見出し画像

故あって台湾

 別に何のことはない。自分が行きたいから台湾に行っただけのことだ。強いていえば、台湾旅行を予約したときには猫を引き取る気満々だった。猫を引き取ったら海外旅行も行けなくなるだろうと思い、ならばその前に行っとこうと思っただけだ。そして手近で手頃な台湾が選ばれただけである。おめでとうございます。
 コロナ禍以来、旅行はとんとご無沙汰である。海外旅行の計画は以前、ロシアのウラジオストクに行こうとしたことがある。日本から最も手近な「ヨーロッパ」である。だがその時は台風が直撃し、滑走路が水没して飛行機が飛べなくなった。予約したサイトも電話も通ぜず、今思い出しても腹が立つ。身近な人間にはそのサイトのネガティブキャンペーンをしきりにやっているが、わざわざこの場で晒すこともあるまい。
 変わらずウラジオストクには行ってみたかったのだが、コロナはともかく、戦争のおかげでそんな気も失せてしまった。

 それはそれとして海外には行きたい。はて、近場の海外旅行先はどこがあるだろう。できることならばヨーロッパを感じたい。海外旅行初心者でも大丈夫なところが良い。などという条件で色々調べた結果、台湾には「淡水紅毛城」という城があることを知った。もともとはオランダが17世紀に建築したようだ。隣には旧イギリス領事館もある。数年後には台湾有事もあるかもしれぬ。そして何より台湾ならば海外初心者にも良さそうだ、ということで思い切って予約した。
 ところが、そもそもの「故」であった猫を引き取る話が無くなった。海外旅行も別に好きなときにいつでも行ける。むかっ腹をたてていっそキャンセルしてやろうかと思ったが、楽しみの一つではあることだし、予定もそのままに旅に出ることにした。旅程は2泊3日である。今回の旅の第一目的である「淡水紅毛城」のある淡水に行ってしまうと、半日は潰れてしまう。実質、自由に使えるのは2日ほどだろうか。淡水のほかには台北まわりをうろつくだけだが、少し余裕はない。

 旅慣れた人は、その日その場の気分で行く場所を決めるだろうが、ぼくは事前におおまかに決める人間だ。だが何事も計画をたてるということ自体が楽しいので、その実行には興味が持てぬ。実際、旅行でもその場の気分でいくらでも計画を変える。実にいい加減ではた迷惑な人間である。だからこそ独りであり続けるし、あり続けるべきなのだろう。
 話を台湾旅行に戻そう。故宮博物館に行ってみたかったが、そういうところに行ってしまうと一日は潰れてしまう。今回の旅程では泣く泣く諦めることにした。そもそも城が見たいと思っての台湾行きである。建築や史跡・博物館三昧というのも悪くないかもしれない。台湾総統府をはじめとして見てみたいものはいくつかある。
 そのうちの一つに長栄海事博物館がある。読者の皆さんは長栄海運をご存じであろうか。エバーグリーンといったほうが、まだ通じる人がいるかもしれない。とにかく海運会社がやっている船関係の博物館だ。日本でも、日本郵船なんかは博物館をやっていた。その台湾版である。
 長栄のほうは、展示内容などは調べてもいまいち出てこない。まあ博物館は撮影禁止だろうし当然だろうか。日本人も船好きでなければ、わざわざ行かぬだろう。口コミも多いとは言えない。ぼくは船好きなので行く。正直、台湾くんだりまで出かけて船の展示を見るのか、ちょっと迷ったが移動時間の計算などをしたら行けそうだったので行く。

 思えばぼくが船好きになったのはいつの頃だったろうか。札幌の祖母の家に泊まった時、風呂では必ず船のおもちゃを使って遊んだ思い出はある。おもちゃといっても、船の形をした弁当箱で安定性は全く無かった。少なくともそのころには船が好きだった。
 思わぬところで札幌の祖母の話とつながってしまったが、字数が足りないので実際の台湾旅行の話はまたいずれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?