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大山倍達「世界ケンカ旅」読書感想文

受刑者になると、所持を禁止される本がある。
まずは、題名や著者が反社会の本。
あとは、エロ本全般。
違法行為が書かれた本も該当する。

そういうところでいうと、この「世界ケンカ旅」などは禁止本だとチェックが入りやすい。
“ ケンカ ” は違法行為だからというだけの理由で。

とはいっても、極真空手の創始者の大山倍達(ますたつ)だし、発刊が昭和の昔だし、禁止本こそにはならないけど、受刑者が購入するのは難しい。
記入してある題名だけで「おい!こんなくだらん本読むなよ!」と購入願箋を突き返される。

それでも購入して読みたいとなれば、憲法がいうところの「知る権利」や「教育を受ける権利」を引っ張りだして説明できなければならないが、おそらく仮釈は遠のく。

外部からの差入の本だったから、この「世界ケンカ旅」は手元に入った。


解説

久しぶりの再読となる。
差入は身元引受人からだった。
ダンボールに詰めて置いてあった中から、適当に送ってきたと思われる。

大山倍達のエピソードは「あれはウソだ」とか「インチキだ」といわれもする。
なにしろ、やってることが規格外。
話半分だとしても、いや、3分の1だとしても、あり余る衝撃がある。

極真空手が大きな組織となって、大山倍達も老齢になると「拳禅一如」とか「極真には哲学がある」など言い出すが、若い頃のひたすら強さを求めているときもおもしろい。

また、当時の人たちは、世界的に気が荒い。
アメリカ人の気質も今とはちがう。
「負けたけどよくやった」が通用するのは日本だけで、当時のアメリカでは勝者がすべて。
強者への崇拝がある、という。

そんな中で、若い大山倍達は勝負を重ねる。
負けたことも、逃げ出したかったことも明かす。
空手を、世界に広めれる手ごたえも得ていく。

文庫本|1985年発刊|216ページ|徳間書店

初出:1968年 KKベストセラーズ

登場人物

大山倍達

1923年生まれ。
終戦後、千葉県の清澄山で1年半の山篭りを敢行。
下山してから館山の屠殺場へ直行。
70頭余りの牛を素手で撲殺。
空手家として “ 牛殺し ” の異名を得るが、業界からは異端視される。

1952年、1回目のアメリカ巡業へ向かう。
空手道場を建設する資金稼ぎのためだった。

※ 筆者註 ・・・ 余談ですが、司馬遼太郎、池波正太郎と同じ1923年生まれでした。ただそれだけです。

グレート東郷

日系人のプロレスラー。
リングでは憎まれ役を演じる。
大山倍達と遠藤幸吉をアメリカ巡業に雇う。
それぞれを、弟のマス東郷、コー東郷として、プロレスの前座のエキシビジョンに出演させる。

遠藤幸吉

柔道6段。
日本で勃興しかけているプロレスに転向する。
大山倍達とアメリカ巡業に出発する。
ちょっと気弱な人。

※ 筆者註 ・・・ 気になって検索してみると、あの日本のプロレスの祖となる力道山とタッグを組んでもいます。現在97歳で存命しているのも驚きました。

マージョリー・ドースン

愛称、マージ。
ラスベガスの女バーテンダー。
2回目の渡米をした大山と知り合い、地元のチンピラとのケンカを引き起こす元となる。
2人でニューヨークで暮したときは、弟の不手際で、1万ドルの借金をしようとする。
大山は、すべての解決のために、スパニッシュ・ハーレムに赴く。

トミー

マージの弟。
歌手として売れかかっているところに、スペイン人の女性に手を出して、ハーレムの不良グループに軟禁される。
慰謝料として1万ドルを用意できなければ、スキャンダルとしてゴシップ雑誌にばらまくとマージに電話がくる。

ブラッドショウ

アメリカ人。
アメリカで、大山のエキジビジョンを目にする。
仕事で日本にきたときに、大山を尋ねてきて、空手の個人指導を受ける。
自動車メーカーの重役であるが、大山はよく知らないまま友人関係を持つ。
再度のアメリカ巡業にきた大山を、マイアミに別荘に招待もする。

前半のあらすじ

【1】シカゴからアイオワへ

はじめてエキジビジョンは、プロレスの前座だった。
リングの上で空手の型の演武を披露したのだ。

とたんに観客がざわついた。
型に感動しているのかと思ったが、どうやらちがうようだ。
「変なダンスなんかしてるな!」と罵声もとんできて「音楽をかけろ!」とコインも飛んでくる。

アメリカ人というのは、空手の伝統が込められた型の意味などわかってないのだ。

試し割りしかない。
板もレンガも用意してある。
するとどうだ。
英語がよく伝わってなかったのだ。
1インチの厚さの板を5枚と言ったのに、5枚分の厚さの板が1枚用意されていたのだ。

もはや、1枚の板ではなくて1個の木のブロック。
こんなの割ったことがない。

板、いや、木のブロックを持つ遠藤が「だいじょうぶか?」と心配そうに聞いてくる。
割れなかったら、明日には日本に帰されるだけだ。
それをいうと、遠藤は「だったらオレも帰る」と大真面目に頼りなさそうに言ってくる。
それが、かえって心を落ち着かせた。
渾身の正拳突きで、木のブロックは割れたのだ。

次はレンガ割りだ。
しかしどうして、アメリカのレンガというのは堅いのだ。
歯を食いしばって、3度目に手刀を振り落として、なんとか割れたのだ。
観客のざわつきは収まった。

次からは、板は自前で用意するようにした。
巡業の車のトランクには、板やレンガが詰まっていた。

アイデアマンのグレート東郷は、レンガ割りの挑戦者をリングの上から募る方法にした。
1000ドルの賞金付だ。

イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州とまわって、アイオワ州のディラントでも、レンガ割りの挑戦者が何人かリングにのぼってきた。
1人も割れなかった。

その日、最後にのぼってきた大男には、観客席から歓声も口笛も飛んできている。
おそらく、町でいちばんの強い男でとおっているのだろう。
大男はレンガを前にしてなにかわめいて、観客席からは声援が飛んできている。
通訳が「インチキにきまっている!」と言ってると教えてくれた。

が、大男は、レンガを割れない。
拳から血を流しながら、何度もぶつけている。
レンガ割りはあきらめた大男だったが、リングを下りることなく、また、なにかわめいている。
勝負を挑んできているのを、通訳はそっけなく伝えてきた。

これを受けなければ、アメリカ人たちはきっと、空手とは板やレンガを手で割る曲芸の一種だと考えてしまうだろう。

お互いに身構えたときは、観客席から「キル・ザ・ジャップ!」という女の声が鋭く響いた。
まだ、戦争が終わって7年しか経ってない。
反日感情が強い地域だった。

以下は略す。
大男はさすがだったが、中段突き2発でマットに沈んだ。

場内には喊声が渦巻いている。
遠藤が「あぶないぞ!」と叫んだ。
反射的に体を沈めると、なにか果物が飛んできて、コーラの瓶も飛んでくる。
「キル・ザ・ジャップ!」という、ヒステリーでも起こしたような女のわめき声がはっきり聞こえた。

リングサイドの客たちが立ち上がって「キル・トーゴー!」と両手を振り上げてわめき散らしている。
後ろのほうの観客も立ち上がり、リングほうへ押しかけてきている。

どうしようもできなくて、遠藤と2人してリングの上にいると、警察が来たの見えた。
救急車なのか、サイレンの音もかすかに聞こえる。
数人の警官が、拳銃や警棒を振りかざして、人ごみをかき分けてリングに向かってきた。
助かったらしい。

1952年の4月9日の新聞の記事に、その件が載った。
あの男は重傷だった。
肋骨が7本折れていたのだ。

【2】ラスベガスの一夜

2回目の渡米になる。
カジノのナイトクラブでエキシビジョンを終えたあとだ。
マネージャーはスペシャル・ルームに案内する。

厚い絨毯に、重厚なソファーに、バーカウンターに、バカラのテーブルがある一室だった。

それはいいが、そこには全裸の女性が5人もいた・・・。
マネージャーはボーナスだというが、意図はわかっていた。
2人の屈強な男もいたのだ。
ヴァージニアと名乗った男が、やはり言ってきた。

「あんたの噂も聞いてるし、エキジビジョンも見た。だけど俺たちは、あんたの強さを、目の前ではっきりと見たいんだよ」

女を賭けるようにして、強さを示す技くらべがはじまった。
ヴァージニアは、グラスを握って砕いてみせた。
こっちは、手刀でグラスを縦に砕いてやった。

ヴァージニアは上半身を脱ぐ。
筋肉質というより、筋肉の固まりだった。
力こぶを体中に移動させて見せる。
びっくりした。
はじめてみる “ 力こぶのダンス ” だった。

次には曲げた腕に、コーラの空瓶を挟んで、力を込めて、あっけなく割って見せた。
裸の女たちは、いっせいに溜息を洩らした。

どうしよう。
少し考えてから、バーカウンターへ歩を運んだ。
そこにいる女バーテンに「ウィスキーの瓶をくれないか」というと、すぐに後ろの棚から2本をとった。

この女バーテンが、マージだった。
瓶を差し出してきたとき、ブロンドの青い目が燃えあがるようにきらめいた。
気のせいかもしれないが・・・。

そんなこと気にしている場合じゃない。
テーブルの上に、2本の瓶を並べて置いた。
手刀を左右に一瞬で振り払い、その首をふっとばした。
もちろん、瓶の胴体は立ったままだ。
皆が皆、声を出して驚いている。

瓶の首飛ばしは、日本でも何度もやってはいるが、これほどアメリカ人が驚くとは思わなかった。
それからは、エキジビジョンに加えることになる。

もう1人の男とは、腕相撲をした。
左ではかろうじて勝って、右は勝負がつかなかった。
居合わせた皆は、興奮が隠せないようだった。

勝負が終わり、女を選ぶことになった。
そのとき、マージと目が合ったのだ・・・。
マネージャーには「彼女とダンスをしたい」と申し入れた。

マージと下のクラブでダンスをしてからは、夜道を散歩して、食事に誘おうと思っていると車が止まる。
降りてきた男とマージが話してる。
西部なまりの英語なのでよくわからないが、そのジョーという男と食事の約束をしていたらしい。

先約があったなら仕方ないと思っていたが、マージは離れようとしないし、ジョーとのやりとりが、急にとげとげしくなってきた。

いきなりジョーの手が、マージの腕をつかもうとしてきて、思わず払いのけた。
もちろん、力は入れてない。
が、後ろへ飛んだジョーは、ナイフをとりだした。
またしても、女の取り合いだ。

チンピラであるジョーのナイフさばきは、わるくはない。
が、刃先をかわして上段突きをすると、血を流してのけぞり、膝をつき、やがて歩道に転がった。

マージは、部屋に送ろうとした。
明日には、巡業のためにニューヨークへいくので、荷造りもしなければだった。
すると、マージも「わたしも一緒にいく」という。

びっくりした。
さっきのヴァージニアの “ 力こぶのダンス ” を目にしたときよりもびっくりした。

マージは、こんなことが起きたから、もうラスベガスにいるのは嫌だというし、ニューヨークには叔母もいるという。

アメリカの女というのは、ただ強い男にあこがれるらしい。
ちょっと日本では考えられない。
エキジビジョンのあとにも、キスを求めてくる女もけっこういたりもしたのだ・・・。

【3】ニューヨークのギャングたち

タクシーを降りるときに、運転手には、ドル札とメモを渡した。
メモには、マージの名と電話番号がある。

「たのみがあるんだ。ここで1時間だけ待っていてくれないか?もし、1時間たっても戻ってこなかったらいってくれ。そして、ここに電話してほしい。1時間待ったが帰ってこなかったとだけ伝えてほしい」

運転手は心配しながらも承諾してくれた。
タクシーを降りる。
ハーレムだった。
スパニッシュ・ハーレムと呼ばれる一角だ。
マージの弟が、スペイン人の女に手を出して、慰謝料1万ドルを請求されたのだった。

やっぱ、もう帰りたい。
でも、ここまできたら仕方ない。
迷うばかりだったが、相手が指定したビルは見つかった。

1室には6人がいた。
別室には、トミーとその女と、あと2人がいる。
「日本からきた空手家だろ。新聞で知っている」というボスとは、テーブルを挟んで座った。
1人がナイフをチラつかせて脅しにかかってきていた。

相手が拳銃を向けてきたら、テーブルを蹴り上げる。
灰皿も投げつけようと、煙草に火をつけてもみた。

ポケットからは、25セント硬貨を出した。
コイン潰しだ。
人差し指と親指で2つ折にするのだ。
2つ折りをして見せて、その潰れたコインをテーブルの上に投げた。
これは効いたらしい。

「オマエは、ここに威張りにきたのか?」
「わたしは、トミーを迎えにきただけだ」
「金は用意できたのか?」
「・・・ちょっと、1杯もらってもいいか?」

テーブルのウイスキーを1杯もらい、3口ほどで飲み干した。
あとにもさきにも、こんなふうにして酒を飲んだのは、このときだけだった。

汗をべっとりかいている。
こんなところで死にたくない。
たしかにマージは気のいい女だけど、だからって、こんな薄暗いところで、命と夢が消し飛んでしまうのか?
とにかく言ってやった。

「ここらのコールガールの相場は100ドルだと聞いている」
「なにがいいたいんだ?」
「1万ドルは高すぎるということだ」
「生きて帰れるとおもってんのか?」
「わからんが、最初にきた1人だけは確実に殺す」
「・・・」
「わたしも死ぬかもしれない。が、あんたのほうも少なくても1人、あるいは8人ぜんぶが死ぬかもしれない」
「・・・」

ボスの表情に、わずかな変化があった。
目が後ろを見たのだ。

一瞬だった。
ナイフの刃が顔から肩をかすめたと同時に、椅子ごと後ろに倒れていた。
倒れながら、後ろから襲いかかってきた男の顔面に蹴りが入った。
けものの叫び声があがった。

上体を起こしながらも、いつでもテーブルを蹴飛ばせるように身構えた。
ほかの男が立ち上がるのを、ボスは手をあげて押さえた。

「トミーを連れて帰ってもいいかな?」
「ああ」

このときは気がつかなかったが、太腿を刺されていた。
12針の傷だった。

この傷が治りかけた1ヶ月後に、シカゴに出発した。

もう少しあとになってから、マージは結婚して、母親にもなったことをクリスマスカードで知った。

【4】再びシカゴへ

シカゴでの、牛との対決は勝った。
耳の下が急所なのだ。
そこに正拳をぶちこめばいい。
倒れた相手の角を手刀で折ると、それは高く飛んでいった。

予想以上の成功だった。
プロモーターは、興奮に声を震わせて「これはすばらしい興行になる!」と何度もいってきた。

しかし、1回目が新聞に出ると、プロモーターのもとへ動物愛護協会から強硬な抗議がきたという。

アメリカでの牛との対決は、それが最初で最後となった。

【5】マイアミでの武勇伝

シカゴからマイアミまでは、かなりのエキジビジョンもこなしながら移動した。
マイアミでは、1週間ほどの骨休みをするつもりだった。
ブラッドショウの別荘に招待されていたのだ。

ひとまずホテルについてから、マイアミの街に散歩に出ると、黒人2人組に尾行されているようだ。
まったく心あたりがない。

黒人には、コンプレックスがあった。
終戦直後に、女性に乱暴をするアメリカ兵を何十人もぶちのめしたが、あるとき囮に引かかり、あっという間に6人か7人に囲まれたのだ。
全員が黒人兵だった。
3人までは倒したが、それからはコテンパンに殴られて蹴られて、黒人の力強さをいやというほど思い知られたのだ。

とにかくも、尾行している黒人2人組に声をかけられてからは、路地裏に場所が移って、前の1人は孤拳で、後ろの1人は蹴りで倒した。

が、この2人こそ、囮のようなものだった。
新たに現れた3人に、拳銃を向けられたのだった。
後部座席に、2人の黒人に挟まれて乗せられる。
車は走りだした。

運転席の男が聞いてきた。
あの用心深いブラッドショウに、いくらでボディーガードとして雇われたんだ、という。

さっきの2人で腕前はわかった。
あとは、日本のどんな筋から紹介されたのか、耳にした噂の裏付けをしたい。
正直に答えてくれれば、それなりのお礼もするし、帰りは送るともいう。

そういわれても、意味がわからない。
大きな勘違いをしているようだ。

友人として招待された、と正直に言っても信じてくれない。
どころか、明かさないのなら、私立探偵のライセンスを持つ者として、さっきの2人への暴行で警察に突き出すという。

車からは、コーナーに差しかかったときに逃げた。
このままでは警察だから、逃げるしかない。

両脇の黒人の顔面に目潰し代わりの手刀と飛ばして、持つ拳銃を叩きおとして、振り向いた運転席の男にも目潰し。
右側の黒人を押し出すようにして舗道へ飛び降りた。

ホテルへ戻ると、ブラッドショウが待っていた。
別荘へ招待されてからは、・・・その別荘というのは門から玄関まで車で20分という豪華さに驚いたが、とにかくも、この話ばかりで食事をした。

根掘り葉掘り聞いたブラッドショウは、大きくうなずいて、たいへんな目にあわせてしまったから埋め合わせをしたいという。
明日にでも、マイアミ美人を紹介してもいいという。

そのとき、メイドのメアリがトレイを持って、食器の後片付けをはじめた。
黒人のメアリは、ブルーの短いスカートを爆発させそうにして、ヒップを左右に揺らしている・・・。

リビングルームから出ていくヒップを見送ってから「彼女のような黒人の女がいい」とブラッドショウに伝えたのだった。
心の底にある黒人へのコンプレックスを、徹底的に追い出してやろうと考えたのかもしれない。

で、その夜、メアリが部屋にきたのだ・・・。
ウイスキーとアイスペールを載せたトレイを持って。

メアリの体は凄いものだった・・・。
ヒップの弾力などは素晴らしい。

そして、突飛もないことを考えた。
囮という言葉が、そんな考えを連想させたのだろう。

もしかしたら、日本からボディーガードがきたという噂は、ブラッドショウ側から意図的に流したかもしれない。
あの私立探偵は、ライバル会社なのか、それとも同じ会社の対立派に雇われたのか、そこまではわからない。
が、話を聞いたときの、ブラッドショウ大きなうなずきは、相手の動きを掴めた満足のうなずきだった気もする。

が、それ以上は考えようともしなかった。
考えるひまがなかった。
メアリが、あらためて覆いかぶさってきたからだ・・・。

ブラッドショウに囮に使われたとしても、それならそれでかまわない。
メアリの埋め合わせは、じゅうぶん過ぎるほどだから・・・。

再読しての感想

以上が、全10章のうちの半分である。
これだけ、あらすじをまとめるのは難しいと感じるのは、ノンフィクションだからという気がする。

何十年経っても、決して色あせることがない感情が渦を巻いていて、200ページほどの本文の、どの箇所も引き込まれる。
それこそ、1冊があらすじになっている。

以下、残り5章のまとめである。

【6】ブラジルで短剣使いのペドロとの闘い。
【7】香港で拳法家で老齢の陳さんへの敗北。
【8】タイでムエタイのブラック・コブラとの対戦。
【9】イランで宮廷付き棒術師との闘い&困った踊り子。
【10】フランスでサバットの達人のボーモンとの対戦。

20代から30代にかけての大山倍達が、世界各地で「オレは強い!空手は最強だ!」と公言するものだから、次から次へと挑戦者が現れる流れである。

再読では、強さを追求するという格好がいいものではなくて、強さに嫉妬するあまりに挑んでくる男たちの様子が伝わってくる。

このあと、40代になった大山倍達が創始した極真空手は、急速に全世界に広まっていく。

強さだけでは、これほど広まらなかったのではないか?
そういう気がする。

まず、掲げるキャッチコピーが、いちいちパンチがある。
演出も目を引かせる。
興行としても成り立たせてもいる。
コンプレックス産業ともいえる面だってある。

世界に広めた手法の原点を見るような再読だった。

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