デザインレビューが機能する組織の条件
これまで何社かで働いてきて、デザインレビューが正常に機能するためには、いくつかの条件が整っている必要があると感じた。
デザインレビューが機能する状態とは、デザインレビューによって、そのデザインが目的を達成するために、より効果的な状態へブラッシュアップされる機会になっていること。ひとまず、そのように言語化しておきたい。
上記を踏まえて、デザインレビューが機能する組織の条件、あるいは状態を、3つほど挙げてみる。せいぜい、N = 4、5くらいでしかないため、わたしのバイアスが多分にかかっていると思われるが、適宜ブラッシュアップしていきたい。
要件定義のドキュメント化
まず、要件定義がドキュメント化されていること。当たり前だと思う人もいるかもしれないが、しっかりと実施できている現場は、意外に少ないのではないだろうか。
要件定義の定義は、専門書を適宜参照いただくとして、重要なのは目的とゴールと期限の明確性である。「この箇所を、こういう風に変更する」というのは手段であり、目的とゴールではない。特に、オフラインで対面のコミュニケーションに依存してきたようなチームであれば、これまでは阿吽の呼吸でコンテキストを共有できていたかもしれない。しかし、オンライン前提のコミュニケーションでは通用しないため、常に参照できるようドキュメント化しておくのが求められる。
こうしたドキュメントがあることで、デザインレビューの際には、「このデザインは、今回の施策の目的とゴールを達成する上で、効果的だろうか」という視点を持ちやすくなる。
デザインの共通認識
そして、デザインの共通認識が存在すること。先に述べた、要件定義のドキュメント化によって、目的とゴールと期限が明確になっていたとしても、デザインのテクニカルな面まではカバーできない。
共通認識を作るためには、デザインシステムを整備する等して、手元のトークンやコンポーネントはもちろん、フィロソフィーなど、大切にしたい価値観をチームとして言語化できていると、よりレビューしやすい。ちょうど、バリューが言語化されることで、その組織の中で望ましい動き方、考え方が浸透するのと同じ考え方である。
デザインシステムは、あくまでも共通認識を作るためのひとつの手段として捉えることもできる。事業や組織のフェーズを鑑みて、よりカジュアルな方法を試すこともできる。例えば、考え方のような部分であれば、デザインチーム内で読書会や勉強会を実施することで、お互いの認識を合わせるきっかけにもできる。
フィードバックのリテラシー
最後に、各メンバーがフィードバックのリテラシーを身に付けていること。例えば、下記の記事でも紹介したように、反応型や指示型のフィードバックが横行していないだろうか。
レビュワーの好みだけで判断したり、一方的に指示だけを行うようなコミュニケーションをしていては、建設的にデザインをブラッシュアップするのは難しい。
また、レビュワーは「どれどれ、お手並み拝見」というマインドで臨むのではなく、観点を持ち寄って一緒にデザインをブラッシュアップしていく姿勢を持つことが重要だ。悪い点をただあげつらうだけでなく、良い点があれば、それも書き込んでみる。こうしたレビューの仕方については、エンジニアから学ぶべき点が多い。まずは貢献してくれたことへの感謝を伝えたり、「LGTM」を送ったり、他職種のレビューの仕方と比較して、心理的安全性が担保されていると感じる。
おわりに
デザインレビューを機能させるためには、デザイナーや、デザイン組織の内部だけで完結させることはできない。
他職種のメンバーも巻き込みながら、また一方的な批評ではなく、協創のマインドを持ってもらうための働きかけが重要だ。(言うは易く行うは難し、である。)