子ども哲学対話を開催してみたい。「コミュニケーションって何？」
(こども哲学対話を開催してみたい。これは、理想でも、想定ですらなく、どこかから自分のもとにやって来て勝手にはじまった場を書き留めたものです。実際に開催したら、ぜんぜん、ちがう世界が広がっていると思います。開催してみたい！)
登場人物 こども6人（A～F） 大人１人（G）
A これから、「コミュニケーションってなに？」について、「哲学対話」を、はじめます。よろしくおねがいします。
B、C、D、E、F よろしくおねがいしまーす。
B はい。おれ。「おはよう」と言って、「おはよう」と返ってくる、とかも、コミュニケーションだと思うけど。
C わたしが今、この場所で話したいコミュニケーションは、「はじめに何かテーマがあって、テーマについてお互いが意見を言って、お互いがお互いの意見を聞いて」。です。
D ぼくは、「お互いが納得すること」を、コミュニケーションと呼びたいです。
E 「これを、あなたたちと出来るようになるとわたしはとても楽しいですし、あなたたちにも何か、いいことが訪れたらうれしいけど、訪れないかもしれない」みたいな。
B (Eに) 「これ」って、コミュニケーションのこと？
E うん。
B (場に)いいこと訪れないかもしれないの？ダメじゃね？
D (Eに)「納得」と、「楽しい」は、どっちが大切だと思いますか？
E わたしは、「楽しい」。(Dに)「納得」、いかないですか？
D (Eに)「納得」、いかないです(笑う)。
A Fちゃんにも聞いてもいいですか？
F 「何か話したいことあるのかな？あれかな？」みたいな。
D ぼくはBくんの「おはよう」「おはよう」って言い合うっていうのは、Eさんの「いいことが訪れる」に入れてもいい気がするんだけど、どうですか？
B (Dに)おれに聞いてんの？
D (Bに)みんなに聞きたいかな。
F いいことだと思います。
D （Fに）あ、いや、いいことか、悪いことか、じゃなくて、「いいことが訪れる」ってことなんだけど。
B (場に)一緒じゃね？
D (Eに)たぶん、「いいことが訪れる」って、「幸せが訪れる」ってことですよね？たぶん。
E (Dに)そうそうそうそう。
A はい。いっかい。みんなの意見のまとめをします。「おはようと言い合うこと」「はじめに何かテーマがあって、テーマについてお互いが意見を言って」
C 「お互いがお互いの意見を聞いて」
B (場に)Cさんのがいちばんあってるんじゃね？
C (Bに)あってる、とか、あってない、とか、じゃないし。
B (Cに)わかってるけど、「あってる」って思ったし。おれ。
A Dさんは、「納得」でいいですか？
D 「お互いが納得する」、です。
A はい、わかりました。Eさんは、「幸せになるため」で、いいですか？
E うん、いいです。
D (Eに)ちょっと、ちがくないですか？
E (Dに)いや、自分が「納得」したので、いいです。
(D、笑う。)
A Fちゃんのは、Cさんの「テーマについて話す」に近い感じですか？
F うーん。ちょっと、気になるな、みたいな。
A 相手がどういう気持ちかってこと？
F 気持ちもそうだし。何考えてるのかなって。
A それを聞いてみたい感じ？コミュニケーションして。
F そうです。
G(＝板書していた大人) ちょっと、入っても、いいかな？ちょっと、確認するね。
①はじめに何かテーマがあって。
②テーマについてお互いが意見を言って
③お互いがお互いの意見を聞いて
④お互いがそれぞれ納得して
⑤お互いが幸せになる
こんな感じに聞こえたんだけど。大丈夫かな？
B Gさん、「おはよう」って言い合うのが抜けてるよ。
G ああ、ごめんごめん。
B ぜってーわざとだろ。⓪で入れてよ。最初にやるよ、あいさつ。コミュニケーションなんだから。
G 「⓪お互いに、あいさつする」。これでオッケーかな？
B 完璧だよ。完璧にコミュニケーションになってるよ。
D いっぺんにいろいろ言うとごちゃごちゃするので、ひとつずつ、いきたいんですけど。テーマがあるかどうかということ自体、コミュニケーションを開始する前には、気づけないと思うんですよね。
B え？何言ってるか、わかんないんだけど。
C でも、コミュニケーションって、テーマがないと出来なくないですか？
D いや、あいさつだって、テーマなんてないし。ふつうテーマなんてなくないですか？しゃべってて。
A (場に)どう思いますか？
E なんだろうなあ。相手の不幸せを望んでたら、それってコミュニケーションじゃない気がするんですよね。だから、基本的には、「幸せになるため」がテーマなんじゃないかと思います。
F わたしも、そう思います。
A (Fに)相手の気持ちとか考えを聞いてあげると、相手が「幸せになる」ってことですか？
F うーんと。わからないです。けど。幸せになるためって、すごくいいなあと思いました。
C テーマが「幸せになるため」だけなのは、ちょっと、つまんない気がします。
D ぼくもCさんと同じ意見です。テーマを話すとしても、テーマを持っているのは、最初はどちらか一方です。だから、話しかけたい人は、テーマを持っている人ということになります。で、ぼくは別にBくんに幸せになって欲しくないけど。
B ええ！？（笑う）
(一同、笑う)
D (笑う)でも、ぼくはBくんには話しかけたいから、話しかけます。これもコミュニケーションだと思います。
B （場に）おれは、Dに幸せになってもらいてーなー。
D （Bに）ありがとう。
B (Dを見ながら、場に) なんだよ、こいつ（笑う）。
C Dさんに聞きたいんですけど。テーマを持っている人は、その人の頭の中にテーマがありますよね。
D そうですね。
C そのテーマについて、相手も理解できる形の言葉になっているかどうかの確認をする必要があります。それをコミュニケーションだと思ったんですけど、ちがいますか？
D いや、ぼくもコミュニケーションだと思います。
C じゃあ、どこらへんが、ちがう感じですか？
D ええと、テーマがあるコミュニケーションと、テーマがないコミュニケーションが、ある気がします。
E でも、相手が幸せになることがコミュニケーションだとしたら、あいさつされてうれしくても、ちゃんと話が内容があって盛り上がっても、どっちもコミュニケーションになりませんか？
D そうですね。
E だれもうれしくならなかったら、コミュニケーションって言えなくないですか？テーマがあってもなくても。
D うーん。ぜんぜん、うれしいとか、幸せとかと、コミュニケーションって、関係なくないですか？
E じゃあ、「納得」はどうして関係あるんですか？
D だって、話してるのに、納得できなかったら、いやじゃないですか？
E だから結局、Dさんも、納得できてうれしいってことじゃないんですか？
D うーん。そうなのかな？
B （Eに）いや、Ｄは、気持ちとかどうでもいいんじゃねーの。答え合わせが必要なんだよ。コミュニケーションに。
D いや、自分が考えていた通りじゃなくても、納得できるときもあるよ。
C (Dに)どういうときに、納得できますか？
D うーん。「○○（マルマル）ってことだよね？」って確認したり、「○○（マルマル）の意味が理解できないから、教えてくれる？」とか、できるだけのことをしたなあ、って、思ったら。納得できるかもしれません。
C それは、テーマがあってもなくても、やるんですか？
D テーマがあってもなくても、やります。というか、「テーマ」って言葉の意味がわかんなくなってきたんだけど（笑う）。Cさんの言う、「テーマ」って、なんですか？
C 話したいこと。
D (Bを見ながら)Bくんみたいに、ぜんぜんテーマないけど、とりあえず話したい、みたいな人もいるよね？
B (Dに)え？おれ？テーマありまくるけど。
D (Bに)でも、Bくんが、最初に、あいさつを言ってくれたのは、すごいよかったな、と思いました。あと、Eさんの、幸せとか、コミュニケーション考えるときに全然考えたことなかったので、なるほどなあと思いました。
B (Dに）めちゃくちゃ納得してるじゃん！
D どうなのかな？テーマとか、納得とか、言葉の意味が、全部わからなくなった、みたいな感じもするけど。
A そろそろ、だんだん、まとめに入ります。いいですか？
(少しの、間)
A Fちゃんは、どう思いましたか？
F うーんと。緊張したけど、お話ができるときにお話しをすることが、とっても楽しいと思いました。
A わたしから、いちいち気持ちとか考えとか聞かれていやじゃなかったですか？
F ぜんぜんいやじゃなかったです。
C 今日は、AさんとＦさんの会話が、いちばんコミュニケーションを感じました。コミュニケーションって、確認なのかな、と、思いました。
D ぼくも、今日、話していて、納得のまえに、まず、いろいろ確認することがあるなと発見しました。
E わたしは、みんなは、わたしが思っているより、幸せになりたいわけじゃないのかもって思いました。幸せとかと関係なく、コミュニケーションっていうのがあるんだとしたら、なんか、怖いなと、思いました。
B やっぱり、あいさつがいちばん大切かなと思います。あいさつしておけば、ケンカしても、次の日また、あいさつ出来たら、だいたい、いい気がします。
Ｃ 今日は、話してて、自分は、テーマを語り合う、みたいな風にできたら、すごくコミュニケーション的にいいと思って来たんですけど、結局、テーマって何かな、って、Ｄさんと話してて、思いました。
A 今日は、司会の役で、自分の思っていることも言う、みたいな感じのつもりで参加しました。ありがとうございました。
B、C、D、E、F ありがとうございました。