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耳にタコができるほど、経営はうまくいく

繰り返すほど、経営は上手くいく。
繰り返し同じことを聞き続けたり、繰り返し同じことを伝えることがとても大切。

でも、それがまぁ大変。

まず、同じことを聞き続けるのが大変だ。

うちには8人の子どもがいるが、毎日がこの繰り返し。
お子さんがいらっしゃる方だと想像がつきやすいだろう。
子どもが楽しそうに話していることでさえ、聞き続けるのが大変なことがある。

身近な人の話でさえ、聞き続けるのが大変なのだから、社会に出ると尚更だ。

経営者として聞く力は大事だ。
でも、同じくらい大事なことが、スタッフや仲間に何度も同じ事を言い続けること。
自分が繰り返し人の話を聞くことが苦手なのに、それを相手に強いるのは気が進まない。
でも、これがとても大切だ。

経営者は、経営理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を伝え続けなければならない。
何度も何度も同じ言葉で伝えなければならない。

私なら、「こないだ聞いたよ!」とか、「もうわかってるよ!」と、言いたくなる。

繰り返すことは大切だとわかっていながらも、聞き続けるのも、言い続けるのも、同じくらい難しい。

しかし、繰り返すことは経営者にとって必須スキル。
何度も繰り返さないと、自分の気持ちは伝わらないし、本当の意味で相手に理解してもらうことはできない。

私はこのことを介護施設のM&Aの経験を通じて、身をもって理解した。


聞いてた話と、違うぞ?

運営をすることになったのは、関西にある介護施設。

譲り受けた前任社長からは、「うちの組織はそれぞれ自立している。だから田本先生には、オーナーとして見てくれていたらそれでいい、特にしてもらうことはない」と伝えられていた。

いざ、実際に施設に赴いてみると、現実はまったく違った。

「鳥取から関西に来て、ずっといてくれるなんてありがたいです~!M&Aするって聞いたときは正直嫌だったんですけど、そんな親身にしてくれはるなら安心やって、みんなで言うてたんですよ~!」

・・・ん?どういうことだ?関西にずっといないぞ?

「その話って誰から聞きましたか?」

「え、社長から聞きましたよ?今度来る人はずっといてくれはるから大丈夫やって。あと、方針も決めてくれはることも聞いてますよ。これからどういう風に利用者さんと関わっていったらいいんですかね?今日はそれを言いに来はったんでしょ?」

ここで悟った。
あの社長、私とスタッフさんに言ってることが真逆だ。

M&Aをすると、売主、買主、仲介業者それぞれが、あっちにいいこと、こっちにいいことを言い、そこからうわさが広がったり、尾ひれが付いたりすることはよくある。

ただ、それを真に受けてしまうと大変だ。

「私たちは社長からずっといてくれはるって聞いてたんです!」
「おらんかったら私らこれからどうなるんですか」
「社長はいろいろ方針決めてくれてたのに、急に自分らで考えろなんて無理です!」

四方八方からあれこれと。
フタが外れたように、不満が飛び出してきた。

そりゃそうだ。
私が混乱しているのと同じように、スタッフさんたちだって混乱するはず。
急に知らない人が出てきて、それでもずっと関西にいて舵取りをしてくれるからまだマシと思っていたのに、全然関西にいてくれないし、自分たちで運営をしろと押しつけてくるなんて、混乱しない方がおかしい。

そこで、改めてじっくり話し合いをする時間を設けることにした。
正直逃げ出したかったし、M&Aをしたことを後悔したが、もう引き継いでしまったので、腹をくくるしかない。

2時間あれば、前任社長とどんな話をしたかは説明できるはず。
スタッフさんからの質問もあるだろうから、3時間。まあそれくらい時間があれば、前進するだろう。

そう思っていた。

1歩進んで2歩下がる

「先生どうですか?こっちにいてくれるように調整つきました?」
「方針決まってなかっただけですよね?」

開始1分で悟った。これは、堂々巡りを続けるだけだ。

私は絶対に関西に常駐できない。
私は前任社長と、現場が自分たちで回せる組織であることを条件にM&Aをしたのだ。

必死にこの事を伝えた。同じことを聞かれては、同じことを言い続けた。
時計を見れば、24時。開始から7時間が経過していた。

一度帰って、とりあえずホテルで眠りたいと考え出したころ、「ちょっと先生の考えていることが、わかった気がします」とあるスタッフさんが言ってくれた。

やっと伝わった!理解してもらえたんだ!
私は嬉しくなった。
翌日の話し合いが少し楽しみにも思えた。

翌日、、、

「先生は、私らと利用者さんのことを思って、任せるって言ってくれてはるんですよ!お子さんもようさんいはって、そんなんずっとこっちにおれるわけあらへんやないの!」
「そんなん知らんやん!あんたやって困ってんちゃうの!何をいい子ちゃんの顔してんねん!」

前任社長派 vs 田本派

喧嘩が勃発していた。止めようと間に入れば、「元はといえばあんたがM&Aなんかするからだ!」と袋叩き。

ご想像いただけるように、また聞き続け、言い続ける時間。
それでも、想いを理解してもらうには、聞き続け、言い続けるしかない。

繰り返すことがカギ

向き合い続けて6カ月。1歩進んで2歩下がるを繰り返し、だいぶ想いが共有できている。

今はとてもいい組織。
利用者さんのために、こんなことがしたいと積極的に伝えてくれるようになったし、どうすれば、楽しみながら働けるのかを考えるようになってくれた。私も、常駐は出来ないが、電話にはいつでも出るし、ZOOMなどでも密にコミュニケーションをとっている。

とにかく前進させるには、向き合うしかない。
向き合う極意は2つ。

一つ、とにかく聞くこと。こないだ聞いたとか、さっき聞いたとか、余計な口をはさまない。
相手は不安に思っていることがあるから、ひたすら話す。
こちらはその話の中から、不安に思っている点を見つけ出すしかないのだ。

また、「聞いてくれる人」だと認知してもらうことで、信頼してもらうのだ。

もう一つは、同じことを言い続けること。
信念を変えず、同じ言葉で伝え続けること。
出来ないことは出来ないと言い続けること。

同じ内容でも、言い方を変えてしまえば誤解を招きかねない。

もし自分の耳にタコができたなら、それだけ話を聞けている証拠。
相手の耳にタコができたなら、それだけ伝わる可能性が上がってきたこと。

「お互いの耳にタコを作るぞ!」ぐらいの気持ちで取り組むのが、上手く経営する秘訣かもしれない。


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