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【ご報告】モロッコ人から猛アプローチを受けたのでモロッコ料理でオンライン飲みして祝杯あげたよ!

自撮り写真ばかりアップするインスタをやっている。
知り合いに強制的にフォローをさせ、フォロワーをしこしこ増やしている、夢はでっかくいつか世界中でバズること。
なんていうおふざけの呑気なアカウントなのだけど最近事態が急変している。

突然、モロッコ人の柔道家なる青年からメッセージがきたのだ。
「I likeJapan」からスタートしたラブレターは
「you are so beautiful」という純度100の褒め言葉、バラの花の絵文字、自撮り写真、自らのトレーニング動画、デリバリーのバイトの運転中の動画(だめだよ!)と怒涛の量。
はじめはおもしろがって返信していたのだけど、おもしろがるにはあまりにも相手の束縛が激しく、1時間ほど返事を無視すると追加で「?」「?」「?」と送られてくる。
「come see me」「I think about you all the time」「I want to take your picture on the phone screen.」(まじかよ!)……
寝てたとか仕事をしてたと伝えてもお構いなし。
あ、ちなみに23歳。ゆきぽよと同い年だ。
そう考えるとそのありあまるエネルギー、返事を無視するということが理解できない思考回路なのも納得できよう。

そんなわけで数奇なやりとりがスタートし、さっそく友人たちにも【ご報告】。
全員ほぼ同じ「モロッコ行きたい」という反応。わかる。私もその馴染みの無さに返って惹かれ、心をあっちに何度かトリップさせていた。

なにやらシャウェンという土地の景色が素晴らしいようなのだ。

友人たちも「食器がかわいい」「食べ物が美味しそう」「妄想で旅行してきた」などそれぞれに検索して楽しんでいる模様だ。
そう、私たちはこの青年の存在を通して、久しぶりに海外に思いを馳せたのだった。

そうこうしてるとたまらなくなり
「モロッコ料理食べながらZoom飲みでもしようや」
という話になった。

さっそく都内のモロッコ料理屋を検索してみると、思いの外たくさんでてきた。
近くにも1軒あり、なんと現在テイクアウトをやっていることがわかり
「こりゃ、行くっきゃねぇ」
とひとっ走り。
あ、その前に、モロッコの主食である「クスクス」は事前予約が必要ということでしっかり予約をしてお店へ。

エンリケマルエコス

お店のシンプルなたたずまいは想像していたモロッコのイメージとは違ったが、彼から届く写真をよく見ると、割に醸し出す雰囲気は近しいようにも思える。
モロッコは国全体に古い文化が残り、建物は質素な造りをしているらしい。

そうなんだよな、自分はモロッコについて、まだ何も知らないんだよな。
すごいな。ひとつのメッセージ、ひとりの青年との出会いがきっかけで私、今ここに、食べたこともない「モロッコ料理」とやらを予約してテイクアウトしに来ているよ。

予約の名を伝え、品を受け取る。

当日予約なしで買えるオムレツとフムス(豆のペースト)も購入した。

ガブガブと飲み進められる安い赤ワインを1本手に入れ、帰宅してクスクスサラダの調理にとりかかる。
この予約で買えるクスクスのセットは、たんまりサラダと、自分で調理する味のついたラム肉のパウチ、すでに蒸してあり混ぜるだけのクスクスと、好みでかけるナッツなどが入っている。
ちなみに実際にはモロッコにはこんなメニューはないらしく、日本人好みにお店がアレンジしてくれているようだ。

肉を炒めて、盛り付け!

他の料理も並べてみた、なんか全然わかんないけどモロッコっぽいイメージで!

配置センスがないことはお許しいただきたい。自分的には気分がのっている。

そういうわけで乾杯〜

美味!モロッコ料理、美味!
ラム肉はスパイスが効いているが辛くはなく、まさに日本人好み。ラムの脂が身体に沁みる。
豆のペースト・フムスはガーリックの風味がよく、野菜スティックでペロリといただいてしまった。

「ねぇねぇ、彼にこの写真送りなよ!」

「フムス食べてるー!ってびっくりするんじゃない?」

既婚者未婚者入り混じるこの4人組だが、浮いた話は久々だ。

「ぁーかったぁーかった、ちょっと落ち着いてってみんなぁ〜」

などと言いながら顔がニヤけるのを抑えメッセージを送る。

なかなか返事がこなくてじれったいのでいつもの相手の戦法「?」攻撃もしておいた。

ようやく通知の音

「Yes」……のみ?

めちゃくちゃ淡白!全然刺さってない!日本人が君を想ってモロッコフード食べてるの全然おもしろがってもらえてない!

ちゃんと伝わってないんじゃないかと思い、彼の母国語であるアラビア語でも送ってみたが

撃沈!

とれねえええええ

疎通、

とれねえええええ

やりとり、

むじいいいいいいい

結局その後も相手からの熱烈なラブコールは続いているのだが、こちらの歩み寄りにはあんまり反応はない。一方的なあっちからの壁打ち状態がちょうど良いらしい。
ゆきぽよ世代のやりとりって、こんななのだろうか。
ガラケーケータイ小説世代に私からすると戸惑いも多いが、まぁよい。


こんなご時世。特別に暇というわけでもないが、ふいに何かを持て余す瞬間ができることはある。ふわっと、漠然としたからっぽな気持ちにることもある。不安と言うには大げさだが、「何ともない」とは言い難い湿度のある感情。

そこに、異国の青年が迷い込んできた。彼のヘッドライトはまっすぐで明るい。私のもやもやを、切るように照らし向かってくる。

外食や、ましてや旅行も叶わない今、この子の存在が私たちに“旅”をくれた。

終わりの見えない非日常に、さらなる非日常が重なり、それなのに私の心はなぜか少しほぐれたのだった。


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