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Figmaでのペアデザインの効用と運用のコツ

初めてペアデザインと呼べそうな取り組みをしたのは、おそらく5年くらい前で、当時はまだ20代半ばであった。

今ほどペアデザインという言葉が浸透していなかった頃で、当時在籍していた会社でペアプログラミングやモブプログラミングが盛んだった事から、デザインに転用できないかと始めたのがきっかけだった気がする。

その時は、正直なところ「1人の方がやりやすいな」「なんか面倒くさいな」という感情を抑えられなかった。Figmaは今ほど普及していなかったし、実際的にも思想的にも、従来のデザインツールは個人作業を想定していたように思う。

しかし、わたし自身も経験を積み、またペアデザインの取り組みが徐々に一般化する中で、今ではすっかり「ペアデザインは良いよ!」という考えに変わってきている。

なぜ初めから良いと思えなかったのかといえば、ハードとソフト2つの側面の問題があり、前者はFigmaの普及が大きく、後者は知識と経験不足に他ならない。(時代柄と雑にまとめてしまって良いかもしれない)

いずれにせよ、ただFigmaを使っているからといって、効果的なペアデザインができるわけではない。世の中に溢れる様々なプラクティスが得てしてそうであるように、ペアデザインにも適切なマインドセットや手法が存在する。そこで今回は、ペアデザインの効用と運用のコツを書き留めたいと思う。

ペアデザインのメリット

あなたがペアデザインの相手に誘われたとして、何か役にたつフィードバックをしなければならない、とプレッシャーに感じるかもしれない。あるいは、そもそも相手が先輩であれば、萎縮して何も言えなくなるかもしれない。

しかし、安心してほしい。ただそこにいて話を聞くだけでも十分に有効だ。ペアデザインのメリットのひとつは、自己解決を促す点にある。ソフトウェア開発の文脈では「ラバーダック・デバッグ」という手法とほぼ同じで、要するに相手に説明している内に思考が整理され、勝手に解決策を思いついてしまうのだ。

わたしもこれまで、ペアデザインに呼ばれて話を聞いている内に、「あ、そうか。こういう風にするのもアリだな」と、誘ってくれた相手が自己解決する場面に何度も出会ったことがある。もちろん、わたし自身も「せっかく時間を取ってもらったのにごめん!」と、同じ体験をして同僚にあやまったことがある。

もちろん、ただそこにいるだけに留まらず、相手に示唆を与えることもできる。もっとも効果が高いのは、様々なコンテキストを共有できることだろう。

例えば、ツールの使い方で言えば、ペアデザインの相手が初学者であった場合、Figmaのショートカットや便利な応用機能について「自分はいつもこうやっているよ」とノウハウを伝えることができる。

あるいは、転職したばかりの頃、社歴の長い同僚のデザイナーとペアデザインをした時は「ここのUIは、前に似たような場面があって、その時はこうしてたよ」「実はこの機能はこんな経緯でこうなっているよ」と教えてもらうことで、問題解決の糸口になったこともある。

運用のコツ

コツと言う程ではないかもしれないが、「手早く問題を解決しようとしない」というマインドは大切かもしれない。もちろん、何かしらの問題を解決するためにペアデザインを開催しているのであろうが、前述の通り、話していたら勝手に解決する場合も多い。

仮にあなたのペアデザインの相手が後輩だったとして、あなたが思いついた内容を一方的に話したのでは、相手の成長機会を奪ってしまうかもしれない。(まあ、わたしが後輩の立場で、先輩が良い案を思い付いているのなら、さっさと教えてほしいけれど笑)

とにかくまずは、話したい方の話に、もう片方はじっくりと耳を傾けよう。それでも解決しなければ、一緒に解決策を考えよう。

次に、手軽に始められるようにしておくことも有効だ。イメージとしては、わざわざミーティングの時間を作るよりも、Slackであればハドル機能を使ったりして、すぐに相手を誘えると良い。ちょうど、リアルなオフィスの中で、同僚に声をかけるのと同じようなテイストだ。

また、ペアデザインに誘われた側として、相手からデザインのオーナーシップを奪わない意識も重要だろう。ペアデザインに誘われた側は、自身を評価者だと思ってはいけない。評価をするのではなく、問題解決に並走しよう。明らかにトンマナから外れていたり、ダークパターンのような成果物になっている場合は別として、最終決定権は相手に委ねるべきだ。

あるいは、あなたはラバーダック・デバッグのためのアヒルちゃんだという自己認識でいるのも良いかもしれない。あなたも、わたしも、時にはただのアヒルであるべきなのだ。🐤

この文章を読んで、ペアデザインに対するハードルが少しでも下がっていれば幸いである。

あなたの幸運を全力で祈ります!