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食卓からこんにちは(Kakui 2024)

私が関わった論文の短い紹介.

”茹でてまさに食べんとするオオズワイガニ体内からハリガネムシを発見”

Kakui (2024) はオオズワイガニに寄生するハリガネムシ(類線形動物門)に関する研究成果です.オオズワイガニを茹でて食べようとされていたヤマモトリエコさんとヤマモトユウタさんから,ハリガネムシのような寄生虫がカニの体内から見つかったという連絡をいただき,送っていただいて調べたところ,報告例の少ない海生ハリガネムシ(Nectonema sp.)であったこと,オオズワイガニへの寄生報告はなかったことから,DNA配列情報をもとにした系統解析結果を含めた論文としてまとめました.

オオズワイガニは,日本周辺での漁獲は近年のような大発生時を除き少ないですが,ベーリング海ではよく採られ食用にされています.このように人目によく触れていたであろうオオズワイガニからこれまでハリガネムシの報告がなかった理由は不明です.もしかしたら過去に誰かが見つけていたものの,ただの寄生虫だろうと捨てられてきたのかもしれません.日本で食用にされる甲殻類はオオズワイガニ以外にもたくさんいます.もしかしたら次はみなさんの食卓から新発見がもたらされるかもしれません.あるいは野外で寄生された個体を見つけられることもあるかもしれません(日本ではヤドカリの仲間から報告があります).見つけられた場合は,冷凍保存いただきご一報いただけますと大変ありがたいです.なお茹でたハリガネムシによる健康被害の報告はありせん.

写真:オオズワイガニと海生ハリガネムシ(矢印).A,B,摘出前後;C,海生ハリガネムシ.ヤマモトリエコさん写真提供

Kakui K (2024e) Nectonema horsehair worms (Nematomorpha) parasitic in the Tanner crab Chionoecetes bairdi, with a note on the relationship between host and parasite phylogeny. Diseases of Aquatic Organisms 159: 153–157.

doi: 10.3354/dao03815
学科ウェブサイト記事:https://www2.sci.hokudai.ac.jp/dept/bio/research/4587

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