車の中でビニール袋に用を足す6歳
実両親が離婚することになったのは私が5歳の頃
当然どちらかについていくという話があったと思うが
何故かその時私は実父についていくと言って聞かなかったらしい
今考えても何故なのか全く覚えていない
そうして実父と二人の生活が始まったようだ
実父は私をどうしていいか分からなかったのか
私を幼稚園へ連れていくことをほとんどしなかった
なので私はコロコロと変わる実父の職場についていっていた
実父は手に職はあったが定着することはなくコロコロと職場が変わっていた
事情をくんでくれた上司やオーナーがいる所はその職場で過ごせていた
しかし、実父とお昼を食べたりした記憶は全くない
そんな私を不憫に思ったのか職場に出入りする人が
よく近くの喫茶店に連れて行ってくれた
今でもその光景や喫茶店独特のにおいは覚えていて
コポコポと心地よい音と黒くなったお湯が上へ下へと移動する
不思議な器具たちをずっと眺めていた
その後、あれはサイフォンでコーヒーを淹れるものだったんだと
ドラマで知った
こんなふうに職場に入れるときはまだいいが、入れない時は
車内で一日中すごしていた
お腹がすいたら歩いてコンビニをみつけ
決まってコーヒー牛乳とメロンパンを買って食べた
一番困ったのはおしっこに行きたくなった時だった
実父の職場の前をウロウロするが誰も気づいてくれず
どこか隠れてするところもみつからず
いよいよ漏らしてしまいそうになった時は
コンビニで買ったものを入れていたビニール袋に用を足していた
最初はなかなかうまくいかなかったが回数を重ねると上手になった
そしてそれを洩れないようにきちんと結んで車内に置いていた
仕事を終えた実父はその袋の中身がわかると
「きたねぇなぁ」と
ぽいっと車外に捨てていた
多分一年ぐらいはそうやって生きていたと思う