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プルリバース=多元社会に関するイベントと記事の紹介
みなさん、コロンビアの人類学者アルトゥーロ・エスコバルの著書『多元世界に向けたデザイン(原題:Designs for the Pluriverse)』読みましたか?
僕はすこし前にとても楽しく読ませてもらいました。
環境課題や社会課題の解決には、個別の解決策を考えるだけでなく、根本的な解決を目指した社会システムのトランジションを考えるしかないのでは。そんなことを何年か前からずっと思ってるんだけど、エスコバルのこの本はそんなことをしっかりまとめてくれてて、「これは僕だ!」と感じました 笑
なので、僕にとっては「なにか新しい提案がされてる、新しい内容が書かれている本」というより、ここ何年もずっと考えてきて、構想したり、いろんな形で発信したり、取り組んできたことを、整理してまとめてくれてる同志のような、兄貴のような人が書いてくれた本でした。
そして、この本を読みながら、いま本当にトランジションということを社会変革というレベルで取り組もうとするのなら、エスコバルがこの本で紹介している、人類学や社会学、政治学、フェミニズム理論やアクターネットワーク理論的なもの、そして、フーコーやハイデガーなどの哲学、そして、エスコバルが言及していないけど、絶対に関連しているグレアム・ハーマンに代表されるオブジェクト指向存在論や、「ケアの倫理」やシステム思考など、多岐にわたる知識を獲得、総動員しながら、ほかの誰かのルールや決め事の押し付けではない(他律ではない)、誰もがまわりの人たちといっしょに自分たちそれぞれの生き方・暮らし方・経済や政治を自分たちで(自律的に)デザインする社会をつくるというやり方へのトランジションが必要だなと思いながら、読みました。
そんな風に読めたのは、きっと直前にまさに「多元世界に向けたデザイン」だなと思えるアプローチをしたNECさんとの共同プロジェクトをやっていたから。
なので、ぜひ、そのプロジェクトの紹介といっしょに、エスコバルの本で書かれたことについて話すトークイベントができたらなと思い、企画しました。
題して「プルリバース:多元世界での未来を構想する」。12月12日(木)開催。
前半のパートでは、大阪大学附属図書館研究開発室の特任研究員であり、『多元世界に向けたデザイン』の監訳者のひとりでもある神崎隼人さんが登壇。プルリバースとは何か、人類学の視点を交えてこの世界のトランジションを考えるためのヒントになる事例を紹介。
後半では、NECとロフトワークで実施した「Naked2:未来価値研究」プロジェクトを紹介……政治思想史、「ケアの倫理」をはじめとするフェミニズム理論、人類学(主に民主主義をテーマに扱ったもの)、北欧の都市計画、社会的連帯経済、イタリアのスローフード運動に代表される食と農と地域との関係などの多数の書籍を含めたデスクトップリサーチや、地域共創に取り組む有識者へのインタビュー、さらには独自の市民共創による地域活性の取り組みを行なっている群馬県前橋市と島根県雲南市でのフィールドワークを通じたインプットをもとに、システム思考による問題構造の可視化と問題解決に向けた新たな社会構造の検討による「デジタル共創社会」というトランジションの可能性を検討したプロジェクトについてお話します。
イベントでは、自治=自律的デザインということについて話し合ってみたいと思ってます。
骨太の方針にも掲げられている自律的な地方社会という多元な共同体がそれぞれ自律しながらも共存する社会を実現するためには、個々の共同体がみずからを自治=自律的にデザインしていく必要がある。
そして、その方向に向かう際、企業もこれまで以上に共同体に個別に寄り添う態度が必要となり、マス的な製造・販売がよりいっそう通用しにくくなる。企業もそこで働く人たちも、各共同体に寄り添える価値提供のかたち、働き方、スキルが必要になってくる。
そんなことも含めての多元世界のためのデザイン。
エスコバルは、多元世界の実現のためには自治=自律的デザインが必要で、それには5つの前提というのだけど、それが、上記のイベントで紹介するNECのデザインプロジェクトにやったことにも近い。
そんなことをイベントの導入として紹介しているのが、この記事。
話の発端は「少子化対策は一筋縄ではいきそうにない」「むずかしい」という会話から。その会話を受けて、そのむずかしさの要因は、国全体として一律のかたちで「一筋縄で解決しようとする」から生じているのではと思いました。私は、地域ごとに解決する道筋がたくさんあるはずではないかと思い、「地域それぞれが独自の少子化対策を講じるのもありなのでは?」と発言しました。
そもそも土地に根ざした自然資本や人的資本、社会関係資本、さらには固有の歴史や文化という、地域それぞれが本来有している価値の源泉を活かして、自律的に地域経済・社会の持続を図ることを前提とすれば、課題の解決策も地域独自のものであるほうがよいだろうし、その解決策を実行すること自体、地域の新たな価値の源泉になることもあるはずです。例えば少子化の場合でも、地域ごとにいろんな少子化対策があれば、その魅力が地域を選ぶ理由になるかもしれません。
そんなことを考えながら私が思ったのは「あ、これってプルリバースだな」ということでした。
この記事読んで興味をもった方、ぜひイベントに来ていただいて、ぜひプルリバースや、今後の自治=自律的デザインについて話しましょう。まわりの興味がありそうな人もお誘いいただいて、忙しい師走のひととき、ちょっと足をとめて語らいましょう。
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![棚橋弘季 Hiroki Tanahashi](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/7209663/profile_2cfaf11d4fce34124a8218027aae0b46.jpg?width=600&crop=1:1,smart)