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音楽朗読劇『黑世界』雨下の章 オタクのネタバレ感想

⚠️この感想にはネタバレしかありません⚠️

ついに黒世界(正式な漢字はタイトル通りですが徒然なるままに綴っていきたいのでこの表記でご容赦ください)観に行った。

現在ハロオタだけど、別に鞘師の熱狂的なオタクだった訳じゃない。けど、生で、リアルタイムで観れなかった悔しさはあったから、観に行きたい。

なにより、TRUMPシリーズの音楽を担当している和田さんと、今回脚本で参加している中敷屋さんが過去にタッグを組んだ演劇が好きで足繁く通っていたから、絶対に観たいと思った。

LILIUMによってTRUMPシリーズは一通り(COCOON以外)は観劇。

そして無事にチケットはご用意されて(本来は日和を生で観劇して雨下を配信で観る予定だった)無事にこの目で雨下の章を見届けた。

観劇中、さまざまな想いが溢れ出したので以下徒然なるまま。

※誤字脱字ご容赦くださいませ

章タイトル/登場人物/あらすじ
〈雨下の章〉

感想ではないですが観劇記録用に書いときます

◇章タイトル/登場人物
第1章 イデアの闖入者[作・末満健一]
→ リリー、シュカ、チェリー、父、母
第2章 ついでいくもの、こえていくこと[作・宮沢龍生]
→リリー、チェリー、ホオズキ親方、シーメン
第3章 求めろ捧げろ待っていろ[作・中屋敷法仁]
→リリー、チェリー、ライザン、マルグリット
第4章 少女を映す鏡[作・末満健一]
→ リリー、チェリー、シュカ、アイダ、繭期の少年
第5章 馬車の日[作・降田天]
→ メイプル、シダー、ヘーゼル
第6章 枯れゆくウル[作・末満健一]
→リリー、シュカ、チェリー

末満さん公式Twitterより引用
https://twitter.com/suemitsu/status/130715250308390



◇各話あらすじ

第1章 イデアの闖入者[作・末満健一]
→リリーは夢の中を揺蕩っていた。繭期を終え、父親と母親の下に戻った幸せな夢を見ていた。しかし、知らない女に「幻覚だ」と言われ、目が覚めたら知らない男から「やっと眠りから目を覚ました」といわれてーーー。

第2章 ついでいくもの、こえていくこと
→雨に降られ続けたリリーとチェリーは古びた家を見つけて、誰もいないと思いドアを開けて仮の宿とした。しかし、酒を片手に持った老人に起こされてその人の家だと知る。出ていこうとしたが、何日も歩き続けていたからか倒れてしまう。結局、その街の違う宿に運んでもらい泊めてもらい、すぐに旅立とうとするが、目的地への橋は壊れていたため、その街に滞在することになりーーー。


第3章 求めろ捧げろ待っていろ
→リリーとチェリーはとあるイケメンヴァンパイアハンターと出会い、「この道を進むのはヴァンパイアが出るので危険だ」と忠告されたために町に戻ろうとした。すると、マルグリットと名乗るひとりやもめの老婆が立っており、「危険だから逃げよう」と促すも「都合がいい」と言われてーー」。

第4章 少女を映す鏡
→雨が降ったとある日、リリーは老婆によって鏡に閉じ込められてしまった。老婆は「あなたはあたしよ」と言い続けるので「あなたはおばあさんじゃない」と言うと、「あたしは周りの人と時の流れが違うのよ」と話し始める。

第5章 馬車の日
→通り雨に降られた日に、リリーは通りがけのヘーゼルという息子をクランに送り届ける途中だという馬車に乗せてもらい、奥さんと話をしながら送ってもらう。そして数年後、同じ場所を通り過ぎたとき、また雨に降られ、全く同じ光景を目にする。

第6章 枯れゆくウル
→シュカは、自分がなぜリリーを傍観するのか、そしてなぜリリーと同様、歳をとることがないのかを話し始める。LILIUMの結末後に何があったのか。


感想


第1章
→プロローグ的な役割を果たしていた。
知らない場所で深淵の眠りの中で家庭の幻想を見ていたリリーは新良エツ子さん演じるリリーのみる幻影?人格?によって現実を突きつけられたあと、シュカと名乗る男によって起こされた。
そして、シュカは「我は守護者なり」と冗談めかしていいつつも、「君をただずっと見ている傍観者となる」と言い残して去っていったシーンがあって、個人的にTRUMPシリーズでの共通の台詞「我は守護者なり」が大好きなため嬉しすぎて舞い上がりました。我守護!!
ただ、場面や台詞には謎が多く、はっきりしないまま、リリーは永遠の繭期を抱えながら居場所を求めて旅立って行く。
二輪咲きの時のシルベチカにしかみえない「リコリス」と同様に、リリー以外には全く見られていない幻影。ただ、リコリスのときとは違い、二重人格的に乗っ取られることはなく、以降リリーに寄り添うストーリーテラー的な役割を担っている。
リリーがLILIUMのサナトリウムのクランの話をしていて、LILIUM後日譚であることが明確になっていて、位置付けがはっきりとされていたのが良かった。


第2章
→とにかく感動して涙が溢れた作品だった。
第1章から旅して5年後くらいの作品。
ホオズキ親方は橋職人で、シーメンは彼の一番弟子だった。ホオズキ親方は嘘を見抜くのが得意で、人の嘘には敏感。
ホオズキ親方は昔、家族をヴァンパイアに殺されたヴァンパイアハンターだった過去があったが、人と吸血種の何が違うのかと考えてハンターをやめた過去があり、そのためリリーを吸血種と見抜いても殺さなかった。
親方が「永遠に壊れない橋」を求めて作ろうとしていたと話すシーン、リリーが「なぜわたしに?」と問いかけたのだが、「なんとなく」というような曖昧な答え方をされていて、でもそのシーンがあったからこそ、リリーも深く「永遠」という言葉の意味について考えるようになる気がする。
石田亜佑美ちゃんが演じていたチェリーのような「あんた、バカァ?」というような発言を新良エツ子さん演じる幻覚が行なった結果、「チェリー」という名前になったのが印象的で、実は二輪咲きの「リコリス」も同じクランにいた仲間をイメージして作られた幻影……?と想像を膨らませてしまった。新良さんめちゃくちゃあゆみんのチェリーに似てた。
個人的に「ばたんきゅー」とマーガレットを思わせる倒れ方をした鞘師が可愛すぎたのがハイライト。
シーメンを庇って瀕死の状態
リリーが嘘をついて「橋は大丈夫」と発言し、嘘を見抜いたはずの親方は、「よかった」と安らかに眠りについた。
その後、シーメンは親方の遺書を見つけ、後を継ぐ。遺書の内容が感動的でもう涙。
「ついでいくもの、こえていくこと」というタイトルの通り、「親方が先代から受け継いだ技術を受け継ぎながらも、親方が叶えることができなかったことを成し遂げ超えていく」ことをシーメンが決意するシーンは印象的だった。
マジで一番泣ける。あと歌のシーンで鞘師がトンカチ持ってるのがめちゃめちゃかわいい。

第3章
→第2章とは一変して中敷屋ワールド全開、ブラックコメディ。アイドルの現場かな?という感じで楽しかったし、中敷屋さんから願望と妄想をバキバキに詰め込まれた池岡亮介さんがアイドル兼ヴァンパイアハンターのライザンを見事に演じきってて感心しきった。みんなのセリフの言い方が好きです。
歌の時に手拍子を煽ったり、これ声出しOKだったらもうライザンの現場。というかキャスト観客が一体となって盛り上がれるのがTRUMPシリーズだということをあまり感じさせなかった。
ただ、「もっと殺して吸血種、もっと守ってあたし達」のマルグリットの台詞、ヴァンプに対して恨みを抱いていない人間がヴァンプ狩りを道楽としか思っていない狂気の沙汰にしか思えなかった。事実マルグリットはライザンにヴァンプ狩りをさせるためだけに死んでいって、自分が死ぬことすら厭わなかった。
そりゃリリーとチェリーも繭期の強すぎる幻覚だと思いこみたくなるものだわ。

第4章
→「永遠を生きるリリー」と対にある「速い時の流れの中でいきるアイダ」の物語。これぞ末満脚本。
人の5倍歳をとる少女と、永遠に少女のまま800年+100年くらい生きているリリー。
リリーはアイダによって鏡の中に結局3年閉じ込められたけど、リリーにとっては瞬きをするくらいの時間で、一方でアイダにとっては死に肉薄するに足りる時間だったのが、双方にとって物悲しい。「ねえ、あたし」「なあに、あたし」というセリフも本当に鏡のように対極にあってお互い手に届かないものを持つ存在であることを考えると悲しい。
繭期の青年の、繭期特有の能力ことイレギュラーによって心の美しさをみることができる能力が発露し、アイダに一目惚れしたわけだけど、間はその愛を信じることはできない。自分の見た目や境遇を受け入れてしまっており、既に諦めているから。
鏡から解放されたとき、あった時点で15歳だったアイダ(この時点で75歳)は三年経って18歳の誕生日で90歳。三年閉じ込められてもなんとも思わないリリーはもう生きることに慣れてしまったんだな。
少女を映す鏡は、リリーのことではなく繭期の青年の心だったんだな〜と。悲恋で終わってしまったけれど、青年の愛は繭期を過ぎても本物だったのが救いだった。
あとシュカが歳を取らない伏線が張られて6章に繋がっていて興味深かった。

第5章
→ホラーでしかなかった。リリーが何回も死ぬ。いや、メイプルの召使によって殺される。

数年前にリリーがメイプルに再開したことをメイプルは全く覚えておらず、またヘーゼルの見目や雰囲気に対して違和感を感じていたところ、息子の「ヘーゼル」は召使によって作り出された偽物で、リリーはヘーゼルにされてしまう。
ヘーゼルは母親の厳しい躾に耐えきれず、自分の存在が消えたと思うように母親に命じたというのが「イニシアチブ」というTRUMPシリーズ特有の性質を上手く使った脚本だと感じた。
いやあにしてもメイプルが怖いったらない。

第6章
→シュカの語り、そして第4章で歳を取っていなかった理由とリリーのLILIUM〜黒世界間の空白の真実が明かされる。
シュカはLILIUMのクランで飲まれていたお薬ことウルを摂取しており、最後の「残り」と発言してたので、少なくともクランで飲まれていたソフィーの血で精製されたウルはもう残ってないということがセリフによりわかった。さらに、あの惨劇の後、血盟議会はあのクランを解体していたあげく、リリーを特異により不死身になったヴァンプ(ソフィー・アンダーソン同様)として研究するために人体実験を数十年間行っていた他の発言、さらにその間リリーは常に生きていたが屍みたいで従順だったが、スノウ・フレークの花を見た時のみ涙を流したっていう話で心があることを知ったとて言っていて胸が痛かった。しかもショックで第1章時点で忘れていたリリーは旅の途中でその記憶を思い出していたんだよね…。
結局シュカはリリーのことを凡そ100年観察していた。
リリーになぜ狂わないのかと問うた時、「あいつ(ソフィー・アンダーソン)とは一緒になりたくない」から狂うことはなく世界を彷徨い続け、他人の死や生き様を直視することを選んだリリーはどこまでも「純潔な少女」なんだと感じた。ソフィーも私たちからしたらクラウスの手によって同じ存在にされたわけで、同情しうるポイントはあるけど、リリーはクランでの出来事しか知らないから当然自分に永遠を生きる存在とした、そしてみんなの存在を奪った存在としての恨みしかないんだよな。
シュカはウルが底を尽きると同時に枯れるように死んでいったけれど、リリーの許しを貰えて晴れたような気持ちだっただろう。
シュカ=種花?アートであって、花になりきれない存在かな?

全体を通しての感想:

朗読劇と銘打たれていたため、舞台セットは簡素なものなのかと思いきや、ゴシック調の、ツタが伸びている退廃的な全体的に暗い雰囲気のセットが作り込まれており、世界観としっくりマッチするようになっていた。

リーディングモーション方式という名の通り、脚本を持ちながらも動く動く動く。なんなら歌うときは脚本をどこかに放って小道具を持ちながら歌って踊る。みんなかわいい。

コロナ禍での新たな試みだったとは思うけど、この演劇方式は斬新で面白く見ごたえがある。


リリーは決して狂うことなく純潔で、真っ直ぐ人をみている。だからこそ、永遠の時を生きる一瞬一瞬人に寄り添うことができるのかなと思った。

日和が楽しみ。

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