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おかーさんが、君を好きなところは。
「オレのいいところって何さ」
中2の次男が言った。朝ドタバタ支度をしている合間のことだ。表情は硬く、大変生意気な口調、母親への挑戦状と言わんばかりに。オレのいけないところばかり言ってるかーさんよ、オレのいいところなんか言えるのか?オレにいいところなんかないんだろ?月曜の朝は大抵こうだけど、今日はいつに増して手負いの獣感が強い。
気づかないふりして、淡々と並べてやった。いくらでも出るよ。
「こうと決めたら揺らがないところ」
「とことん誠意を尽くすところ」
「やさしくて思いやりがあるところ」
「ユーモアがわかるところ」
次男は目を丸くしている。くすぐったそうな顔すらしている。一つ二つ出たら上等だと思っていたのに違いない。喧嘩を売って、買われたような返事しか予期していなかったのか。だとしたら次男、それは母を見くびりすぎだぜ。
「興味を持ったら隅々まで調べるところ」
「約束を守るところ」
「机の下に脱いだ靴下の存在を忘れるところ」
なんだよ、それはちげーだろ。ふふっと笑って抗議する次男。褒められっぱなしではつまんないでしょう。嘘っぽいとさえ思えちゃうじゃん?
今日は随分と柔らかい表情で出かけていった。
母は君たちから目を逸らしたことなんかないのだ。わたしの両親が、そうだったようにね。