【蜃気楼】
あの時から1週間あまりの時が過ぎた。
最終日多くの人が高揚した眼差しで彼を見つめていた。
その後姿を観ていた俺達は、勝利を確信した…はずだったかな。
残念ながら現実はそうではなかった。
結果が確定した時、自分の唇を強くかんでいる自分がいた
その後のことはあまり覚えていない。
今となっては多くを語る言葉を僕は持たない。
専門家の人がいろんな意見を上げればいい。
ただただ皆さんにこんな体験を共有させていただいて
感謝のありがとうと言いたい。
約100日あまり。
あの体験は自分の人生の中に宝物として大切にしまわれるだろう。
月曜日から普通の日常?といいたいとこだけど
今回の件で後回しにさせていただいた業務に追いつくために必死だった。
本日ようやく日常に追いついた感じだ。
今回の件で
オレは確かに多くのものを犠牲にしたのかもしれないが
それよりも多くのものを得た。
そのひとつが、自分は【何者?】だと言う答えを持ったことだ。
僕の特性なのかもしれないが、一旦スイッチが入ると僕はクライアントに
同化してほぼ人格が乗り移るようにその環の中に入っていく
相手そのものになる。
最初それは仕事上必要なスキルだと考えていたのだけど
終わった後に感情が逆流してきて、ものすごい後遺症が残る
自分を維持できなくなってしまう。
だから自分を守るために、
オフになったらその想いをぱっと消せる技?を身に着けた。
もちろんマシンのように瞬間には消えないけど、少しづつ、少しづつ、存在を消していく。
人によってはそれを冷酷だとか、無感情と言うように観えるかもしれないが
そうしないと自分のアイデンティティーは戻ってこない
以前知人であるクライアントさんにも言われたことがある
タムラさんは「一番近くに居るような感じがするのに、掴もうとするとそこに居ない。まるで蜃気楼のようだね」
そうだよ僕は【蜃気楼】あなたの影であり本質の写し鏡なんだ。
僕たちデザイナーの仕事は、蜃気楼なのかもしれないな。
またそれが現れる日まで蜃気楼は、また別のクライアントに同化する
それが自分の日常なんだ。
ただ今の願いは、もう一回彼の【蜃気楼】でいたかったな。
その願いが叶う日を夢見て
オレは毎日を歩み始める。
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