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故あって台湾
猫を引き取る気満々だった。
引き取ったら、お気軽に海外旅行も行けなくなるだろうと思い、旅行を予約した。時差もなく手近な、それでいてヨーロッパを感じたいと思い旅先を選んだ。意外とアジアにもヨーロッパを感じる場所は部分部分にある。台湾はオランダ時代に作られた淡水紅毛城、あるいは日本領時代の明治建築もヨーロッパの風を感じる。ベトナムもフランス領時代の建築が著名だし、インドネシアにもこれまたオランダ領時代の広場がある。どこも極端な時差は無い。
ところが猫を引き取る話が無くなった。
吝嗇の気が出て、いっそ旅行もキャンセルしてやろうかとも思ったが、無気力に、消極的に、行くことにした。
よく外国の空港は、その国独特のにおいがすると聞く。例えば韓国であるならキムチ、ロシアならコンクリート、日本なら醤油とかそんな類の話だ。どんな香りがするのか、少し楽しみにしていたが、亜熱帯らしい蒸し暑さをただ感じるのみだった。
行ったところを列挙すると、国立台湾博物館、台湾総統府、淡水紅毛城、滬尾砲台がめぼしいところだろう。陳腐だが、いずれも歴史と風格を感じる建築で、特に滬尾砲台が演出もなしにかび臭い重苦しいベトンに囲われた部屋が言いようもなく良かった。
だが振り返ってみると、記憶に残っているのはすべて植民地時代の建築だった。そして旅先を選んだ大きな理由の一つに、日本語が通じるということがあった。これもまた良く言われることだが、果たしてぼくの心の深層に「帝国」意識は無かったか。
何ら強要しているつもりもないし、自分の興味が歴史分野であり、英語に自信が無かったというのもあるんだけれども。
台湾旅行から帰って何年も、くよくよと悩み続ける。