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セレンディピティ

今日は偶然の多い日だった。

Twitter経由で見かけた「スカウター(ドラゴンボールに出てくる機械の名前らしい)」のことが、最近買った光嶋さんという建築家の本にも出てきた。
私史上この言葉を聞くのは初めてのはずなので、一日に2回も出会うことになるとは…という驚き。

とはいえ意識さえしていれば、結構頻繁に起こっていそうな話だ。
今日はアンテナの張ってる方向がいいにちがいない。と思うことにした。

過去にも何度か、そういう「アンテナの角度(感度?)」が良い時期があったなと思う。

今でもよく思い出すのは、パリに短期留学していた時期のこと。
大学生のとき、実家を出たこともない自分が初めて一人暮らしをした街。

学校が始まる前は友だちもいないので、美術館に行ったり郊外へ日帰り旅行に行ったりするのも、日々の買い物も、当然一人ですることになる。

日本からきた人も語学学校にはいたけど、なんとなくそういう過ごし方が定着して、放課後は一人で気の向くまま外に出るのが日課となっていた。

外国での適当な散歩ほど、自分の世界が広がる感覚はないと思う。
心のどこかに緊張感はあるけれど、あらゆるものや音や人びとの言動が新鮮に感じられる。表現が難しいけど、アンテナが普段より大きく張っていて、全身の毛穴も全開になっているような気がする。

人生初のホームシックも手伝って、飛行機雲や、セーヌ川に沈む夕焼けや、道に落ちてる葉っぱなどをバスに揺られながら見たりしているだけで、エモくなっていた。(しかもそのどさくさに、遠距離中だった彼氏に振られるという出来事もあった)
でもその中で、毎日通っていたパン屋のおじさんが顔を覚えてくれたり、屋外の美術展示を見てたらものすごい美人が「写真を撮ってあげましょうか?」と声をかけてくれたり。
そういうあたたかみのある交流が、たまたまいつもあった。

パリも決して100%安全な街ではないので、そういう良い思い出ばかり作れた私は運がよかったのだろう。
寂しさと恐れもあれど、全方位に意識を向けて、心底世界を楽しむ感覚は今もはっきり思い出せる。

日本に帰ってみると、毎日の暮らしがなんとなく色味に欠けるように感じた。
なんの緊張感もなく、昨日や先週と同じような日々が永遠に続くような気がして、焦った。
数ヶ月間の「ハレ」の期間が終わり、「ケ」に戻って日常が灰色になってしまったような感覚。

でも、今まで関わってこなかったコミュニティに足を踏み入れてみたり、そこで新しい人とつながったりする中で、徐々に留学時代の感覚が戻ってくるような気になることがあった。

そういうとき、今日起こったような無関係なAとBの出来事が突然自分の中でリンクすることが多い。

今日行った美術館も、美容師さんが私が持っていたトートバック(ある美術館で買ったもの)を見て、「たぶんあそこが好きな人だったら、こっちの美術館も好きだと思いますよ」って紹介してくれたのが行ったきっかけだ。
そしてトートバックの美術館の方は、前の会社のときに仲良くしてくれた先輩が、一緒に行こうよ、と誘ってくれたのが発端だ。
私の日々の行動はそういうふうに「突然降ってくるご縁」みたいなもので構成されてるんだな。
と強く感じた。

日々のルーティンにそういうものが知らずに消されてしまわれないように、注意深くありたいと思う。


#今日の一枚

美術館に行く途中で、季節外れの桜が咲いていた。

「季節外れ」と言ってもそれはこちらの一方的な決めつけで、ヒマラヤザクラという今が開花期のれっきとした高地のサクラだった。

やっぱり桜はいい。
もう一回、サクラの盆栽にもチャレンジしようかな。

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漆畑美佳
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