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無題 002
欲求。
終わりのない湧水のように生きている。
一瞬で私を何かの境地に連れて行く、否応なく。
コーヒー豆の香りが、何の前触れもなく鼻から脳みそへ流れ込んでくる。
瞬間、はっとして文字通り息を呑んでいる。
あわてて、今度は肺を全開にして空気を吸い込む。
今度は、あまり香りを感じられない。
眼はしっかり開きつつ、闇の中で手さぐりをするように
さっきの成分を求める。
その手をかすめるようにして、時おり香りがふわりと私の中に入ってくる。
笑うように。風や、波のように。
一度手にした何かを、私の感覚器官や海馬が鮮明に覚えている。
再び出会ったときに、何も考えず、すぐ抱きしめられるように。
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![漆畑美佳](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/96742738/profile_4c4309ca00aef36762835343ac09a8cd.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)