザッカーバーグと会う。
この若者はちがう、となる。
ザッカーバーグのほうは珍しく、出資を受けさせてくださいと申し出ている。
ワシントンポストの企業文化である長期的な視野に共感したようだ。
ワシントンポストは、会社評価額を最低でも4000万ドル(60億円)と算出。
次には、譲渡する株のパーセンテージで出資額を決めて契約、というところまでラウンドは進んだ。
会社評価額:8000万ドル(120億円)
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すると。
ワシントンポストに対抗して、別のある企業が買収したいと打診してきた。
出資ではなく、まるごと買収。
会社評価額は7500万ドル(112億5000万円)。
社員が7人で、年間売上100万ドル(1億5000万円)で利益が1円も、…いや1ドルか、細かいことは置いておく、とにかく利益が出てないという会社に対しては記録的な会社評価額となった。
しかしザッカーバーグは、ある企業の買収には応じない。
会社評価額は5億ドル(750億円)あってもいい、と突っぱねる。
ここまでくると「売ればいいのに!」とは思えない。
なにがそうさせるのだろう、という疑問があるまま。
ワシントンポストは慌てるようにして、会社評価額を6000万ドル(90億円)と上方修正している。
すると、また。
競るようにして、ある投資家から会社評価額8000万ドル(120億円)の株式10%分の出資の打診がある。
Facebookの社内は沸いた。
あのGoogleですら、最初の会社評価額は7500万ドル(112億5000万円)だったのだ。
この出資を受けよう、という意見が大方を占めた。
創業メンバーが集まる中、ザッカーバーグは床にあぐらで座り込み泣いたという。
この本で感動した場面はここになる。
ザッカーバーグは、嬉しくて泣いたのではなかったのだ。
「これは、まちがっている」と泣いている。
ワシントンポストの役員に電話をして「出資を受ける約束をしたのに、僕の立場は倫理的に非常に難しいことになった」と話した。
このときの、59歳の役員の談もある。
お互いにビジネスなのだから利得に動くのは当然の話であって、約束が反故されても咎めるつもりもない。
それなのにまだ子供の、20歳のザッカーバーグは説明をしようとしていた、感心した、と。
それでも、ザッカーバーグの人柄はよくわからないまま。
好きでも嫌いでもないし、差入れされた本だから読んだのだけど、ページが進むほど人柄に興味が湧いてくる。
だって、CEOとしてはともかく。
社内ではまったくの20歳の若者。
ハウスミュージックを爆音でかけて、徹夜でプログラミングして、その辺の床にゴロ寝する。
空のペットボトルは机上に置いたまま。
スナック菓子の空袋だって散らかしっぱなし。
女の子も大好き。
パーティーも大好きで、会社で夜通し騒いで大家に怒られている。
古典が好きというのは意外だけど、少しわかる気がする。
手帳には、古典の一文が筆記体で書き込まれているのを著者は目にしてもいる。
戦闘的な言葉も好む。
映画『トロイ』のアキレスのセリフがお気に入りで「さあ!今こそ誰を相手にしているのかわかっただろう!」と突飛もなく口にする。
しょうもない悪ふざけも大好き。
いろいろあるけど、声をだして笑えた悪ふざけをひとつ挙げると。
ある投資家とのラウンドでは、ザッカーバーグは「寝坊しました!」とパジャマで先方の会議室に現れた。
だいぶ遅刻して。
さらに用意してきたパワーポイントで『フェイスブックに出資してはいけない10の理由』というタイトルのプレゼンをはじめる。
普通に断ればいいのにと思っていると、終わりの10個目の理由は “ CEOが寝坊して遅刻するから ” となっている。
寝坊は嘘でした、わざとパジャマで遅刻しました、とスッとぼけながら明かしている。
投資家たちは、真摯にうなずいていたという。
反省などしないザッカーバーグが「あれは恥ずべき行為だった…」と神妙に語っているおもしろさが伝わるだろうか?
会社評価額:9800万ドル(147億円)
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話を戻す。
ある投資家から8000万ドル(120億円)の会社評価額での出資が打診されたところまで。
ラウンドを続けたザッカーバーグは、会社評価額9800万ドル(147億円)弱で合意した。
株式の譲渡は15%。
これにより、1270万ドル(19億500万円)の出資を受ける。
いや、ちょっと訂正したい。
さも、ザッカーバーグ1人でラウンドしているようだけど、常にセコンドがついている。
“ 右腕 ” を任じる創業メンバー、顧問を名乗る役員、ただ単に味方しているシリコンバレーの起業家、など。
それぞれが重要な登場人物だけど、ざっくりと省かないとこんがらがってくる。
とくにラウンドでは、投資家の面々が次から次へと現れる。
1ページに10人近くは出てくるのではないか。
それに加えてチョイ役も多い。
通りかかりの女子学生のキャサリンだかメアリーだかが、一言の感想を述べて去っていく。
遠くのFacebookユーザーの、マイクだかケビンだかの、何気ないエピソードがポッと出てくる。
「この人いる?」といったチョイ役まで合わせると、この本の登場人物は軽く200人を超えるのではないか。
その中で、あえて。
重要な人物を1人だけ挙げるとすれば誰だろうか?
熟考したけど、“ ショーン・パーカー ” ではないのか。
ザッカーバーグよりも4歳年上のIT起業家。
すでに、自身が起業した会社を投資家に乗っ取られている。
そのときは突然で、メールにはログインできなくなりノートパソコンも取り上げられ、文字通り体ひとつで会社から追い出されて、誰とも連絡が取れなくてシリコンバレーの路上をさまよったという経験もしている。
その失敗をザッカーバーグにさせないように、Facebookの役員として、投資家たちとの交渉には尽力している。
この1270万ドルの出資の際には、投資家サイドからの1名がFacebookの役員に就くが、それに対抗する交渉もする。
ザッカーバーグが空席役員の任命権を持つ条件をつけて、CEOの地位を失うリスクを最小限にしている。
それでも、もしザッカーバーグが会社を追い出された場合、メールアドレスの使用とノートパソコンの所有も認めるという一項まで契約書につけさせる。
ショーン・パーカーがいなかったら、ザッカーバーグはラウンドを乗り越えられなかったのでは。
いや、乗り越えられなかった。
投資家にヒョイと指先で摘まれてポイされていた。
ただ、ショーン・パーカーは素行はよくない。
ロックな生き方をしている、ロックスター的ライフスタイルなどと、よくわからないけど著者は何度も書いている。
それほどのロックだからか。
出資が実行されたあと、ショーン・パーカーは、主催したパーティーでの麻薬使用の容疑で逮捕された。
このことで、投資家サイドの役員と対立。
事態の収拾のためFacebookを去る。
が、置き土産として、ザッカーバーグには後任の役員の指名権を譲る。
これにより、Facebookはザッカーバーグの個人商店のような形になった。
ショーン・パーカーの去就は、ビジネス書を青春小説のような爽やかさにさせている。
ラウンドBが終わるここまでで、ちょうど本の真ん中。
ザッカーバーグは21歳となっている。
そうそう。
大学はとっくに中退している。
会社評価額:5億ドル(750億円)
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ラウンドCのころには、大企業も買収に乗り出してくる。
ザッカーバーグは「少なくとも20億ドル(3000億円)の価値があると思う」と答えている。
わずか20ヶ月前に始めた会社で。
総額で2000万ドル(30億円)の売上を得ていたが、利益は1ドルも出してないのに。
ラウンドも様子も変化している。
ザッカーバーグは買収に応じるつもりがなくても、応じるかのようにラウンドする。
すると他の大企業が横取りしようと打診をしてくる。
その度に、会社評価額は跳ね上がっていく。
こっちのハッタリと相手の表情で、見えないチップがベットされていくかのようで、ポーカーのラウンドに似た高揚感がある。
もっとも、ザッカーバーグはギャンブルしているつもりはない。
「僕は仕事を通じて学んでいるんだ」とも「これらラウンドで広告やマーケティングの知識を得た」とも著者は聞き取っている。
そういう妙な組み合わせがあって、ラウンドCで複数の投資家から出資を受けたときは、会社評価額は5億ドル(750億円)に達している。
株式の譲渡は、それぞれが0.5%や1%。
このパーセンテージでも出資金額は大きいし、かつ会社乗っ取りのリスクも小さくなっている。
前後するけど。
Facebookは “ ニュースフィード ” をリリース。
さらにユーザーも増えていっている。
もうサーバーダウンの危機はない。
大学のSNSではなくて、誰でもユーザーになれるオープン登録も行われる。
また、携帯電話のカメラの性能アップで、多くの写真が撮られるようになった時期と重なった。
Facebookは、世界最大の写真共有サイトにもなっていくのも会社評価額を上げている。
もちろん、大失敗したサービスもある。
ユーザーから反対された仕様の変更もある。
それらの原因と対処も含めて、出資の背景には織り込まれている。
海外展開は、あっさりと成功。
企業からは広告の申し入れも相次いだ。
ところが、ザッカーバーグは広告には関心を寄せずに、プラットフォーム化を打ち出した。
外部開発者のプログラムが実装できように仕様を変更した。
これも成功して、さらにユーザーも増えていく。
自分がいうのもなんだけど「さすがだな」と思った。
ついには、ある企業が、会社評価額8億ドル( 1200億円)で買収を打診してきてもいる。
22歳となっているサッカーバッグは、その金額でも売るつもりはなかった。
「もう僕は、Facebook以上のアイデアを思いつけない」という戸惑いも見られる。
会社評価額:10億ドル(1500億円)
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大型買収に乗り出したのは、Microsoft と Google だった。
これに対抗して、Yahoo! 経営陣は満場一致で、Facebookを買収しようと結論する。
会社評価額は10億ドル(1500億円)という最高額。
ザッカーバーグにはタームシート(条件概要書)が届けられた。
Facebookの役員は6名。
「買収されたらFacebookはダメになる」と主張するザッカーバーグと、リターンの機会とする投資家サイドの役員とで意見は割れた。
社員は約130名。
多くが自社株を持っているので、10億ドルで買収されれば億万長者になる。
20代後半以上の社員は、全員が買収に賛成している。
ザッカーバーグ側は少数。
たくさんの人たちにとって、この金は大変なお金。
だけど僕たちは、これ以上にもっと大きく世界を変えるチャンスがある。
お金を手にすることが正しい行動とは思えない。
割れる社内に、そう呼びかける。
読んでいる自分は、なにがそう言わせのだろう…という疑問がますます大きくなっている。
となると、ザッカーバーグの子供のころも知りたくなる。
それを知れば、疑問が軟化する気がする。
が、この本には、そんなことは書かれてない。
どこで生まれたのかも、生年月日すらも書かれてない。
高校生のときは、プログラミングが得意だったというエピソードが数行あるだけ。
家族については、全部で10行にも満たない。
父親は歯科医、母親は精神科医。
兄弟は4人で男子は1人だけ。
姉がFacebookで働いている。
それらが1行ずつぐらいしかない。
とにかくも。
最終的には、Yahoo! が現金10億ドルで買収することで基本合意した。
しかし事態は急転。
決算発表をした Yahoo! の株価が下落したのだ。
このタイミングで、利益を出してないFacebookを買収したものなら、ウォール街の反応は厳しい。
ザッカーバーグは時間を引き延ばしていたのかもしれない、と思った。
ラウンドが妙にのらりくらりしていた。
やがて、Yahoo! 側が買収断念の電話をしてきた。
受話器を置いたザッカーバーグは、すぐに傍らの “ 右腕 ” と大きくハイタッチをした。
「まだ売りどきじゃない」とだけつぶやいている。
半年後。
Yahoo! の株価は戻り、会社評価額10億ドルで再交渉を申し入れている。
が、ザッカーバーグは断った。
もうスタートアップではない、というような態度。
このラウンドで、企業のCEOとしてのリーダーシップは増したのは確かに見える。
ラスト
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Facebookが持続性がある企業となるためには、資金調達だけではなく収益化も必要だった。
そのために、外部からCOO(最高執行役員)を迎え入れる。
14歳年上の彼女に任せたザッカーバーグは、1ヶ月の旅に出る。
ザッカーバーグ不在のFacebookは、新たなCOOを中心にして広告の戦略を立てる。
ここの戦略の解説は50ページ以上あって、わかりやすく、15年ほど前なのに古さを感じなくて興味深い。
が、このあたりから、別の本にしてもいいくらいにトーンが変わる。
ザッカーバーグからFacebookが手離れしていくのに少しの寂しさがあるというのか。
祭りのあと…というのか。
残りの4分の1に差しかかる『第14章 フェイスブックと世界』では、大企業となって各国に広まったFacebookの観測がされる。
影響力も将来性も解説されて、会社評価額は150億ドル(2兆2500億円)との試算も紹介されてもいる。
このときには、創業メンバーは散りじりになっている。
あの “ 右腕 ” は「官僚的な仕事が多くなった」と去っている。
このときザッカーバーグは取り乱した、とある。
同じくルームメイトは「マークとは一緒に仕事をしたくない。友達でいたい」と去っていく。
高校の同級生は「新しいサービスをゼロからつくりたい」と去っている。
去ったとはいっても、揉めたのではない。
今でも仲がいいと、それぞれが認めている。
ショーン・パーカーとも親交は続いている。
で、この本には、ザッカーバーグの成功はここにあったという筆致はない。
自分が見逃しているだけかもしれないけど、こうだから成功したと一言でまとめてない。
そこをあえて、一言でまとめるとすると。
なんだろうか。
ザッカーバーグの成功は創業メンバーの態度にある、といってもいいのでは。
4年後のラスト
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上記までが、檻の中での読書感想文のラストになっている。
でもまだ、残りの4分の1には、15章、16章、17章とある。
それにしても、暗いラストの感想。
祭りのあと…に引っ張られすぎたのか。
いや、自分の失敗が、そういう感想にさせている。
いいときがあれば、そこが基準になってしまう。
不本意な状況になったときには修正しずらい、というありふれた失敗が。
反省も、そういう感想にさせてもいる。
楽しいときがあればあるほど、つまらない状況のときには、ささいなことでいがみ合ってしまう。
仲がよければよいほど、ぎりぎりの状況のときには、小さなことで揉めてしまう、という檻の中での暗い反省が。
でも今は。
自由な状況で改めて読み直してみると、もう少し後を、…創業メンバーが去った後を感想文のラストにしてもいいのに気がつく。
その日。
2009年の最初の出勤日。
25歳となるザッカーバーグは、襟のついたドレスシャツに地味なネクタイを締めてオフィスに現れた。
聞かれるたびに「今年は勝負の年だ」と「1年中ネクタイを締めるつもりだと」いう。
そして、Facebookは数多くの課題に直面している、と改めて強調した。
ここから60ページほどで本は終わる。
けど、話はそこから飛び出して今でも続いていく。
新たに続いていく予兆が、気持ちを明るくさせる。
難しい話ではない。
やっぱ物事は明るく進めるのがいい。
ザッカーバーグの成功は明るく前向きだから、と訂正したい。